クリープハイプの「栞」は、恋の終わりを“ちゃんと終わらせる”よりも先に、生活や季節の都合でページがめくられてしまう――そんな現実の切なさを、**「本」と「しおり」**の比喩で丸ごと抱え込む曲です。
しかもこの曲、検索すると 「Radio Bestsellers版(ACCESS!キャンペーン)」 と 「クリープハイプ版(セルフカバー)」 が並んで出てくるので、まずはそこを整理しつつ、歌詞の物語を“読み解く”形で意味を考察していきます。
- 『栞』はどんな曲?基本情報(収録作品・リリース時期・MV)
- 「Radio Bestsellers版」と「クリープハイプ版」──2つの『栞』を整理
- タイトル『栞』の意味|“読みかけの本”が象徴する恋と記憶
- 歌詞の全体像(あらすじ)|「簡単なあらすじにまとまってたまるか」の核心
- 主人公の不器用さ|“空気を読む”ことで失っていく本音
- 別れの気配と新生活のモチーフ|「春」「遠くの町」が示すもの
- 印象的フレーズで読む『栞』|文学的なたとえ・言葉のひっかかり
- MV/キャンペーン背景から深掘り|なぜ“新生活の応援歌”として響くのか
- 解釈が割れるポイントQ&A|視点は誰?2人の関係は?結末は?
- まとめ|『栞』が残す“続き”──ページを閉じても、しおりは残る
『栞』はどんな曲?基本情報(収録作品・リリース時期・MV)
「栞」は、尾崎世界観が作詞・作曲した楽曲で、もともとは FM802×TSUTAYA「ACCESS!」キャンペーンのために書き下ろされた“新生活応援”の文脈を持っています。
その後、クリープハイプの5thアルバム 『泣きたくなるほど嬉しい日々に』 に収録され、2018年9月26日に作品がリリース。アルバム収録曲「栞」は先行配信も行われました。
MVについては、クリープハイプ版の「栞」公式映像が公開されており、武道館公演映像を編集して構成したものだと案内されています。
「Radio Bestsellers版」と「クリープハイプ版」──2つの『栞』を整理
検索で混乱しやすいポイントはここです。
- Radio Bestsellers「栞」:ACCESS!キャンペーンのための企画ユニット名義。あいみょん、片岡健太(sumika)、GEN(04 Limited Sazabys)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、スガ シカオ、尾崎世界観が参加する形で歌唱されています。
- クリープハイプ「栞」:上記の楽曲を“バンドとして”歌い直した(セルフカバー)位置づけで、尾崎が全パートを歌う/アレンジも異なる旨が公式レポートで触れられています。
同じ「栞」でも、**“みんなで歌う春のテーマソング”としての輪郭が強いのが前者、“クリープハイプの恋愛文学”**として刺さりやすいのが後者、という印象です(この差が歌詞の受け取り方にも効いてきます)。
タイトル『栞』の意味|“読みかけの本”が象徴する恋と記憶
栞(しおり)は、読みかけの本に挟んで「次に読む場所」を示すもの。つまりこのタイトルは最初から、恋を **“一冊の物語”**として扱っている宣言です。
ポイントは、しおりが示すのは終わりではなく、途中だということ。
別れの後でも、きれいに完結しない感情がある。読み終えたわけじゃないのに、生活の都合で本を閉じて、しおりだけが残ってしまう――「栞」は、その“途中で止まった感じ”をタイトルだけで背負います。
ちなみにアルバムの特装盤/初回限定盤には「栞(しおり)」が付属する仕様もあり、作品コンセプトとして“栞”を実体化しているのも象徴的です。
歌詞の全体像(あらすじ)|「簡単なあらすじにまとまってたまるか」の核心
この曲の骨格は、ざっくり言えば「春」「新しい町」「別れ」の三点に集約できます。
相手は新しい環境へ進んでいく。主人公はその背中を見送りながら、引き止めたい気持ちと、背中を押したい気持ちの間で引き裂かれている。
そこで出てくるのが、あの反骨の一行――「簡単なあらすじにまとまってたまるか」。
恋の終わりを“別れました”の一文で片付けるには、途中のページに書き込みすぎた。言えなかったこと、言ってしまったこと、勘違い、沈黙、優しさのふり。そういう細部が、関係の“本文”だったんだと気づいてしまう。
要するにこの曲は、失恋の説明ではなく、説明不能な感情の残骸そのものを歌っているんですよね。
主人公の不器用さ|“空気を読む”ことで失っていく本音
「栞」の主人公は、器用に相手を喜ばせるタイプというより、空気を読めば読むほど本音が遅れるタイプです。
本当は「行かないで」と言いたいのに、言えない。
本当は怒りたいのに、笑ってしまう。
本当は泣きたいのに、平気なふりをする。
この“遅れ”が積み重なると、関係はいつの間にか「最終話」ではなく「打ち切り」みたいに終わります。だからこそ「栞」が残る。終わった実感がないまま、ページだけが進んでしまうから。
別れの気配と新生活のモチーフ|「春」「遠くの町」が示すもの
「春」は出会いの季節であると同時に、環境が強制的に切り替わる季節です。進学、就職、引っ越し。
この曲がACCESS!(新生活応援)の文脈で生まれたことを知ると、“個人的な別れ”が“社会的な季節”に押し流される感じが、よりくっきり見えてきます。
遠くの町へ行く相手にかける言葉は、優しさにも呪いにもなる。
「元気でね」は祝福だけど、同時に「ここには戻らないでね」にも聞こえる。主人公はたぶん、その両方を分かったうえで言ってしまう。だから痛い。
印象的フレーズで読む『栞』|文学的なたとえ・言葉のひっかかり
「栞」は比喩が“きれい”というより、生活に近い言葉が急に文学へ飛ぶのが強みです。
- 恋を「一冊の本」にしてしまう大胆さ
- それでも“うまく書けない”という不器用さ
- 感情を「要約」できない反発(=あらすじ拒否)
- 季節や移動(春・町)が、個人の選択を超えて襲ってくる感覚
ここを読むコツは、歌詞を「正しい意味」に固定しようとしすぎないこと。
むしろ“引っかかる言葉”をしおり代わりに挟んで、何度も戻って読む。そういう読み方に向いた曲です。
MV/キャンペーン背景から深掘り|なぜ“新生活の応援歌”として響くのか
Radio Bestsellers版は、豪華ボーカリストが同じ曲をつないでいくことで、「ひとりの失恋」よりも「みんなの春」に開いていく力があります。参加者情報やMV公開は各媒体でも報じられています。
一方、クリープハイプ版の公式映像は武道館公演映像を編集したものだとされ、バンドの体温で“個”へ回収していく印象が強い。
公式レポートでも、Radio Bestsellers版との違い(尾崎が全パートを歌う/アレンジが異なる)が語られていて、まさに**「みんなの歌」⇄「ひとりの歌」**を往復できるのが「栞」の面白さです。
解釈が割れるポイントQ&A|視点は誰?2人の関係は?結末は?
Q1. 語り手は男性?女性?
A. 断定は難しいです。クリープハイプは“性別を固定しない痛み”の描き方が多いので、聴き手の経験に寄せて読めます。
Q2. 2人は恋人だった?友達だった?
A. 恋人と読むのが自然ですが、決定打を避けることで、片想い・曖昧な関係にもフィットします。「あらすじにできない」のは、関係のラベルが曖昧だった可能性もあります。
Q3. 結末は復縁?それとも完全に別れ?
A. 曲は“決着”より“余韻”を残します。しおりは「また読む」を示す一方で、「いまは読めない」の印でもある。復縁の希望と、戻れない現実が同居して終わるのが「栞」らしさです。
まとめ|『栞』が残す“続き”──ページを閉じても、しおりは残る
「栞」の歌詞が刺さるのは、別れを“正しい物語”に整えないからです。
恋は、綺麗な最終回があるとは限らない。むしろ多くは、途中で本を閉じて、しおりだけが残る。
そして、残ったしおりは痛い。
でも同時に、あの時間が“確かに読まれていた”証拠でもある。
だからこの曲は、失恋の歌というより、過去を否定せずに抱えて生きるための歌として、春のたびに読み返されるのだと思います。


