【歌詞考察】へび/ヨルシカの意味を徹底解説|「巫山」「滄海」「知への欲求」が示すもの

※この記事は歌詞全文の転載はせず、作品情報とモチーフ(典拠)をもとに“読み解き”を行います。


この記事でわかること

  • ヨルシカ「へび」が何を題材にしている曲なのか(アニメ起用・典拠)
  • 歌詞に出てくる「巫山」「滄海」が指す世界観
  • タイトル「へび」が象徴する“愛”と“知”の二重構造
  • 何度聴いても刺さる理由(感情の核)

「へび」はどんな曲?(基本情報)

ヨルシカ「へび」は2025年1月17日にデジタルシングルとして発表され、TVアニメ『チ。-地球の運動について-』のエンディングテーマにも採用された楽曲です。
そしてこの曲の大きな特徴として、**唐代の詩人・元稹(げんしん)の詩「離思」**の一節がモチーフになっていることが明言されています。

さらに(後々の理解に効いてくる話として)ヨルシカ公式発表のデジタルアルバム『二人称』(2026年3月4日配信)にも「へび」が収録予定として掲載されています。


歌詞の鍵は「巫山」と「滄海」|典拠は元稹「離思」

「離思」由来のフレーズが、曲の“恋愛観”を決めている

Skream! の記事では、「へび」は元稹『離思』の一節をモチーフにしつつ、春に目覚めて外に這い出し“世界を知る”=知への欲求を描いた曲だと紹介されています。

ここで効いてくるのが「離思」側の含意です。ざっくり言うと、あの詩が言っているのは——
**「一度“本物”を知ってしまったら、それ以外では満たされない」**という、一途さ(あるいは執着)の宣言。

だから「へび」の歌詞世界は、ただの失恋や片想いよりもさらに強い、
**“価値観が固定される愛”**として立ち上がってきます。

「巫山」の意味を知ると、曲の温度が変わる

「巫山」は単なる地名・固有名詞ではなく、古典由来の含みを持つ言葉です。
たとえば「巫山の雲雨」という言い回しは、故事(宋玉『高唐賦』)に基づき、男女が夢の中で結ばれること/情を交わすことを意味します。

つまり「へび」における「巫山」は、景色のワードであると同時に、
**“夢・記憶・官能・忘れられない結びつき”**のスイッチになっている。


タイトル「へび」の意味|“愛”と“知”をつなぐ象徴

一般に「へび」は、文化圏によって真逆の象徴になります。

  • 誘惑/禁忌(触れてはいけない知)
  • 再生/変化(脱皮)
  • 知恵(真理へ近づくもの)

そして「へび」はこの曲の中で、かなりはっきりと**“知への欲求”**に接続されています。Skream! でも、蛇が春に目覚めて外へ出て“世界を知る”イメージが紹介されています。

ここがポイントで、「離思」由来の“あなた以外はもう違う”という一途さと、
“世界を知りたい”という衝動が、同じ曲の中で同居するんです。

つまりこの曲は、
「知ることで、もう戻れない」
「愛することで、他を選べない」
という“不可逆”を、蛇のイメージに重ねているように聴こえます。


「へび」を物語として読む|歌詞が描くのは“視線の固定”かもしれない

「へび」が切ないのは、感情が揺れているからというより、むしろ逆で、
**感情が揺れない(揺らげない)**からです。

元稹「離思」的な感覚では、いったん“滄海”を知った人は、他の水を水として見られない。
いったん“巫山の雲”を知った人は、他の雲を雲として扱えない。

この論理がそのまま恋愛に移植されると、どうなるか。

  • 新しい景色を見ても、結局そこに“あなた”を重ねてしまう
  • 忘れようとするほど、輪郭が濃くなる
  • 世界が広がるほど、むしろ選択肢が消える(=あなた以外が無意味化する)

…みたいな、“恋の前進”ではなく恋による世界の再定義が起きる。


アニメ『チ。』との親和性|「知りたい」は美しいだけじゃない

「へび」がアニメのEDに採用されている事実も、読みを補強します。

『チ。』は(ここではネタバレを避けて言うなら)
“知ること”に人生や立場が賭かるような世界が描かれる作品です。

だから「へび」の「知への欲求」は、爽やかな好奇心ではなく、もっと危うい。

  • 知りたいから、這い出してしまう
  • 進みたいから、戻れなくなる
  • “禁忌”とわかっていても、目を逸らせない

そして、その不可逆性が「離思」由来の“愛の不可逆”とも噛み合う。
この二重構造が、「へび」をただの恋歌にしない強度になっています。


MV・映像面のヒント(補助線)

リアルサウンドの記事では、映像作家のコメントとして「歌詞中の巫山の意味を知ったときに、蛇のイメージと結びつき、二人の男女の画が浮かんだ」旨が紹介されています。
映像側も“巫山=ただの地名じゃない”前提で設計されている、と見てよさそうです。


よくある疑問(Q&A)

Q1. 「へび」って結局、何の比喩?

一言で寄せるなら、「愛と知の不可逆」
知ってしまった/愛してしまった、その瞬間から世界の見え方が戻らない——その象徴としての蛇、です(典拠と紹介内容からの読み)。

Q2. 「巫山」はどうして重要?

「巫山の雲雨」などの故事成語が示す通り、巫山は夢・契り・情に接続する言葉です。
だから“美しい景色”というより、記憶に棲む関係性の合図になっている可能性が高いです。

Q3. 失恋の歌? 片想いの歌?

どちらにも寄りますが、中心はそれ以上に、
「他のものが入ってこないほどの固定」(一途さ/執着/信仰に近い感覚)にある曲として響きやすいと思います。


まとめ

ヨルシカ「へび」は、元稹「離思」の“あなた以外はもう違う”という一途さを核に、蛇が春に目覚めて世界を知るように、知への欲求が人を前に押し出し、同時に戻れなくする不可逆性を描いた曲——そう読むと、歌詞の「巫山」「滄海」が一気に“刺さる言葉”に変わります。