【夜行/ヨルシカ】歌詞の意味を考察、解釈する。

ヨルシカは小説と音楽の融合による独特な世界観で、特に若い世代から支持を受けています。
彼らの楽曲『夜行』も物語性があり、聴く人々に深い印象を与えています。
歌詞には切ないストーリーが込められており、その内容に迫ってみましょう。

『泣きたい私は猫をかぶる』の挿入歌

この曲は、ヨルシカのデビューアルバムである『盗作』にも含まれています。
アルバムへの収録より前に、YouTubeにてミュージックビデオが公開されています。
そのMVには、少年と少女の姿が描かれており、歌詞の視点が少年のものであることが明らかです。
典型的なヨルシカの作風が見受けられる物語性豊かなストーリーが、MV内で繰り広げられており、ぜひ一度ご覧になってみることをおすすめします!


この楽曲は、アニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』の挿入歌として使用されています。
中学生特有の繊細な感情と、その中で芽生える恋物語が描かれており、心に深く響く作品です。
この物語は、大人になるにつれて遠ざかってしまった感覚を思い出させてくれるかもしれません。
映画では、他にもヨルシカの楽曲である『花に亡霊』や『嘘月』などが主題歌として使用されており、その作品全体がヨルシカの音楽と調和しています。
ストーリーと音楽が見事に調和した作品なので、ぜひお見逃しなく。

子供たちにはまだ難しい

ねぇ、このまま夜が来たら、僕らどうなるんだろうね
列車にでも乗って行くかい。僕は何処でもいいかな

歌の始まりは、しっとりとした静かなメロディで幕を開けます。
歌詞は、主人公の少年が誰かに対して話しかけているような情景が描かれています。
その相手は、おそらくMVで示されている少女のことでしょう。
夜の日没直前まで、ふたりは一緒に過ごしたようで、少年はどこかへ行く提案をしているようです。
MVには、この瞬間の主人公がまだ子供として描かれている場面が映し出されています。
子供たちは通常、夕暮れになると遊びを終えて各自の家に帰るものです。
だからこそ、夜に外出しないことは少年にとっては初めての経験かもしれません。
この先の出来事はまだはっきりとは想像できていないようですが、それでも少年は、おそらく夜行列車に乗って一緒にどこかへ行こうと提案しています。
夜行列車は、暗闇の中を走り抜けるイメージがあり、「死」というテーマとも関連づけられるかもしれません。
この曲の中で描かれる「死」の意味については、後の歌詞から解明されることでしょう。
明らかに、少年にとってその特別な人と過ごす時間は心地よく、ずっと一緒にいたいという気持ちが伝わってきます。
彼にとって、その人と共にであればどこへでも行く覚悟があるようです。


君はまだわからないだろうけど、空も言葉で出来てるんだ
そっか、隣町なら着いて行くよ

この歌詞は、主人公ではなく少女の視点から描かれている可能性があります。
主人公と少女が見上げる空には、星が点滅し始めていたことでしょう。
「空」や「星」は、人間が名前をつけたものですが、その名前が与えられることで初めてその存在が表現されるような側面もあります。
このアイデアは、さまざまな対象に名前がつけられることによって、その対象の本質が制約されることを示唆しています。
少女は、これが現在の主人公にはまだ理解しづらい、やや難解な概念であると感じているようです。
物語では、2人は話し合った結果、隣の町まで行くことを決意します。
しかし、子供たちにとって遠くに行くといっても、隣の町ほどしか行くことはできません。
また、列車に乗ることや遠くへ旅立つことも、子供たちにはまだ難しいことのようです。
その限界を感じさせます。

過去の追憶から抜け出せない

はらはら、はらはら、はらり
晴るる原 君が詠む歌や 一輪草
他には何にもいらないから

サビの部分では、心地よいメロディと調和した言葉が織り交ぜられています。
少女が歌う歌が、まるで花びらが優しく主人公に舞い降りる様子を想起させます。
その歌詞は、一輪草の花の意味である「追憶」を連想させます。
このことから、少女が既にこの世にはいないのかもしれないという考えが浮かび上がります。
冒頭で触れた「死」というテーマは、少女の死を指していたのです。
主人公は、少女が紡ぎ出す言葉を思い出し、自分にとって大切なのは彼女や彼女の言葉だけで十分だと感じているようです。


波立つ夏原、涙尽きぬまま泣くや日暮は夕、夕、夕
夏が終わって往くんだね
そうなんだね

夏は、春に芽吹いた新緑の色が一層深まり、生命力にあふれた季節です。
その草木の緑は風に揺れ、海のような波模様を作り出しています。
主人公はこの景色を見つめながら、少女の思い出に涙を流しているように思われます。
太陽が沈む頃、彼は日暮れの訪れを感じているようです。
夏の終わりの夕暮れは、昼の暑さが残りつつも、秋の気配を運んでくる風を感じる瞬間です。
風に吹かれながら、主人公は夏の終焉を考えており、その季節の変化と少女の記憶が交錯しているようです。
主人公は少女と共に過ごしたいと切望していますが、もはやその願いは叶わないのです。
季節が巡っても、主人公の心は少女への思いに囚われています。
彼の胸には哀愁が漂い、過去の追憶から抜け出せない様子が感じられます。

主人公は前進しようとしている

ねぇ、いつか大人になったら、僕らどう成るんだろうね
何かしたいことはあるのかい。僕はそれが見たいかな

2番では、未来に向けての展望についての言葉が歌われています。
自分たちが成長して大人になる過程で、どのようなことを達成したいのか、どんな目標を持っているのかを考えているでしょう。
しかし、この考えにおいても、主人公は自分の未来よりも少女の未来を思い描いていることがうかがえます。
少女が成長して大人になった場合、彼女が何に夢中になり、どのような大人に成長するのかを想像しているのです。
しかしながら、少女が亡くなった今、その未来への願いは叶わないという現実に直面しています。


君は忘れてしまうだろうけど思い出だけが本当なんだ
そっか、道の先なら着いて行くよ

過去の思い出は、時が経つにつれて薄れていくことが多いものです。
しかしながら、主人公と少女との思い出は、確かに彼らが共に過ごした時間として主人公の心に刻まれています。
それらの思い出は、忘れてしまうことがあるかもしれませんが、経験した時間自体は消えることはありません。
主人公と少女が一緒に過ごしたことは、事実として存在していたのです。
しかしながら、未来の予測や想像は、実際に起きた出来事ではなく、主人公の思い描いたものです。
主人公が少女の未来を「見たい」と言った瞬間も、実際には主人公が思い描いた嘘である可能性が高いです。
この事実を主人公は自覚し、それに向き合っているように感じられます。
そのような葛藤の中で、過去の思い出に浸りながら主人公は前進しようとしているのです。

夏の終わりを実感している

さらさら、さらさら、さらさら、さらさら
花風揺られや、一輪草
言葉は何にもいらないから

2番のサビの歌詞は、風に揺れる草木やその音が自然界で広がる様子を思わせます。
この自然の風景の中で、主人公は少女の姿を見つけていることがうかがえます。
少女と過ごした思い出は、周囲の自然の中にも感じられるのです。
それは、主人公にとって少女との瞬間がどれほど重要であったかを示しています。
主人公にとって少女は、どのような存在だったのでしょうか。
「空」という名前を付けるように、言葉で表現することは可能ですが、それだけでは少女の実在を捉えきれないと思われます。
主人公は、言葉によって形を定義することよりも、少女とのつながりを感じることを望んでいるようです。


君立つ夏原、髪は靡くまま、泣くや雨催い夕、夕、夕
夏が終わって往くんだね
そうなんだね

主人公は、少女との過ごした思い出に思いを馳せ、涙を流しています。
その感情は、夕立の雨が雨樋を通って流れていく様子に例えられるかもしれません。
少女の思い出を追想する間、主人公は夏の終わりを実感しているようです。
夏が去るように、少女の不在を感じながらそのことを重ね合わせているでしょう。

大切な人の死を受け入れる

そっか、大人になったんだね

少女が亡くなった出来事は、遥か昔のことだったようです。
それ以降、主人公は夏が訪れるたびに繰り返し少女のことを思い出してきたはずです。
しかしながら、時間の経過と共に、少女の存在は主人公の中で徐々に過去の思い出へと変わっていきました。
思い出は過去に属し、そこには二度と戻ることはできないという事実があります。
そして少女が戻ってくることも叶わないのです。
主人公は、この事実を夏の終わりとともに認識するようになりました。
過去に執着して泣いていた主人公は、それを超える決断をすることで、時の流れと大人としての成長を受け入れていくのです。


はらはら、はらはら、はらり
晴るる原 君が詠む歌や 一輪草
他には何にもいらないから

波立つ夏原、涙尽きぬまま泣くや日暮は夕、夕、夕
夏が終わって往くんだね
僕はここに残るんだね

ずっと向こうへ往くんだね
そうなんだね

最後のサビの歌詞は、少女が主人公の中で忘れられない尊い存在であったことを示唆しています。
主人公の心には、少女との思い出が深く刻まれています。
これまでの主人公は、その思い出を追憶し、涙を流すことしかしていませんでした。
涙を流そうとしても、少女は永遠に遠くに去ってしまった現実は変わりません。
そして主人公は、夏が終わると同時に自分だけが残されたことも受け入れています。
これは大切な人の死を受け入れるという過程であり、また大人になる過程でもあるでしょう。
以前は、亡くなった少女への追憶に囚われていた主人公も、ついに前進する勇気を見出しました。
主人公はこれから一人で生きていかなければならないことを理解し、受け入れているように感じられます。

まとめ

今回、ヨルシカの楽曲『夜行』の歌詞を深く解釈してみました。
その中に込められた物語性と切なさが感じられ、成長と大人になる過程についての意味を考えさせられます。
歌詞とメロディの相乗効果が素晴らしく、一度聴いてみる価値があるでしょう。
この曲は特に夏の風景を思い浮かべることができますが、ヨルシカには他にも夏の季節を感じさせる楽曲が存在します。
例えば『ただ君に晴れ』もその1つです。
ぜひ一度聴いてみることをお勧めします。
また、『夜行』はアルバム『盗作』に収録されており、その他にも多くの素晴らしい曲が収められています。
中でも『思想犯』は『盗作』の主人公の物語を描いた楽曲です。
ヨルシカは独自のストーリー性や意味深さを持った歌詞を多く制作しており、YouTubeで視聴できるので、ぜひその魅力に浸ってみてください。