【ハルノヒ/あいみょん】歌詞の意味を考察、解釈する。

あいみょんの7番目のシングルである「ハルノヒ」は、映画「クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」の主題歌として使用されました。
幼少期からしんちゃんの熱烈なファンであると公言しているあいみょんは、「ハルノヒ」の歌詞にどのような思いを込めたのでしょうか?
ここでは「ハルノヒ」の歌詞の意味を解析してみましょう。

野原一家の始まりの歌

あいみょんの第7シングル「ハルノヒ」は、2019年に公開された映画「クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~」の主題歌として採用されました。
この映画のテーマは「家族」で、物語はしんちゃんの両親である「野原ひろし」と「野原みさえ」が長らく忘れていた新婚旅行をオーストラリアで楽しむ姿を描いています。

「ハルノヒ」は、この映画のテーマに合わせて制作され、あいみょん自身がインタビューで語ったところによれば、その歌詞は「野原一家の始まりの歌」をテーマにしています。
このシングルには通常版の他に、「クレヨンしんちゃん盤」と呼ばれる特別なジャケット仕様が用意され、クレヨンしんちゃんファンに向けたコレクターズアイテムとして展開されました。

面白いことに、あいみょん自身は幼少期からしんちゃんの熱烈なファンであることを公言しており、そのファンとしての視点から「ハルノヒ」の歌詞には特別な知識と愛情が込められていると言えます。
この曲を通じて野原一家をイメージしながら、「ハルノヒ」の歌詞の深層を解釈してみましょう。

家族としての決意

北千住駅のプラットホーム
銀色の改札

注目すべきは、歌の冒頭で言及される「北千住駅」です。
あいみょんはリリース当時のインタビューで、「『ハルノヒ』はしんちゃんの原作に基づいて制作された曲で、特にひろしの視点から制作しました」と述べています。
実は、原作においてひろしがみさえにプロポーズした場所は、まさに「北千住駅のプラットホーム」でした。
この情報を聞くと、ひろしとみさえが駅のベンチに座っている場面が、聴衆の頭に浮かび上がることでしょう。

思い出話と 想い出ふかし
腰掛けたベンチで
僕らは何も見えない
未来を誓い合った

次の歌詞において、単語「思い出」と「想い出」が登場します。
これらの言葉の微妙な違いについて考えることは難しいかもしれませんが、一般的に「思い出」は頭の中にある記憶や思考を指し、「想い出」は感情や思いが込められた記憶を示す言葉とされています。
つまり、この曲ではひろしがみさえとの過去の「思い出」を振り返りながら、ひろしのみさえへの「想い」を胸に秘めていた瞬間を描写している可能性があります。
次の歌詞、「僕らは何も見えない未来を誓い合った」からも、ひろしがみさえにプロポーズし、みさえがその気持ちを受け入れた瞬間が想像されます。

寒さにこらえた木々と猫が
まるで僕らのことで
蕾を咲かせようと実を揺らしてる
素敵に笑っている
焦らないでいい
いつか花束になっておくれよ

私たちは若く、まだ未熟な存在であり、未来には何が起こるか分かりません。
おそらく、困難や試練に立ち向かうこともあるでしょう。
花が咲くまでには時間がかかります。
しかし、いつかは多彩な花々で彩られた花束になる日が訪れるでしょう。

それまで待っていてね
これからの展開をふたりで
飽きるまで過ごしてみるからね
最低限の愛を伝えながら

同じように、2人で十分に時間を共にし、幸せな家庭を築いていくつもりです。
歌詞の最初からサビ部分までで、ひろしとみさえが「家族としての決意」を感じさせる表現が含まれているように思います。

ひろしにとっての「帰る場所」

「ひろしの視点からの歌」として考えると、『ハルノヒ』のサビではひろしの未来への感情が表現されていると想像できます。

どんな未来が
こちらを覗いてるかな
君の強さと僕の弱さをわけ合えば
どんな凄いことが起きるかな?
ほら もうこんなにも幸せ

ひろしにとって、みさえは頼りにできる強い存在であり、自分は弱さも感じているようです。
ただし、どんな困難が待ち受けているとしても、2人で過ごす未来に期待しており、それが幸福であると信じています。

いつかはひとり いつかはふたり
大切を増やしていこう

ひろしとみさえにとって「大切」なものとは何でしょうか。
「ひとり」「ふたり」と数えていることから、おそらく新しい家族のことでしょう。
つまり子どもであり、未来でいう「しんちゃん」と「ひまわり」ですね。
続く2番では、改めてひろしからみさえへの強い気持ちが描かれているように思います。

北千住駅をフワっと歩く
藍色のスカート
いつになく遠く遠くに見える
加速する足音

優しさに甘えすぎて
怯えすぎた男の背中に
掌を添えてくれるのはもう
前を歩く君じゃなきゃダメだから

「藍色のスカート」を身に纏ったみさえが、ひろしに向かって駆け寄っている場面でしょうか。
みさえの姿に触発され、ひろしは「君じゃないとだめだ」という気持ちを抱いているようです。

どうか未来が
こちらに手を振ってほしい
日々の辛さと僕の体が
だらしなく帰る場所を探し続けている
ほら もうこんなにも夕焼け
いつかの灯り思い出すとき
大切に気づくのでしょう

未来は不透明で、先の出来事が予測できればいいと願うこともあるでしょう。
しかし、「帰る場所」があれば未来への挑戦ができます。
ひろしにとっての「帰る場所」はみさえであり、野原一家である可能性が高いかもしれません。

小さく揺れる影を踏む幸せ

住み慣れた駅のプラットホーム
水色に挨拶
「お帰りなさい」と
小さく揺れる影を踏む幸せ

『ハルノヒ』の歌詞は、「北千住駅」から始まり、最終パートでは「住み慣れた駅」という表現に変わります。
しんちゃんの関連性から連想する「住み慣れた駅」として、野原一家が住む「春日部駅」が考えられます。
特に「水色」は、春日部駅の屋根の色を指している可能性があります。
この最終パートは、数年後の未来を描いており、ひろしのプロポーズの瞬間から見た光景かもしれません。
春日部駅を通り抜け、家に帰るひろしに対して、誰かが「お帰りなさい」と声をかける場面が描かれています。
おそらく、それはみさえ、しんちゃん、ひまわりだったのかもしれません。
最後の「小さく揺れる影を踏む幸せ」から、ひろしが「家族」という大切なものを手に入れ、幸福感を感じていることが伝わってきます。

まとめ

「ハルノヒ」はしんちゃんの映画の主題歌であり、野原一家の始まりを描いた楽曲です。
興味深いことに、この曲のタイトルは一見春に関連しそうですが、実際には「春日部」という野原一家の住む場所から着想を得たものであると、あいみょん自身が語っています。
そのため、「春」という言葉は歌詞には含まれていませんが、歌詞の内容からは新たな未来に対する期待や希望、卒業や進級、就職といった「春」に関連するテーマとリンクしているようにも感じられます。