【車輪の唄/BUMP OF CHICKEN】歌詞の意味を考察、解釈する。

「車輪の唄」は、BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)の代表的な楽曲の一つです。
この曲はカントリー調の音楽と、切ない歌詞が組み合わさった美しい世界観で、リリースから20年近くが経過しても、多くのファンに愛され続けています。
今回は、この曲の歌詞に焦点を当ててみましょう。

歌詞の意味を考察、解釈

錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
僕等の体を運んでいく 明け方の駅へと

ペダルを漕ぐ僕の背中
寄りかかる君から伝わるもの 確かな温もり

歌詞のストーリーは、ぼろぼろの自転車に「君」を同乗させ、主人公が日の出前にペダルを漕ぐ場面から始まります。
目的地が「駅」であることから、未来に向かう旅の始まりを予感させます。
主人公は「君」の温かさを感じながら背中に乗せており、この描写から二人の親密な関係がうかがえます。

線路沿いの上り坂で
「もうちょっと、あと少し」後ろから楽しそうな声

町はとても静か過ぎて
「世界中に二人だけみたいだね」と小さくこぼした

錆びついた自転車に二人分の重みをのせ、急な坂道を登るのは、かなりの苦労が伴うでしょう。
主人公は必死にペダルを漕ぐ中で、「君」が楽しそうに励ましています。
この光景は、温かく幸せな瞬間として捉えられます。
まだ日の出前の静かな町を歩行者はほとんどいない中、主人公と「君」だけの時間が続いています。


同時に言葉を失くした 坂を上りきった時
迎えてくれた朝焼けが あまりに綺麗過ぎて

笑っただろう あの時 僕の後ろ側で
振り返る事が出来なかった 僕は泣いてたから

坂道を登り切った瞬間、斜面から隠れていた朝焼けが現れたのでしょう。
最も簡潔な言葉で、坂の頂上で朝焼けを共に眺め、息をのむ二人のドラマティックな瞬間が描かれています。
この鮮やかな光景が、主人公の目から涙を誘ったようです。
感情が高まっている様子は、おそらく待ち受ける別れを思い浮かべていたからかもしれません。


券売機で一番端の
一番高い切符が行く町を 僕はよく知らない

その中でも一番安い
入場券を すぐに使うのに 大事にしまった

券売機で一番高額な切符。
おそらくそれは「君」が手に入れたものでしょう。
この高額な切符は、おそらく一番遠い目的地へ向かうためのものでしょう。
そして、その目的地が「君」の行き先なのかもしれません。
反対に、主人公が手にしたのは見送りの入場券だけです。
遠くへ旅立つ「君」を駅まで送り届け、その旅立ちを見届けるために、主人公は自転車を進めていたのです。

おととい買った 大きな鞄
改札に引っ掛けて通れずに 君は僕を見た

目は合わせないで頷いて
頑なに引っ掛かる 鞄の紐を 僕の手が外した

大きな鞄には旅の必需品がぎっしりと詰まっていたのでしょう。
その鞄の大きさが原因で、改札でトラブルが発生しました。
この出来事は、おそらく二人が離れ離れになりたくないという強い気持ちを象徴しています。
それでも主人公は、引っかかった鞄のストラップを外します。
そして、「君」と目を合わせずにいるのは、もし今「君」を見つめたら旅立ちを止めたくなるかもしれないからかもしれません。


響くベルが最後を告げる 君だけのドアが開く
何万歩より距離のある一歩 踏み出して君は言う

「約束だよ 必ず いつの日かまた会おう」
応えられず 俯いたまま 僕は手を振ったよ

歌詞のこの部分は、ソングライターとしての藤原基央の独自のセンスと個性が際立っています。
「君だけのドア」とか「何万歩より距離のある一歩」といったフレーズは、二人が遠く離れるという切ない現実を鮮烈に表現しています。
電車の扉が開く瞬間、それは「君」だけの入り口であり、主人公はその扉をくぐることはありません。
そして、その電車に乗り込む「君」の一歩は、主人公が何万歩歩いても追いつけない場所へと向かう一歩であります。
「いつの日かまた会おう」という言葉はおそらく「君」から出たものでしょう。
しかし、それに主人公は応えることができませんでした。
その瞬間、主人公が顔を伏せていたのは、感情を抑え込んでいたからかもしれません。


線路沿いの下り坂を
風よりも早く飛ばしていく 君に追いつけと
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
精一杯電車と並ぶけれど
ゆっくり離されてく

駅はおそらく坂道の頂上に位置していると思われます。
上り坂を必死に登った旅路とは対照的に、帰り道は下り坂を勢いよく下っていく様子が描かれています。
しかし、どんなに速く下っても、電車に乗り込んで離れていく「君」には追いつけません。
ゆっくりと離れていく二人の距離が、避けられない別れを象徴しています。


泣いてただろう あの時 ドアの向こう側で
顔見なくてもわかってたよ 声が震えてたから

約束だよ 必ず いつの日かまた会おう
離れていく 君に見えるように 大きく手を振ったよ

「間違いじゃない あの時 君は…」という歌詞に続くのが、このサビだったでしょう。
主人公は涙を堪えて「君」の顔を見ることができず、俯いてしまいました。
同じように、「君」も別れを前にして泣いていたのでしょう。
駅での別れの瞬間、主人公は顔を上げることができなかったのですが、最後には離れ去る電車の前で、「君」がきっとこちらを見ていると思い、大きく手を振ることができました。


町は賑わいだしたけれど
世界中に一人だけみたいだなぁ と小さくこぼした
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
残された僕を運んでいく
微かな温もり

町は明け方の静けさから一日が始まり、賑やかになっていました。
しかし、対照的に、主人公は今や一人になりました。
主人公の背中には、かすかな温もりが残っていますが、それはもはや旅立った「君」の思い出に過ぎません。
そんなぬくもりを感じながら、主人公は一人で自転車に乗り、物語は幕を閉じます。

まとめ

この曲は、明るくカントリー調のサウンドが特徴的ですが、その歌詞には感動的な別れの瞬間が描かれています。
風景、大気、登場人物たちの感情まで、歌詞の言葉選びが非常に印象的で、藤原基央の創造力が際立っています。
BUMP OF CHICKENの「車輪の唄」は、いつ聴いても心に深く響く名曲として、多くの人々に愛され続けています。