【春雷/米津玄師】歌詞の意味を考察、解釈する。

米津玄師の3作目のメジャーアルバムである『BOOTLEG』に収録されている楽曲『春雷』は、情熱的にみずみずしい純粋な愛情を表現しており、ファンの間で高い人気を誇る曲です。

歌詞には日本語の美しさが感じられ、その意味について考察してみましょう。

かつての初恋を思い出している

2017年11月1日にリリースされた米津玄師の3作目のメジャーアルバムであり、通算4作目となる『BOOTLEG』。

このアルバムには多彩な楽曲が収められており、その中でも特にファンから強い支持を得ている曲が『春雷』です。

タイアップなどで注目されることはありませんが、懐かしさを感じさせるメロディと独特なボーカルによって、何度も聴きたくなる楽曲として親しまれています。

「春雷」とは春の到来を告げる雷を指します。

このフレーズがどのような意味を持つのか、歌詞の解釈を通じて考察してみましょう。

現れたそれは春の真っ最中 えも言えぬまま輝いていた
どんな言葉もどんな手振りも足りやしないみたいだ
その日から僕の胸には嵐が 住み着いたまま離れないんだ
人の声を借りた 蒼い眼の落雷だ

「春の真っただ中」に登場する人物は、言葉やジェスチャーでは十分に表現できないほど輝いています。

その人を見つけた日から、主人公の心は激しい感情に満ちていて、まるで胸に嵐が巣くっているかのようです。

「春雷」が春を告げる雷であり、春が恋愛を象徴することを考えると、これは衝撃的な初恋の出会いを描いていると解釈できます。

揺れながら踊るその髪の黒が 他のどれより嫋やかでした
すっと消えそうな 真っ白い肌によく似合ってました
あなたにはこの世界の彩りが どう見えるのか知りたくて今
頬に手を伸ばした 壊れそうでただ怖かった

風に揺れる「舞う黒髪」と、透き通るような「真っ白な肌」。

美しい色の対比が、相手の女性の繊細で輝く魅力を物語っています。

恋において、相手の見方や考え方に興味を抱くのは自然なことです。

彼もそう感じ、手を伸ばして彼女の頬に触れようとしますが、彼女の儚さや尊さに圧倒され、彼女を傷つけてしまいそうで恐怖を感じます。

愛情が深すぎて、触れることさえ怖くなる感情は、恋を経験した人なら共感することでしょう。

そして、この部分で「似合ってました」や「怖かった」と過去形で歌われていることに着目すると、主人公がかつての初恋を思い出していることがうかがえます。

「あなた」を想う主人公の気持ち

全てはあなたの思い通り 悲しくって散らばった思いも全て
あなたがくれたプレゼント
ゆらゆら吹かれて深い惑い 痛み 憂い 恋しい

「あなた」に恋をしてから、些細なことで喜んだり悲しんだりする自分が、まるで相手の思い通りに振り回されているように感じられます。

「ゆらゆら吹かれて」という歌詞が、恋愛によって揺れ動く心情を素晴らしく表現していますね。

初めての経験に戸惑いを感じることもありますが、「悲しくて散らばった思いも全て、あなたがくれたプレゼント」という前向きな捉え方が印象的です。

「あなた」に恋をすることで得られる感情や経験に気づくと、想いが届かない苦しみや悲しみさえも大切なものとして感じられるという気持ちが伝わってきます。

言葉にするのも 形にするのも そのどれもが覚束なくって
ただ目を見つめた するとあなたはふっと優しく笑ったんだ
嗄れた心も さざめく秘密も 気がつけば粉々になって
刹那の間に 痛みに似た恋が体を走ったんだ

想いを伝えたいと切望しながらも、この感情を「言葉にすることも 形にすることも」うまくできません。

そのため、彼はただ「目を見つめ」、すると「あなたはふっと優しく」笑って応えます。

そんな些細な出来事によって、乾いていた心や胸がざわめきだし、秘密が明るみに出て、恋に落ちたことに気づきました。

激しい音を立てて落ちる雷のように、痛みを伴う恋心が体中を駆け抜け、気持ちは高まっていきます。

深い惑い痛み憂い繰り返し いつの間にか春になった
甘い香り残し陰り恋焦がし 深く深く迷い込んだ

花びらが散ればあなたとおさらば それなら僕と踊りませんか
宙を舞う花がどうもあなたみたいで参りました
やがてまた巡りくる春の最中 そこは豊かなひだまりでした
身をやつしてやまない あんな嵐はどこへやら

感情の波が押し寄せる中、季節が巡り、再び春が訪れました。

「甘い香り」という出来事は、お互いの想いが通じ合っているかもしれないと感じた瞬間を指します。

その期待によって恋心が高まり、出口の見えない恋の中で彷徨っています。

次に続く「花が散れば」というフレーズは、春の終わりを指していると思われます。

春は出会いと別れの季節です。

春に出会った二人は、春が去ることを受け入れる必要があるようです。

このことから、この初恋が主人公の学生時代の思い出であり、春になると卒業してしまう先輩に思いを寄せていた可能性が考えられます。

花が散る頃には別れが訪れるので、最後の思い出を一緒に作ろうという願いが込められていると感じられます。

また、散り始めた花の美しさや、手を伸ばしても届かないもどかしさが、「あなた」を想う主人公の気持ちを表しているようです。

やがてその日々も過ぎ去り、何度も訪れる春。

春の景色に映る初恋の人を思い出しながら、「あんな嵐はどこへやら」と、熱い気持ちと同時に懐かしさと寂しさに胸が締め付けられます。

現実的な人間ドラマ

まだまだ心は帰れない その細い声でどうか騙しておくれ
カラカラに枯れ果てるまで
ふらふら揺られて甘い香り 残し 陰り 幻

「まだまだ心は帰れない」という言葉から、時間が経っても彼女の存在が忘れられないことが伺えます。

彼女の「細い声」を思い出すたびに、恋心が再び湧き上がり、自分も彼女に愛されていたと信じたいという気持ちが表現されているように思えました。

しかしながら、甘い香りの漂う記憶も今では幻と化してしまっています。

想いを伝えられずに別れてしまったとしても、時が経っても忘れることができないほど深い愛情を感じられた恋は、非常に尊いものだと感じますね。

聞きたい言葉も 言いたい想いも 笑うくらい山ほどあって
それでもあなたを前にすると 何にも出てはこないなんて
焦げ付く痛みも 刺し込む痺れも 口をつぐんだ恋とわかって
あなたの心に 橋をかける大事な雷雨だと知ったんだ

彼は彼女の気持ちを知りたくて、自分の想いを伝えたいと思っていました。

「それでもあなたを前にすると 何にも出てはこないなんて」という歌詞は、片思いの不安や焦りを表現しており、多くの人が共感できるでしょう。

そして、恋には苦しみや痺れといった辛い側面も含まれることを理解し、恋がただ楽しいだけのものではないことをはっきりと感じました。

次に続く「あなたの心に 橋をかける大事な雷雨だと知ったんだ」という部分は、さまざまな解釈がなされています。

まず、前の歌詞から恋の苦しさを荒れた「雷雨」と表現していると理解できます。

さらに、相手の心に橋をかけるとは、二人の心を繋ぎ通わせることを意味します。

雨と橋から連想されるのは虹。

虹は雨の後に現れるものです。

このことから、虹が現れるには太陽と雨が必要であり、人と人が心を通わせるにも喜びと悲しみの両方が必要であり、自分が感じた感情は無駄ではないというメッセージが込められているのかもしれません。

そうして迎える穏やかな春は、彼自身を成長させてくれるでしょう。

どうか騙しておくれ 「愛」と笑っておくれ
いつか消える日まで そのままでいて

この部分でも「どうか騙しておくれ」と訴えています。

実際のところは違うと理解しながらも、彼女が自分に向けていた感情が愛だと信じたいという願いが表れています。

その記憶が消える日が訪れるまで、たとえ嘘でも彼女に愛されていたいのです。

実らないと言われる初恋だからこそ、未練がましくも特別な感情を抱く、現実的な人間ドラマが描かれていますね。

初恋の衝撃と愛情の熱量を見事に表現

米津玄師の「春雷」は、春や雷といったテーマを通じて初恋の衝撃と愛情の熱量を見事に表現しています。

歌詞を振り返ると、「好き」や「愛してる」といった直接的な表現は見当たりませんが、主人公が相手に対していかに深い愛情を抱いていたかがストレートに伝わってきます。

日本語の美しさや米津玄師の言葉のセンス、そして初恋の輝きが心の中で蘇ります。