【歌詞考察】BUMP OF CHICKEN「シリウス」に込められた意味とは?希望と自己対話の物語

「シリウス」というタイトルが象徴するものとは?

BUMP OF CHICKENの楽曲「シリウス」は、そのタイトルからして非常に象徴的です。シリウスとは、全天で最も明るく輝く恒星で、古来より“道しるべ”として人々に希望や方向性を与える存在でした。この星をタイトルに選ぶこと自体に、強いメッセージ性を感じ取ることができます。

歌詞の中では、直接「シリウス」という言葉が使われることはありませんが、「光」や「輝き」、「道」など、星を連想させる言葉が数多く登場します。これは、現実の中で迷いながらも進んでいこうとする主人公にとっての「希望」や「目指すもの」を象徴していると考えられます。

また、シリウスの語源であるギリシャ語の「焼き焦がすほどに明るい」という意味も含めて捉えると、「強烈な想い」や「揺るぎない信念」といった情熱的なイメージにもつながります。シリウスは単なる星ではなく、聴く人それぞれにとっての“消えない光”なのかもしれません。


忘れられても消えない“灯火”=夢の比喩を読み解く

歌詞の一節にある「名前さえ忘れても消えない灯火」というフレーズは、この楽曲の中でも特に印象的な表現です。これは、一度は諦めかけたり、置き去りにした過去の夢や想いを象徴していると解釈できます。

人は成長するにつれて、幼い頃に描いた夢や、大切にしていた感情をどこかに置いてきてしまうことがあります。しかし、その夢は完全に消えてなくなるわけではありません。心の奥底で静かに灯り続けており、ふとした瞬間に再び“光”として蘇ることがある。そんな希望をこのフレーズは伝えているようです。

BUMP OF CHICKENの楽曲には、「過去に対する温かなまなざし」や「諦めないことの大切さ」が一貫して込められています。「シリウス」もまた、その系譜にある一曲であり、“灯火”という比喩を通して、聴き手に優しく語りかけているのです。


「命」が問う、守りたいものを見つける歌としてのシリウス

歌詞の中で「命に問いかけた」や「本当に守りたいもの」という表現が登場する場面では、単なる感情表現を超えて、「生きる意味」や「選択の覚悟」が描かれています。これは、日常の中での葛藤や迷い、そしてその先にある“自分の中の真実”に向き合う過程を表しているとも解釈できます。

私たちは常に何かを選び、何かを手放しながら生きています。時にはその選択が苦しく、自分が正しい道を歩んでいるのか不安になることもあるでしょう。「シリウス」は、そんな人生の中で「これは絶対に守り抜きたい」と思えるものを見つけたときの強さと、それを貫く意志の美しさを描いているのです。

命という言葉が登場することで、よりリアルで切実な重みが加わり、「本気で生きるとはどういうことか?」という問いが聴く者に突きつけられます。それがこの楽曲の持つ真の力と言えるでしょう。


「カルマ」との共通点を探る:歌詞に潜むテーマのつながり

BUMP OF CHICKENの過去楽曲「カルマ」と「シリウス」には、歌詞の中に多くの共通点が見られます。たとえば、「鏡」「約束」「呼びかける声」など、象徴的なキーワードが両楽曲に登場し、過去と現在、そして未来をつなぐテーマが強調されています。

「カルマ」では、人間の宿命や存在意義といったテーマが内省的に描かれており、「シリウス」ではそれがさらに“前進する意志”へと進化している印象を受けます。両者ともに、「自分とは何か?」「誰かのために何ができるのか?」といった普遍的な問いを投げかけています。

BUMPの歌詞は単体で完結するのではなく、作品同士が対話するような構造をとっており、聴き手に深い読解を促します。「カルマ」と「シリウス」を聴き比べることで、それぞれの楽曲に込められた意味がより立体的に浮かび上がるのです。


抽象的表現を読み解く:自己対話と希望への到達

「シリウス」の歌詞には、明確なストーリーラインがあるわけではなく、多くが抽象的な表現で構成されています。これは、聴き手自身が自由に意味を解釈できるよう意図されているとも受け取れます。

たとえば、「鏡の前で立ち止まる」という描写には、自分自身と向き合う“内省”の意味が込められているでしょう。苦悩や迷いを抱えながらも、逃げずに自己と対話しようとする姿勢が感じられます。

また、「おかえり」や「ただいま」といった言葉は、帰る場所=自分自身の原点への回帰を意味しているようにも読めます。聴く人がそれぞれの人生経験を重ねることで、自分にとっての「希望」や「大切な何か」を再確認する機会を与えてくれる楽曲です。

このように、BUMP OF CHICKENの抽象的な言葉選びは、聴き手にとっての“鏡”のように機能します。歌詞を通して自分自身を見つめ直し、静かに前へ進む勇気をもらえる、そんな作品になっているのです。