米津玄師の新曲『Azalea』は、Netflixドラマ『さよならのつづき』の主題歌として書き下ろされた楽曲であり、その深い歌詞と幻想的なメロディが話題を呼んでいます。
「azalea(アザレア)」というタイトルに込められた意味から、歌詞に織り込まれた象徴的な言葉、そしてドラマとの関係性まで、『Azalea』が語るメッセージを徹底的に掘り下げていきます。
本記事では、音楽を深く味わいたい方に向けて考察を展開していきます。
「Azalea」というタイトルとアザレア(花)の意味・象徴性
タイトルに冠された「Azalea」は日本語で「ツツジ」や「西洋シャクナゲ」を指し、その花言葉には「愛の喜び」「節制」「あなたに愛される幸せ」などが含まれています。
またアザレアは春先に咲くことから、「新たな始まり」や「再生」の象徴とも捉えられます。
- 花言葉からは“穏やかな愛”“時間の流れに寄り添う愛情”が連想される
- 一方で、アザレアは切り花にすると長持ちしない性質があり、「一瞬の美しさ」という儚さも併せ持つ
- これらの象徴性は、楽曲に漂う「変わりゆくもの」と「変わらないもの」の対比構造と深く結びついている
米津玄師は楽曲タイトルに象徴性を持たせる傾向が強く、『Lemon』『馬と鹿』『KICK BACK』などでもそのセンスが発揮されており、『Azalea』も例外ではありません。
歌詞の主要フレーズをパート別に読み解く:挿し木・時・変化など
歌詞の中には多くの象徴的なワードが登場し、物語のような深みを生み出しています。とくに以下の語句が印象的です。
- 「挿し木にしたアザレア」
→ 愛や関係性が自然な成長ではなく「人工的に継がれた」ことのメタファー
→ 自然と不自然、継承と断絶という二面性 - 「時が止まってくれたならいい」
→ 永遠を望む願いと、流れる時間に逆らえない現実の対比
→ 普遍的な“失いたくない”という感情 - 「プルートゥの鳴き声」
→ 冥王星を意味する「Pluto」か、あるいは手塚治虫作品のキャラ「プルートゥ」の暗喩
→ 孤独や排除、遠く離れた存在とのつながり
各フレーズは単なるイメージでなく、聴き手に深い問いを投げかける「詩」のような役割を果たしています。
愛・変化・普遍性:登場するテーマの重層的解釈
『Azalea』の中核には「愛」と「変化」、「普遍性」が同時に存在しています。
- 愛する相手が「変わっていくこと」を受け入れられるか、という問いが歌全体を貫いている
- 「君がどこか変わっても、変わらないものがあると信じたい」というメッセージは、人間関係における“覚悟”のようにも感じられる
- 自分もまた変わっていく存在でありながら、愛がどこまで「変化を超えて残るもの」であるかを問う構成
これは米津玄師が過去の楽曲『アイネクライネ』や『Flamingo』などで描いてきた「不安定さの中にある絆」という主題の延長とも言えます。
ドラマ「さよならのつづき」と歌詞世界の対応・伏線
『Azalea』はNetflixドラマ『さよならのつづき』の主題歌として書き下ろされました。このドラマは、“過去と向き合うこと”“大切な人を失った後の再生”を主軸としたヒューマンドラマです。
- ドラマの主人公が喪失を経験し、変わってしまった世界に再び立ち向かう物語
- 歌詞の中の「変わってしまった君」と「それでも残る思い」は、ドラマの構造とリンクしている
- 特に「夜明けを歩いてく」という表現が、再生や前進を象徴しており、ドラマのテーマと重なる
そのため、楽曲単体でも成立しながら、ドラマの世界を豊かに補完する“物語の一部”として機能しているのです。
米津玄師の発言から読み解く“Azalea”の創作意図
米津玄師は『Azalea』のリリースに際し、以下のような言葉を残しています。
「変わっていくものを見つめながら、それでも残る感情を描いたつもりです。」
この言葉からも明らかなように、彼は“変化”を前提にしたうえで、それを超えて残るものを描こうとしています。
- 単に“失わない”ことではなく、“変化の中でどう保ち続けるか”という問い
- 歌詞には、確信よりも“祈り”や“希望”のようなニュアンスが込められている
- そのため、歌詞の読解においても「明確な答え」より「向き合い方」を重視する姿勢が感じられる
米津玄師の創作は、受け手に「どう感じるか」を委ねるように設計されており、『Azalea』もその哲学の上に立つ楽曲です。
【Key Takeaway】
『Azalea』は、変化の中にあっても消えない愛や感情を描いた楽曲であり、米津玄師が提示する“儚さと強さ”の象徴的な作品です。
アザレアという花の意味、歌詞に散りばめられた象徴語、ドラマとのリンク、そして本人の言葉のすべてが折り重なり、私たちに「変わること」と「変わらないもの」をどう見つめるべきかを問いかけてきます。


