あいみょん「今夜このまま」歌詞の意味を徹底考察|ビールと夜に隠れた本音とは?

ドラマ『獣になれない私たち』をきっかけに知った人も多い、あいみょんの「今夜このまま」。
クラフトビールバーの夜を舞台にしたドラマ世界とリンクするように、この曲の中でも“泡”や“夜”、“とりあえずアレ下さい”といったワードが、恋と仕事に疲れた女性の本音をリアルに描き出しています。

この記事では、「あいみょん 歌詞 意味 今夜このまま」で検索してきた方に向けて、歌詞の内容をできるだけストーリーとしてイメージしやすいように、Aメロ・Bメロ・サビごとに丁寧に解釈していきます。
単なる失恋ソングとも、ただの“酔っぱらいソング”とも言い切れない、「今夜このまま」に込められた想いを一緒にひも解いていきましょう。


あいみょん「今夜このまま」とは?ドラマ『獣になれない私たち』主題歌の基本情報

「今夜このまま」は、あいみょんの6枚目のシングルとして2018年11月14日にリリースされた楽曲です。
日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』の主題歌として書き下ろされた曲で、新垣結衣×松田龍平のW主演、大人のラブストーリーを彩る重要なピースでもありました。

ドラマの舞台は、クラフトビールバー。
そこで偶然出会った男女が、仕事や恋愛、社会のしんどさに傷つきながらも、本音でぶつかろうともがく姿が描かれます。そんなドラマの世界観に寄り添うように、「今夜このまま」でもビールの“泡”やバーの夜の空気が、主人公の心の状態とリンクするモチーフとして繰り返し登場します。

歌詞・作曲ともにあいみょん自身が手がけており、彼女らしい“等身大の女の子目線”で、うまくいかない恋と、自分を偽って頑張りすぎてしまう日々のしんどさが描かれているのが特徴です。


「今夜このまま」歌詞の意味を一言で言うと?恋と仕事に疲れた女性の本音

「今夜このまま」の歌詞を一言でまとめるなら、
“頑張りすぎてボロボロになった心を、今夜くらいは誰かに預けてしまいたい”
という叫びだと言えます。

主人公は、日中はちゃんとした社会人として働き、周りに気を遣いながら「いい人」「仕事ができる人」を演じているタイプ。
でも本音の部分では、

  • 言いたいことも飲み込んでばかり
  • 自分の感情に追いつけていない
  • 恋愛でも“本気”になりきれず、相手にも本気で求められていない気がする

という、自己嫌悪と虚しさを抱えています。

そんな彼女が、ビールのグラスを前にしてふと出てしまうのが「今夜はこのまま」という本音。
きれい事も、正しい選択も、一旦ぜんぶ置いておいて――
“満たされない心を、今だけは何かで埋めてしまいたい”という衝動が、この曲全体を流れる大きなテーマになっています。


Aメロ・Bメロ歌詞解釈|抜け出せない夜とビールが象徴するモヤモヤした感情

Aメロでは、まずビールの“泡”と味わいが印象的に描かれます。
「苦いようで甘いような」という表現は、そのまま彼女の人生そのもの。
仕事も恋も、楽しい瞬間は確かにあるけれど、同じくらい苦くて、そしてその苦さから抜け出せない。そんな二面性が“ビール”というモチーフに乗せられています。

さらに、

  • 頭の中では「行かないで」と追いかけたいのに、体が動かない
  • 本当はもっと素直に、感情のままにぶつかりたいのにできない

という、心と身体のズレが描かれます。
この「体は言うことを聞かない」という感覚は、仕事で“良い人”を演じているときの自分とも重なりますよね。心では「嫌だ」「しんどい」と叫んでいても、口から出てくるのは「大丈夫です」「やっておきます」の一言、というような。

Bメロでは、そんな自分から“抜け出せない/抜けきれない”ことが、より直接的な言葉で語られます。
「よくある話」で片付けたくないのに、現実はよくある話の一つに過ぎない――そのギャップが、彼女をさらに追い詰めていきます。

ビールを飲みながら心を麻痺させようとしても、モヤモヤは泡のようにはじけて消えてくれない。
Aメロ・Bメロは、そんな“出口のない夜”の入り口を、じわじわと描いているパートだと言えるでしょう。


サビの歌詞の意味|「今夜はこのまま」に込められた“満たされたい・満たしてみたい”願望

サビで何度も繰り返されるのが、「今夜はこのまま」というフレーズ。
ここに込められているのは、

  • このままの関係でいいから、今だけはそばにいたい
  • 正しさよりも、心地よさに身をゆだねたい
    という、理性より感情を優先したい気持ちです。

別の解釈サイトでは、「満たされたい」「満たしてみたい」という2つの感情が同時に存在している、とも指摘されています。

  • 誰かに抱きしめられて、自分の空虚さを埋めてもらいたい“受け身の願望”
  • 逆に、自分から誰かを激しく求めて、乱してしまいたい“攻めの願望”

この相反するような二つの願いが、酔いのまわった夜だからこそむき出しになってしまう。
だから彼女は、朝になって正気に戻る前に、“今夜だけはもう少しこのままでいさせてほしい”と願うのです。

サビは、理性的な自分が薄れて、いちばん“人間臭い”欲望があらわになる部分。
聴いている私たちも、「そこまで言っちゃう?」と思いながら、どこかで共感してしまうのではないでしょうか。


2番以降の歌詞解釈|「いかないで」と言えない関係性と、自分を好きになれない苦しさ

2番の歌詞では、舞台が“社会”や“職場”といった、もう少し広い世界に移ります。
「広いようで狭いような場所」というフレーズは、

  • 可能性は無限にあるように見えて、実際は選択肢が限られている
  • 自由そうに見えて、実はルールや空気に縛られている

そんな現代社会の生きづらさを象徴しているようです。

そこで主人公は、言いたいことも喉につかえたまま。
体は「もう帰りたい」と嘆いているのに、それを口に出すこともできず、ただ笑ってやり過ごしてしまう。
この“本音を飲み込むクセ”は、恋愛の場面にもそのまま持ち込まれます。

本当は「いかないで」と言いたい相手がいるのに、その一言が言えない。
言ってしまえば関係が変わってしまうかもしれないし、そもそも自分なんかがそんなことを言っていいのか――と、自己評価の低さが彼女の口をふさぎます。

2番の主人公は、

  • “追いかけたい誰か”もいない
  • “自分を必死に追いかけてくれる誰か”もいない

という「どちらの熱量も持てていない状態」にいると解釈することもできます。
だからこそ、余計に自分のことを好きになれず、虚しさだけが積もっていくのです。


ラスサビの変化に注目|「言えない想い」から「癒えない想い」へ加速していく感情

この曲でとてもおもしろいのが、サビの言葉の変化です。
途中のサビでは“言えない想い”と歌っていた部分が、ラストでは“癒えない想い”に変わります。

最初は、

  • 口に出せない
  • 行動に移せない
    という、“表に出せない感情”としての「言えない想い」。

ところが物語が進むうちに、その想いは“時間が経っても治らない傷”としての「癒えない想い」へと変質していきます。
つまり、
「伝えられなかった気持ち」が、「治らない心の傷」になってしまった
ということ。

さらにラスサビでは、「消えない想い」を軽く火照らせて飛ばそうとする描写も出てきます。
ビールの酔いに身を任せて、一瞬だけでも痛みを忘れようとするけれど、本当の意味ではどこにも行ってくれない――そんなやり場のない感情が、加速していくイメージです。

それでも最後に彼女が願うのは、「泡の中で眠れたらなあ」という、現実からほんの少しだけ距離を取った夢見心地の時間。
ここには、“解決ではなく、せめて今夜だけの避難場所がほしい”という、切実な祈りが込められているように感じられます。


キーワードから読む歌詞の世界観|「とりあえずアレ下さい」「泡」「夜」が示す意味

「とりあえずアレ下さい」=全部を説明したくない気持ち

居酒屋でよく聞く「とりあえず生で」を、少しぼかして「とりあえずアレ下さい」と言っているのが印象的なフレーズ。
ここには、

  • いちいち自分の状況を説明したくない
  • 面倒なことは省いて、早く“酔える状態”に持っていきたい

という、疲れ切った心の状態がにじんでいます。

「泡」=一時的な逃げ場であり、儚さの象徴

何度も出てくる“泡”は、

  • 一瞬で消えてしまう儚さ
  • けれどその瞬間だけは、ふわっと心を包み込んでくれる心地よさ

を同時に持ったモチーフです。
弾けては消えていく泡に、自分の感情をくぐらせることで、少しだけ軽くしようとする――そんな心理が重ねられています。

「夜」=理性のブレーキが緩む時間

“夜”もまた、重要なキーワードです。
昼間はしっかり者として振る舞わざるを得ない彼女も、夜になると少しだけ本音を出せる。
「今夜はこのまま」という願いには、
“朝が来るまで、理性的な自分をいったん休ませてほしい”
という意味合いが込められていると考えられます。

こうしたキーワードを手がかりに歌詞全体を眺めてみると、
ビール=逃げ場/泡=一瞬の安堵/夜=本音が顔を出す時間
という図式が見えてきて、曲の世界観が立体的に感じられるはずです。


あいみょんらしいリアルな恋愛観とは?「今夜このまま」が共感を集める理由

「あいみょんの恋愛ソング」と聞くと、まっすぐなラブソングを想像するかもしれませんが、「今夜このまま」はもう少し複雑で、ぐちゃぐちゃした感情に寄り添った曲です。

  • 好きとまでは言い切れないけど、嫌いじゃない
  • この関係は良くないとわかっているのに、手放せない
  • ちゃんと向き合う勇気もないけど、今夜はそばにいてほしい

そんな“グレーな感情”を、そのままの温度で歌い上げているところに、あいみょんらしさがあります。

また、ドラマの中で描かれていた“頑張りすぎちゃう大人たち”の姿とリンクすることで、
「これは私の歌だ」と感じた視聴者・リスナーも多かったはず。
ドラマタイアップとしての強さと、単体の楽曲としての完成度がうまく噛み合い、一気に代表曲の一つとなっていきました。

「今夜このまま」は、
“正しく”生きようとして擦り切れてしまった心を、そっと撫でてくれる曲
と言えるかもしれません。
傷は癒えないかもしれないけれど、「今夜くらいはこのままでいいよ」と寄り添ってくれる――そんな温度を感じながら、改めて歌詞を味わってみてください。