ヨルシカの楽曲「ルバート」は、2024年に発表されたアルバム『幻燈』に収録されており、その独特な世界観と繊細な歌詞で多くのファンを魅了しました。しかし、一度聴いただけでは理解しきれない複雑な感情や比喩が詰まっており、歌詞の解釈には奥深さがあります。
この記事では、「ヨルシカ ルバート 歌詞 意味」というテーマで、楽曲タイトルに込められた意味や、歌詞に描かれる心情を徹底的に考察していきます。
1. 「ルバート」というタイトルに込められた意味──音楽用語と「盗まれた」の二重性
「ルバート(rubato)」は、クラシック音楽やジャズなどで用いられる音楽用語で、「テンポを自由に揺らして演奏する」という意味があります。通常、音楽は拍子に合わせて正確にリズムを刻みますが、ルバートでは感情を優先し、あえてリズムを崩して演奏します。この自由さは、曲全体のテーマや歌詞の表現にも深く関わっています。
一方で、「rubato」はイタリア語で「盗まれた」という意味も持ちます。ここに、ヨルシカ特有の言葉遊びが隠されています。「自由に」「盗まれた」という二重の意味を考えると、この楽曲は時間や感情を奪われた人間の揺らぎを表現しているといえるでしょう。
主人公は過去の誰かを忘れられず、心を奪われたまま時間が止まっている。ルバート=リズムを失った演奏のように、彼女の人生も定まらないリズムで進んでいるのです。
2. 「忘れようとしている」と「愛している」の葛藤──主人公の内面構造
歌詞の中で、印象的な一節があります。
私忘れようとしているわ
愛している
一見、矛盾した二つの言葉。「忘れようとする」意思と「愛している」という感情が同時に存在しています。これは、忘れたいのに忘れられないという強烈な葛藤を象徴しています。
ここで重要なのは、主人公が「過去を消し去りたい理由」です。多くの考察では、喪失や別れ、あるいは自己嫌悪が背景にあるとされています。忘れようとするほど、その記憶が鮮明に蘇る。そして、忘れられない記憶は、愛している証でもあるのです。
この「二重構造」は、ヨルシカの楽曲によく見られるテーマで、人間の弱さと美しさを同時に描く要素となっています。
3. 「楽しい」という言葉の裏にある痛み──繰り返される自己暗示と絶望
歌詞の中では、「楽しい!」という言葉が繰り返し登場します。しかし、楽曲のトーンやメロディを聴けば、それが本心からの楽しさではないことはすぐにわかります。むしろ、それは自分に言い聞かせるための自己暗示のように響きます。
「楽しい」という単語は、時に虚しさや絶望感を強調する効果を持ちます。なぜなら、楽しさをわざわざ口にする時、人は本当に楽しいのではなく、そう思い込みたい状況にあることが多いからです。つまり、ここでの「楽しい!」は、喪失感や孤独を覆い隠すための仮面だと解釈できます。
ヨルシカの楽曲には、こうした言葉の裏にある感情の落差が巧みに仕込まれており、聴き手に深い余韻を残します。
4. 比喩としてのレコード、ダカーポ、お葬式など──象徴として歌詞を読む
歌詞には、音楽用語や象徴的なモチーフが散りばめられています。
- レコード:過去を繰り返し再生する象徴。主人公は思い出のレコードを何度もかけ直すように、忘れられない記憶に囚われている。
- ダカーポ(D.C.):楽譜で「最初に戻る」という意味。人生や恋の終わりから、再び始まりに戻ることはできないという皮肉。
- お葬式:何かの「死」を暗示。恋愛の終わり、あるいは自分自身の一部の死。
これらの比喩は、喪失と再生、そして終わらないループを表現していると考えられます。まるで、レコードの針が溝を何度もなぞるように、主人公は過去の記憶を繰り返し再生してしまうのです。
5. 他者とのズレと自己否定──「ポップじゃない」が意味するもの
歌詞には次のような言葉があります。
メロがポップじゃない
センスを馬鹿にしてる
ここには、他者からの評価と自分の価値観とのズレが表れています。自分の作る音楽や感性を「ポップじゃない」と言われることは、同時に「自分自身を否定されること」に近い痛みを伴います。
こうしたフレーズは、アーティストとしての孤独感や、社会との距離感を示しているように思えます。つまり、この曲は単なる恋愛の歌ではなく、創作や自己表現における葛藤も描いているのです。
【まとめ】「ルバート」は喪失と自己の揺らぎを描いた楽曲
ヨルシカの「ルバート」は、単なる失恋ソングではありません。それは、時間を奪われた人間の孤独、過去に囚われる苦しさ、そして自由を求めながらも束縛される心を音楽的・詩的に表現した作品です。
タイトル「ルバート」が示す「自由なテンポ」と「盗まれた」の二重性は、心を奪われ、リズムを失った主人公を象徴しています。そして、繰り返される「楽しい!」という言葉や音楽的比喩は、表層と深層の感情を巧みに交錯させています。
✅ Key Takeaway
「ルバート」は、音楽的自由と喪失感、そしてアイデンティティの揺らぎをテーマにした楽曲。タイトルや歌詞に込められた二重の意味を知ることで、この曲の奥深さをより感じ取れるでしょう。