歌詞の背景と概要:「猫」はどんな曲?
「猫」は、人気ロックバンド DISH// が2017年に発表した楽曲で、特に 「THE FIRST TAKE」 での一発撮りパフォーマンスがYouTubeで話題を呼び、今やバンドの代表曲となりました。作詞・作曲を手がけたのは、シンガーソングライター あいみょん。彼女の独特な言葉選びと世界観が、DISH//のボーカル・北村匠海の声と融合し、聴く人の心を深く打ちます。
この曲の大きなテーマは「喪失感」です。ただし、その喪失が「恋人との別れ」なのか「死別」なのかは、あえて曖昧にされています。その曖昧さこそが、この曲が長く愛される理由のひとつです。
Aメロ・Bメロに見る主人公の感情の揺れ
歌詞は、主人公の心情を淡々とした日常の描写を通して表現しています。冒頭の
「夕焼けの下で 君を探してた」
というフレーズからは、温かさと切なさが同居した情景が浮かびます。夕焼けは「終わり」を象徴する色であり、ここでは恋の終焉や、取り戻せない時間を示唆していると解釈できます。
続くBメロでは、
「明日もウザいほど 会いたいなんて」
という一節が出てきます。この「ウザいほど」という言葉選びに、主人公の強い執着と、それを自覚してしまう自己嫌悪がにじみ出ています。好きすぎて苦しい、でもどうしようもない――その矛盾する感情が見事に描かれています。
さらに
「馬鹿馬鹿しいだろ、そうだろ」
というフレーズには、自己否定と諦めが同時に表れています。自分の気持ちに向き合いながらも、それが叶わない現実を突きつけられた苦しさが伝わります。
サビ:「猫になったんだよな君は」が意味するもの
サビで登場するフレーズ
「猫になったんだよな 君は」
が、この曲の最大のキーワードです。猫という存在には、気まぐれ・自由・束縛を嫌うといったイメージがあります。つまり、君はもう自分のもとには戻らない、追いかけても捕まらない――そういう関係性を暗示しているのです。
さらに、この表現には「死別」のニュアンスを感じる人も少なくありません。猫は、死やあの世への橋渡しを象徴することもあるため、「君がもうこの世界にいない」という解釈も可能です。一方で、恋人が突然いなくなった破局の歌と考える人もいます。
この 解釈の曖昧さ こそが、リスナーに深い余韻を残す要因になっています。
解釈論争:死別か、単なる別れか?
インターネット上では、この曲の解釈をめぐって大きな議論があります。大きく分けると、
- 死別説:「君はもう生きていない」という前提で読み解く
- 破局説:「君は別の場所で生きている」だけの解釈
死別説を支持する人は、歌詞に出てくる「君を探す」という行為を、物理的にはもう会えない人への想いと結びつけています。また、「猫」という存在が、魂や死後の世界と関連付けられることも、この説を補強しています。
一方で、破局説をとる人は、歌詞全体に生活感があり、死を示す直接的な言葉が出てこないことを根拠とします。日常に溶け込んだ悲しみを歌うこの曲は、恋人との別れを描いているだけ、と見るのです。
どちらの解釈も成り立つため、聴く人自身の体験や感情が投影される余地が残されている――それが、この曲の魅力のひとつです。
この曲が支持される理由と読者への問いかけ
「猫」はなぜ、これほど多くの人に愛されているのでしょうか? その答えは、普遍的な喪失感とリアルな言葉選びにあるといえます。
歌詞の中には「明日もウザいほど 会いたい」というような、誰もが経験したことのある、どうしようもない恋心がちりばめられています。そして「猫」という比喩によって、その気持ちはより抽象的で、誰にでも当てはまる普遍性を帯びています。
あなたは、この曲を聴いてどんな情景を思い浮かべますか?
「死別」だと感じるでしょうか、それとも「恋人との別れ」でしょうか?
それとも、もっと違う解釈をするかもしれません。
答えは、聴く人の数だけ存在します。だからこそ、この曲は多くの人の心を掴み続けているのです。
Key Takeaway
DISH//の「猫」は、あいみょんが描く喪失感を北村匠海の声で昇華させた、切なさの極みともいえる楽曲です。その歌詞は「死別」なのか「破局」なのか、明確な答えを出さないことで、聴く人の記憶や感情を呼び覚ます余白を残しています。だからこそ、私たちはこの曲を聴くたびに、自分自身のストーリーと重ねてしまうのです。