【ハート/あいみょん】歌詞の意味を考察、解釈する。

ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』の主題歌であったあいみょんの『ハート』は、少し歪んでいて不器用な男女関係に焦点を当てており、秘密裏に恋する女性の感情を歌詞が表現しています。
この曲の歌詞のメッセージを解釈してみましょう。

偽装結婚から始まるユニークな夫婦関係を描くドラマ

人気シンガーソングライターであるあいみょんは、これまで多くの楽曲で男女の恋愛模様を美しく表現し、そのストレートなアプローチが支持されています。
2021年11月24日に発表された彼女の12枚目のシングル『ハート』も、ドラマ『婚姻届に判を捺しただけですが』の主題歌として、恋愛の複雑さや人間関係の不器用さを率直に歌っています。

あいみょんはこれまで歌詞を書き直すことは滅多になかったと語っていますが、この曲に関しては何度も歌詞を練り直し、その細部にこだわり抜いたそうです。
この曲は、偽装結婚から始まるユニークな夫婦関係を描くドラマのストーリーにぴったりと合った、大人の恋愛ソングとして注目されています。
そこで、歌詞の意味を深堀りしてみましょう。

その気持ちを捨てることはできない

伝えることが難しいこと
近くにいればいるほど
なんだか胸が痛い
眠たい夜に眠れないこと
予測できない帰りを待ってる私がいる

身近な関係にある家族や恋人という存在に対して、伝えにくい感情や事実が存在することはよくあります。
特に、偽装結婚という状況下では、自分が相手に恋をしてしまったと告げることは難しいことかもしれません。
その真実を告げることで解決できる可能性が高いのにもかかわらず、関係が崩れることを恐れて、口に出すのがためらわれることで、内心では苦しんでいることでしょう。

実際には、その関係が終わるかもしれないという不安や心配が胸にのしかかり、「胸が痛い」と感じることもあるでしょう。
夜になっても眠れないことがあるのは、彼が通常よりも早く帰宅するかもしれないという期待があるからかもしれません。
実際には帰宅するかどうか分からないのに、彼と過ごす時間を楽しみにしてしまうのは、彼に対する愛情ゆえの感情かもしれません。

ひとつになる度、期待すること
近くにいればいつかは待ってる?
柔い時間
見過ぎた理想と笑われたこと
私の隅で小さく高鳴ってる
未来が泣く

何度も身体を結びつける相手に対する「期待」とは、感情を共有し、将来の結婚を考えることと言えるでしょう。
ただ、現在の関係がこのままで「いつか」そうなるのかどうか、主人公は期待と不安を抱えています。

「柔い時間」という表現は、すぐにでも崩れてしまいそうなのに、どこか快適さを感じる、現在の関係の不確かさを表していると思われます。
偽装結婚相手との愛を育みたいという主人公の微細な期待に対して、周囲からは「理想を抱きすぎだ」と笑われることがあります。
しかし、同じ時間を共有し、彼を理解するにつれて、主人公の恋心が確実に「私の中で小さく高鳴っている」と感じられ、もはやそれに抗うことはできません。

たとえ自分と彼の未来が悲しいものになる可能性があっても、その気持ちを捨てることはできないのです。

その歪みがあるからこそ

さようならは嫌
わがままかしら?
ただ貴方の、貴方の心を奪えたら…

本来、偽装結婚というアイデアは避けたいと考えていましたが、実際に彼を知り、恋に落ちてしまい、今では「さようならは嫌だ」と思っています。
これは一部から見れば自己中心的な考えとも言えるかもしれません。
しかし、それでも私の心には何の計算もなく、ただ「あなたの心を掴みたい」という、純粋で誠実な気持ちだけが存在しています。

寒さに負けないような
ぬくもりで貴方のことを
温めてあげられる
自信のある恋ばかりじゃないけれど
私のこの眼に嘘がないこと
解って欲しい
きっと これは恋の始まり

サビの部分では、自分の気持ちをはっきりと「恋の始まり」と歌っています。
寒い季節において、一番身近にいることで「あなたを温めてあげられる」というのは、幸せな関係とは言い切れないかもしれません。
しかし、これが「自己確信のある愛」ではなかった主人公にとっては、おそらく最も愛に溢れた行為なのかもしれません。

この「寒さ」には、体感だけでなく、寂しさや不安といった内面の脆さも含まれていると思われます。
つまり、彼の心が冷たく感じられる瞬間でも、彼の支えとなり、安心感を提供したいという、純粋な願いが込められているのかもしれません。
関係が偽装であっても、自分の中で育った愛には嘘はないため、受け入れてもらえなくても、その一点だけは認めてほしいという、誠実な言葉が心に響きます。

あいみょんは、上部が丸く、下部が尖っているハートの形に注目し、「実際は歪な関係を表すシンボルかもしれない」と述べています。
偽装結婚であろうと、愛し合っていようと、その関係を解剖すれば、言えない気持ちや自己偽装が含まれていたり、どこかに少しばかりの歪みがあることでしょう。
だからこそ、恋愛は難しく、その歪みがあるからこそ、相手をますます愛おしいと感じるのかもしれません。

ただひたすら彼を思い続ける

伝えれば済むと分かってること
「遠くに行かないでよ」
って少し、胸が言いたい
寝つけない夜に 暴れ出す鼓動
私の中溢れ出す愛情で
締め付けたい

主人公は自身の感情と現実のギャップに苦しんでおり、実際には感情を伝えることで解決できることを理解しています。
「遠くに行かないでほしい」という言葉は、傷ついた心から言葉になる寸前です。
夜中に眠れないのは、彼を思いながら鼓動が激しくなるからです。
もし可能なら、「愛情で抱きしめてしまいたい」という独占欲も感じているのです。

ずっと笑っているのも
起きてすぐ描くアイラインも
ただ貴方に、貴方に認めて欲しいから

主人公は彼の前ではいつも笑顔を心がけ、朝早くにきちんとメイクをしているようです。
これらの行動は、彼に「私を認めてほしい」という思いが原動力です。
単に結婚だけではなく、相手にも自分に惹かれてもらいたいという願望から、彼に対して熱心な努力を見せています。
その健気な姿勢が、主人公の愛情深さを浮き彫りにしています。

誰にも負けないような
ぬくもりで貴方のことを
抱きしめてあげられる
自慢できるほどの恋はしたことがないけど
私は貴方を

この愛情は確信を持って「誰にも負けない」と、主人公は信じ始めています。
「自慢できるほどの恋は経験したことがない」ということから、これが素晴らしい恋と言えるのかは不明です。
自信が足りないのか、「私は貴方を」の後に続く直接的な言葉をまだ口にできないでいます。
しかし、こうした状況からは、主人公の不器用さと片思いのワクワク感が表れているように思えますね。

たまに怒らせたりして
優柔不断に泣いて
貴方を困らせる天才だね
でも、ふたり結ばれてから
始まる恋もあるよ?
だから 今日も 貴方を想ってる

彼を時折怒らせたり、優柔不断で泣いてしまったりすることに気づくと、自分が彼を不安にさせてしまっていることに気づきます。
それでも、「結ばれてから始まる恋もあるよ?」と彼に言葉をかけています。
本来の進行とは逆ですが、すでに結婚している二人がここから愛を育むことは全く奇妙ではありません。
最終的な結末は彼にかかっています。
その日が訪れるまで、主人公はただひたすら彼を思い続けることを決意しています。
主人公の純粋な愛情が垣間見えます。

まとめ

『ハート』はその歌詞とあいみょんの凛とした歌声が、ドラマのストーリーと繋がりながら、多くのファンに愛されるラブソングです。
どんな種類の恋愛でも、言いたいことを言えずに悩む瞬間は誰にでもあるでしょう。

それでも、不器用ながらも純粋に人を愛する心の美しさがこの曲から感じられることでしょう。
恋愛の困難な瞬間には、ハートの歪んだ形を思い出すことで、前向きな気持ちを取り戻す手助けとなるかもしれませんね。