ヨルシカの楽曲「へび」は、一見すると抽象的で癖のある比喩が連続するため、初めて聴いたときは「どういう意味の曲なんだろう?」と戸惑う人も多い作品です。しかし、その比喩の裏側には、ヨルシカらしい“人間の弱さ”や“抜け出せない感情”が丁寧に描かれており、歌詞を読み込むほど物語の輪郭が浮かび上がってきます。
この記事では、タイトルの意図から歌詞全体のテーマ、前半・後半の細かな意味まで、徹底的に考察していきます。
ヨルシカ「へび」とはどんな曲?作品背景と全体テーマの概要
「へび」は、ヨルシカ特有の“葛藤を抱えた心情”を比喩で表現した楽曲で、激しさと静けさが混じり合う独特の世界観が特徴です。
へびという存在は、古くから“誘惑”“執着”“ループ”など多くの象徴性を持っており、ヨルシカはこの象徴を用いて「抜け出したいのに抜け出せない感情」を描き出しています。
作品全体のテーマとしては、
- 罪悪感や自己嫌悪に絡みつかれる感覚
- 過去の後悔や執着から逃れられない心の状態
- 息苦しさの中で自分をコントロールできないもどかしさ
といった“感情の閉塞”が軸にあります。
ヨルシカ作品は物語性や抽象性の高い歌詞が多いですが、「へび」もその系譜にある曲であり、聴き手の解釈次第で姿を変える“捉えどころのない作品”と言えるでしょう。
タイトル「へび」が象徴するものは?比喩表現から読み解く深層心理
タイトルの「へび」は、単純な動物の描写ではなく、登場人物の“感情そのもの”を象徴しています。蛇はよく、
- 体に巻き付く → 逃げられない束縛
- 脱皮する → 再生や変化の象徴
- うねる動き → 不安定で制御しにくい感情
といった象徴を持つ存在。
曲中の比喩では、蛇は主人公の内側から湧き出て、本人を締めつけ、苦しめ、動けなくしてしまう“負の感情”として描かれています。
特にヨルシカは“心のノイズ”“後悔”といったテーマを扱うことが多いため、「へび」はその延長線上にあるモチーフとして用いられていると考えられます。
また、蛇はキリスト教文化では誘惑の象徴でもあるため、「してはいけないと分かっているのに、つい繰り返してしまう」ような心理も示唆していると読み解けます。
歌詞前半の意味考察|自己嫌悪・執着・依存が示す“抜け出せない感情”
歌詞前半では、主人公の内側にある“もやもやした感情”が、まるで蛇のようにうねりながら存在感を増していく様子が描かれています。
これは、自分でも制御できないほど強い感情──例えば、依存、嫉妬、後悔、自己嫌悪などが徐々に膨らんでいくイメージです。
特に、前半では
- 「自分がいかに弱い存在か」という自覚
- 逃れたいのに逃れられない矛盾
- 感情が絡みつき、身動きが取れなくなる苦しさ
が強調されています。
ヨルシカの歌詞には、精神的な“閉塞”を象徴する描写が多くありますが、「へび」ではそれがより直接的に比喩化され、聴き手にも強い感情の圧力が伝わる構成になっています。
歌詞後半の意味考察|繰り返しの比喩と“救いの不在”が示す物語性
歌詞後半では、主人公が感情の渦から抜け出そうとするものの、結局は同じループを繰り返してしまう様子が描かれています。
蛇がとぐろを巻くように、感情は何度も主人公の心を締め付け、逃げ道のない状態を象徴しているようにも読めます。
後半で印象的なのは、“救いや希望の気配が薄い”点です。
これは、ヨルシカが得意とする“結論を提示しない物語性”とも言え、主人公は出口の見えない迷路の中をさまよい続けているように感じられます。
また、比喩表現が増えることで抽象度が上がり、具体的な情景よりも“感覚”が強調される仕組みになっています。これにより、聴き手は主人公の心の中にいるような閉塞感を、より直接的に体験することができます。
ヨルシカ作品全体とのつながり|喪失、後悔、逃避という普遍テーマ
「へび」に描かれた感情構造は、ヨルシカの過去作品とも深くつながっています。
特に共通するのは、
- 大切なものを失った喪失感
- 過去を引きずってしまう弱さ
- 後悔を飲み込みきれない心
- 苦しみから逃げ出したいのに、逃げられない矛盾
といった要素です。
ヨルシカは、感情そのものを抽象的に切り取る手法が多いため、「へび」はその象徴的な例と言えるでしょう。
具体的な物語が存在しないようでいて、心の内側をそのまま取り出したような“リアルな痛み”が存在しています。
また、比喩を多用することで、聴き手が自分自身の感情を重ねやすい構造になっている点も、他の曲との共通点です。
「へび」に込められたメッセージまとめ|聴き手へ投げかける問いとは?
「へび」は、単純な感情の表現ではなく、“人はなぜ負のループに陥るのか?”という普遍的な問いを投げかけてくる楽曲です。
曲が明確な答えを提示していないのは、聴き手それぞれにとっての「へび」が違うからでしょう。
ある人にとっては後悔、ある人にとっては依存、別の人にとっては自己嫌悪。
誰しもが抱える“抜け出したい感情”の象徴として、「へび」は存在しています。
最後まで“救い”が提示されない構成は、現実の感情の複雑さを描いているとも言えます。
だからこそ、この曲は聴き手の心に強く残り、何度も聴くたびに新しい解釈が生まれるのです。


