【なないろ/BUMP OF CHICKEN】歌詞の意味を考察、解釈する。

「BUMP OF CHICKEN(バンプオブチキン)」の16作目の配信シングル「なないろ」は連続テレビ小説「おかえりモネ」の主題歌です。
朝のドラマに相応しい爽やかな曲と思いきや、ドラマの核心をついていたり、バンプらしさの込められた珠玉の一曲となっています。

この記事では、作詞作曲を手がける藤原基央さんがなないろに込めた意味を、歌詞とともに考察していきたいと思います。

曲名「なないろ」に込められた意味とは?

「なないろ」は七色、つまり虹を彷彿とさせることでしょう。
実際、「おかえりモネ」は主人公が気象予報士を目指すという物語であり、気象に関係するワードが度々登場します。
曲名のなないろもそういったところから名付けられたのかもしれません。

なないろという曲は、虹という目標を達成しようとする「僕」の道のりを表していると言えます。
そのように感じられる理由を歌詞とともに見ていきましょう。

歌詞の考察①朝ドラらしからぬ「暗さ」を併せ持つ序盤

おかえりモネは、朝に放映されるドラマとしては暗い(あるいはシリアス傾向にある)と評されることもありました。
その暗さというのは、バンプの持つ暗の部分と適合している、と感じられるのが序盤の歌詞です。

闇雲にでも信じたよ きちんと前に進んでいるって

よく晴れた朝には時々 一人ぼっちにされちゃうから

この歌詞にはドラマの主人公のモネはもちろんのこと、多くの人にある葛藤を歌っているようにも思えます。
それでも前に進んでいる、と感じさせるのが次のフレーズです。

今この景色の全てが笑ってくれるわけじゃないけどそれでもいいこれは僕の旅

~中略~

高く遠く広すぎる空の下 おはよう 僕は昨日からやってきたよ

失くせない記憶は傘のように 鞄の中で出番を待つ

つまりはモネと同様に多くの人や、歌詞を書いた藤原さん本人さえも迷い、しかしここまで来られたことを肯定しようという姿勢であるように思えます。

歌詞の考察②お日様は傍観者。雨の日のような時を歩む「僕」

1番と同様に2番の歌詞も暗さが続きます。

思い出すと寂しいけど 思い出せないと寂しい事

忘れない事しか出来ない 夜を越えて 続く僕の旅

さらには太陽というものは私たちに光や希望を与えてくれる存在ですが、この曲での立ち位置は傍観者となっており、曲中では次のように表現されています。

昨夜の雨の事なんか 覚えていないようなお日様

~中略~

治らない古い傷は 無かったように隠す お日様

そういったこともあり、「乾いて消える水たまり」が皮肉にも「キラキラ キラキラ」している状況です。
ただ、それでも「僕」は「あの日見た虹を探すこの道を」というフレーズから、虹を探していると考えられます。
モネであれば気象予報士という目標、この曲を聴いた人でいえば各々の目標と解釈することができるでしょう。

歌詞の考察③単調な中にこそ物語がある

優れない天候のような日々を行く「僕」は、「疲れた靴でどこまでだっていける」「躓いて転んだ時は教えるよ 起き方を知っている事」と、まるで自分自身を励ますかのようです。
実際、なないろのMVでは二人の女性が出てきて、違いを慈しみ労るように抱擁します。
この二人はどちらも自分であり、「昨日からやってきた僕」を「今日の僕」が導いてくれている、と解釈することができます。

そして最後のフレーズ「いつか また会うよ 戻れないあの日の 七色」と過去をも虹であると表現し、歩んできた道のりが無駄では無かったことを訴えかけている、と捉えることができるでしょう。

なないろを聴いた方の中には、バンプの代表曲である「天体観測」や「カルマ」「ray」のような盛り上がりが感じられず、単調というイメージを抱くこともあるようです。
ただ、特別感を除いた単調こそが私たちに寄り添い、より身近でリアルを感じるものに仕上がっているのかもしれません。

なないろに込められた物語は、聴いている者全てに起こり得る事象です。
曲自体は受け取る側に委ねられますが、この曲は藤原さんがこれまでの自身の楽曲で示したとおり、全ての歩みを肯定するような希望に溢れた曲となっているのではないでしょうか。

みんなのうたに登場した「魔法の料理〜君から君へ〜」

NHKでは過去にもバンプの楽曲が起用されたことがあり、それが「魔法の料理〜君から君へ〜」です。
この曲は2010年の4月から5月の「みんなのうた」に登場しました。
みんなのうたは子どもに向けられた楽曲が放映されることが多いですが、この曲は年齢を問わず多くの人の心に残る言葉が使われており、例えば「君の願いはちゃんと叶うよ 大人になった君が言う」というフレーズは大人がハッとするものとなっています。

まとめ

なないろは「僕」が歩んできた道のりやその先をも肯定する希望に溢れた曲です。
所々で歌詞が暗いのはその道のりが楽では無いという証。
そういったものを乗り越えた先に「七色(虹)」が待っているという、藤原さんらしいメッセージも込められています。

この曲は活動休止しているメンバーに変わり、藤原さんがベースも担当しています。
ある意味レアですので、そういった点にも注目して聞いてみてくださいね。