【3636/あいみょん】歌詞の意味を考察、解釈する。

あいみょんの楽曲『3636』は、2022年7月29日にデジタルリリースされました。
この曲は、謎めいた数字のタイトルと、歌詞やミュージックビデオに登場する宅配ボックスが注目を集めています。
歌詞はリアルな共同生活を描写し、その背後に潜む意味を解釈することができます。


『3636』は、シンガーソングライターのあいみょんが、彼女の4番目のアルバム『瞳へ落ちるよレコード』に収録されている楽曲です。
このアルバムには、ドラマ『コントが始まる』の主題歌である『愛を知るまでは』を含む、計13曲が収録されています。このアルバムは、あいみょんの独自の世界観を楽しむことができる貴重な一枚と言えるでしょう。

アルバムは、2022年8月17日にリリースされましたが、『3636』はアルバムの発売前に、2022年7月29日に先行配信されました。また、この楽曲にはミュージックビデオも制作され、その監督をClassic 6が初めて務めました。この曲はアルバムの中でも特に注目され、タイトルのインパクトと共に強烈な存在感を放っています。

さて、『3636』というタイトルには深い意味が込められているようです。その詳細な考察をしていきましょう。

過去の幸せな瞬間を守りたい

嫌になったの?
私と過ごす日々を
飽きてしまったの?
なんのアレンジも効いてない日々に
つまんなくて 嫌になったのかな
今日の帰りは何時?

新しい恋愛の魅力や緊張感が薄れ、静まり返った雰囲気が広がっています。
『3636』は、このような諦観の感情を表現しています。
曲の主人公である「私」は、同棲していた相手との関係がうまくいっていないようです。
愛する人と共に過ごす朝から夜までの幸せは、以前のように感じられなくなってしまったようです。
同棲すると、相手の欠点や嫌な面も見えてくると言われています。
最初は素の自分をさらけ出すことの新鮮さも、やがて日常の退屈さに変わってしまうこともあるでしょう。
帰宅時間ですらわからない状況や、2人の関係の冷え切った様子が、私たちの想像の中に広がります。

嫌になったの?
私の無駄な早起きとか寝癖
うざったくなったの?
なんのアレンジもしてない髪も
ダマになってて 嫌になったのかな
女の子は大変だ

「早起き」という歌詞から、同棲生活のリアルさが伝わってきます。
朝の早起きや寝癖、髪型の整えられない瞬間。
『3636』は、同棲生活が最初はキラキラしていた風景ではなく、日常の中で色あせていく様子を描いています。
おそらく最初は同棲を始めたばかりの頃は、お互いに気合いを入れて、魅力的に見せようとしたかもしれません。
しかし、時間が経つにつれて、本当の自分が次第に表れるものです。
早起きはできても、髪型にこだわることはできない彼女。
生活リズムや価値観の違いが積み重なると、大きな溝が生じることがあります。
歌詞から感じられる日常のリアルさが、徐々に心が離れていく恋人との距離感を一層切なく感じさせます。

宅配ボックスの5番のとこ
いつもの暗証番号で
閉じ込めてる 2人の思い出

宅配ボックスを思い出の保管場所として選ぶアイデアには、センスを感じます。
『3636』は、あいみょんが自身の宅配ボックスを開けなくなったことを妄想して生まれた曲です。
宅配ボックスの中身が具体的にどうであるかは、あまり重要ではないかもしれません。
ただ、昨日まで普通に開けていたものが急に開かなくなる瞬間は、何らかの拒絶を感じさせ、重要な荷物が中になくても、それが人々に悲しみをもたらす一因と言えるでしょう。

宅配ボックスが開かないのです
私が固く閉ざした
その扉 簡単には開かないのです

「私」は大切な思い出を宅配ボックスの扉に封じ込め、その扉は「私」自身の決意で固く閉じられました。
この行為は、幸せな瞬間がどれだけ過去に遡っても逃げ去らないように、確実にその美しい瞬間を保持したいという心の願いを表しています。
この心の声は、過去の幸せな瞬間を守りたいという強い意志を反映しているでしょう。

過去の思い出に執着する「私」

苦手だったの?
私の作る朝ごはんの味も
飽きてしまったの?
なんのアレンジも効いてないからさ

ヘアスタイルだけでなく、料理に関してもアレンジが難しい状況にありました。
毎日一緒に過ごしているにもかかわらず、日々の刺激が薄れていく中で、相手の心が離れていったのかもしれません。
相手が何を考えて去って行ったのか、それは「私」には分からない謎となっています。
置いて行かれた側は、自分自身を責め、自身の欠点を挙げてしまうことしかできません。
この歌詞は、まるで懺悔のような感情を表現し、心に深く響くものとなっています。

胃が苦しくて 嫌になったのかな
今日はカレーライスだよ

歌詞に登場する「今日はカレーライスだよ」というフレーズには、心からの切実な願いが込められているように感じます。
最大限のアレンジを凝らして作ったカレーライスは、帰ってきてほしいという強い願いを表現しています。
何とかして相手を呼び戻そうとする姿は、健気でありながらも、その果たせない努力が痛々しい側面も持っています。

宅配ボックスの2番のとこ
いつもより小さいその部屋に
閉じ込めてる あなたの面影
宅配ボックスが開かないのです
あなたが固く閉ざした
その心 簡単には開かないのです

「私」の生活から姿を消した「あなた」は、宅配ボックスの中に存在しているとされています。
しかし、その心は閉じられ、解放することはできません。
2人の関係に生じた深い溝は、容易に克服することは難しいでしょう。
宝物のように大切な思い出を封じ込めた宅配ボックスと、心を封じ込めた宅配ボックスの両方が、「私」と「あなた」によって固く閉じられ、他人には開けることができません。
過去の思い出に執着する「私」にとって、「あなた」の心を再び開くことはもう難しいのかもしれません。

隣の部分を開ければ、明るい未来が待っているかもしれない

毎日の楽しさに 自惚れすぎたね
幸せの海で 浮かれすぎたよ

幸せの味付けを調べてみたんだけど
それぞれの “さじ” 加減らしいからさ

幸福は、その中に没頭している時には気付かないものです。
“自惚れ” という自虐的な言葉を使って、過去の自分を嘲笑っているのかもしれません。
楽しさや浮かれた気分に夢中になりすぎて、幸福がこぼれ落ちていくことに気付かなかった愚かさ。
後悔しても、時間も大切な人も戻ってこないのが現実です。
人々にとって幸福の定義は異なるため、レシピ通りに行動すれば誰でも幸福になれるわけではありません。
自分独自の方法で努力したにもかかわらず、幸福を逃してしまった「私」。

いつの間にやら2人の合言葉も
合鍵も相槌もなくなったね
静かになってしまったこの部屋は
2人の恋を詰めていた箱になったね

最初は、2人だけが共有する特別な合言葉のようなものが、2人の部屋に存在していたかもしれません。
それは言葉に頼らずとも心で通じ合い、温かい雰囲気を持っていたでしょう。
しかし、それらの要素は次第に冷え切った雰囲気に変わり、コミュニケーションも減り、2人の距離は修復不可能なほど遠ざかったのかもしれません。
以前、愛が溢れていた部屋は、いつの間にか「2人の恋を詰めた箱」と化し、その箱もまた、宅配ボックスのように堅く閉じられました。
ただし、宅配ボックスの中に閉じ込められているのは暗証番号ではなく、”私”の心です。
まるで心に鍵がかかったかのように、別々の宅配ボックスに閉じこもる “私” と “あなた”。
2番と5番の間には、充填できない心の隙間が開いてしまったようです。

宅配ボックスの5番のとこ
いつもの暗証番号で
閉じ込めてる 2人の思い出
宅配ボックスが開かないのです
私が固く閉ざした
その扉 簡単には開かないのです

同棲は、2人の心が互いに通じ合っている場合にこそ成り立つものです。
部屋が単なる箱に変わり、愛情が失われた場所では、愛情の欠片を集め、美しい思い出だけを封じ込めることしかできません。
そのため、「私」は宅配ボックスをしっかりと閉じ、簡単には開けられないように封印した可能性があります。
2番には「あなた」の心が閉じ込められ、5番には2人の思い出が詰まっています。
3番や6番の隣には、何があるのか興味がわきます。

宅配ボックスから広がる物語に、続きがあるのかどうかは分かりません。
MVでは電車のボックス席や宅配ボックスに囲まれた空間で歌うあいみょんの姿が描かれ、懐かしさ漂う映像や、どこか不安げな表情が曲の切なさを一層引き立てます。
タイトルにもなっている『3636』は、2番や5番に閉じこもった2人には、他の可能性があったことを示唆しているかもしれません。
もしも宅配ボックスを開かずに閉じこもることをやめ、隣の部分を開ければ、明るい未来が待っているかもしれません。
開かなくなった宅配ボックスに留まり続ける「私」にとって、新たな希望が見つかることを期待する曲です。