【キケンナアソビ/クリープハイプ】歌詞の意味を考察、解釈する。

2020年1月にリリースされたクリープハイプの楽曲『キケンナアソビ』は、その過激な歌詞と「ピー」音を使用した表現が話題となりました。
今回、この楽曲に込められた「キケンな」歌詞の意味について詳しく解説してみましょう。

欲望に忠実な関係

そうやって口ばかりで だからさ どうせやるなら早くしようよ
始めから終わってるなら どのみち 後腐れないし
本当は君だけをとか要らないから
この道をまっすぐ行けば帰れるから
これからも末永くお幸せに
じゃあ気をつけて

『キケンナアソビ』は、言葉や仕草を駆使して情熱的に愛し合う関係ではなく、身体的な交流だけを中心に据えた純粋な「キケンな」関係を描いた楽曲です。
歌詞から具体的に浮気か不倫かを推測することはできませんが、恋愛における感情よりも欲望や肉体的な交流を重要視する、欲望に忠実な関係が描かれています。

これからも末永くお幸せに
じゃあ気をつけて

特にこの歌詞からは、自分を愛してほしいというよりも、単に行為を欲する感情が前面に押し出されています。
とはいえ、ここからの展開がクリープハイプ尾崎の独自の世界観を存分に表現しています。

どこまでも不毛な欲望のやりとりだけ

それでも
お風呂で流す嘘の匂い 首から上だけでも残してよ
心がすり切れて揺らぐから
することすればうつる匂い 首から下だけでも愛してよ

身体的な関係を持った後、火照った身体をシャワーで洗い流す瞬間に、虚しさや孤独感が増してきます。
二人の距離がゼロになった瞬間の君の匂いが、シャワーで流れ去ってしまうと、まるでその行為が存在しなかったかのような気がしてしまうのです。
だから、この即物的な関係にもかかわらず、何か証拠が残ってほしいのです。
このような感情がサビに込められており、ここから物語はさらにキケンな方向へと展開していきます。

体で繋ぎ止めて揺れる夜
それだけ それだけ それだけで良いのにな
って嘘だよ

愛情が不在でも、身体的な結びつきだけが十分だと思われます。
これは最初は純粋で可愛らしい感情に思えますが、最後に「嘘だよ」という言葉が挿入され、全てが逆転します。
「愛情は不要、身体的なつながりだけで十分だ」という主張は嘘であることを示唆しています。
要するに、身体的な関係だけでなく、心までをも手に入れたいという願望が存在します。
浮気や不倫といった関係であっても、全てを手に入れたいという肉欲を超えた感情が表現されています。

こっちは口だけじゃない だからさ もっと色々しようよ
やっぱり終わってるから 何しても もう意味ないな

この曲の魅力の一つは、放送禁止用語の「ピー」音が使われた部分です。
当然ながら、性的な表現を含む可能性もありますが、それに加えて「君が私よりも愛しているあの子とはできない色々なこと」というフレーズを関連づけて考えることもできます。
「あの子よりも私の方が」という感情を強調するために、「ピー」音が使われている点は、非常に独創的であり、聴衆に強烈な印象を残す方法と言えるでしょう。
クリープハイプは、このようなアイデアを通じて、一度聴いたら忘れられない音楽を作り出すための秘密を秘めているバンドとアーティストとして高く評価されています。

信じてる君だけはとか言わないから
この道をまっすぐ行けば帰れるから
これからも末永くお幸せに
ほら火をつけて

『キケンナアソビ』は、火遊びを喩えて紡がれたこのフレーズが特徴です。
愛情や言葉の重さを排除し、それでもあの子と幸せになる君を火遊びに誘う、哀れな主人公の物語が描かれています。
「やっちゃダメ」と言われれば、やりたくなるもの。
「触っちゃダメ」と言われれば、触れたくなるもの。
このような好奇心に負けて、君が最終的に私を選んでくれる未来があるかもしれませんが、即物的な関係に宿るのはどこまでも不毛な欲望のやりとりだけであるというメッセージが込められています。

真っ赤に燃える夕焼けと火遊びを結びつけている

体で繋ぎ止めて揺れる夜を越えて
夢みたい 夢みたい 夢みたいな話
なんか馬鹿みたい 馬鹿みたい ほんと馬鹿みたいだな
馬鹿みたい 馬鹿みたい 馬鹿みたいだあたし
なんか夢みたい 夢みたい ぜんぶ夢みたいだな

身体的な結びつきを求め、共感し合った夜が、もしも本当の愛につながれば…。
このような考えが頭をよぎり、現実はそれが実現しないことを思い知る。
夢想的な感情に対する自己嘲笑が表現されている歌詞です。
『キケンナアソビ』では、君への熱烈な情熱と冷静な感情が激しく入れ替わる様子が描かれています。
この感情の波は、不倫や浮気を経験していない人でも共感できるものです。
浮気や不倫は許されない行為ですが、君を愛している気持ちに一定の共感を抱くことができる歌詞が、この曲に詠まれています。

夕焼け小焼けのチャイムが鳴って
よい子は早く家に帰りましょう
夕焼け小焼けのチャイムが鳴って
よい子は早く家に帰りましょう
夕焼け小焼けで真っ赤に燃えて

君との「キケンな」関係と平行して、私には普段の生活も存在します。
時折、他の人には見せないようなおとなしい振る舞いをして、お利口な振りをして過ごしているかもしれません。
それでも、太陽が沈んで夜が迫ると、真っ赤に燃える夕焼けと火遊びを結びつけ、夜が訪れると再び君との背徳的な行為が待っていることを示唆する歌詞は、非常に力強い表現です。

「キケンな」関係を垣間見ることができる

良い子が家に帰り、太陽が沈んだ頃、君との「キケンなアソビ」が始まります。
『キケンナアソビ』は、君との行為の中からその後、そして私が一人で抱えている葛藤までを鮮明に描いた一曲です。
許されない感情が許されないからこそ、炎上する。
このような「キケンな」関係を垣間見ることができるのが、クリープハイプの『キケンナアソビ』なのです。