DISH//の「猫」は、ただの失恋ソングでは片づけられない不思議な余韻を残す楽曲です。
とくに「猫になったんだよな君は」というフレーズは、聴く人によって“死別”にも“離別”にも読めるからこそ、何度でも意味を考えたくなります。
本記事では、「夕焼け」「明日」「君色」といった印象的な言葉を手がかりに、主人公の感情の揺れを丁寧に読み解きます。
DISH//「猫」の歌詞がなぜこれほど多くの人の心をつかむのか――“別れのあと”に残る痛みと希望という視点から考察していきます。
DISH//「猫」とは?楽曲の背景と“今も聴かれる”理由
DISH//「猫」は、2017年8月16日発売のシングル『僕たちがやりました』に収録された楽曲で、作詞・作曲はあいみょんです。まずこの事実だけで、楽曲の“言葉の強さ”に納得できます。若さゆえの不器用さと、どうにもならない喪失感を、過剰な比喩ではなく生活語で描いているからです。
さらに2020年3月20日に「THE FIRST TAKE」で披露されたことで、楽曲の切実さが再発見されました。そこから同年4月29日に「猫 ~THE FIRST TAKE ver.~」が配信され、“昔からの名曲”が“いま刺さる曲”へと更新された流れがあります。解説記事でも、この再注目の文脈を起点に読む構成が多いです。
「夕焼けが燃えて」から始まる、喪失のワンシーン
この曲の冒頭は、感情の説明ではなく“景色”から始まります。赤く燃える夕景に街ごと飲み込まれるイメージを重ねることで、主人公の心情を直接言わずに示しているのが巧みです。悲しい、苦しい、と言わないのに、痛みだけははっきり伝わってきます。
ここで重要なのは「手放してしまった」という語感です。能動にも受動にも読めるこの表現が、別れの輪郭をわざと曖昧にします。だからこそ読者は、自分の体験(失恋・死別・離別)を重ねやすく、歌詞が“自分の物語”として機能するのです。
「明日ってウザいほど来るよな」に滲む未練と現実
このセクションの核心は、「明日が来ないでほしい」という願いと、「結局明日は来る」という現実の衝突です。主人公は大げさな絶望を語っているようで、実はものすごく日常的な地獄を描いています。派手に壊れるのではなく、いつも通り朝が来ること自体がつらい、という感覚です。
しかもそこで終わらず、夜にふと笑ってしまう。ここに“感情の不一致”があります。泣きたいのに笑う、忘れたいのに思い出す――この矛盾が、未練を単なる執着ではなく、人間らしい揺れとして成立させています。
「猫になったんだよな君は」の意味をどう読むか
タイトル回収のこの一節は、現実描写ではなく、喪失に対する主人公の“心の処理”だと読むと腑に落ちます。手の届かない存在になった「君」を、気まぐれに現れる猫という比喩に置き換えることで、完全な諦めを回避しているのです。
検索上位の解説でも、このフレーズを「死別にも失恋にも開く言葉」として扱う傾向が見られます。つまり「猫」は答えではなく、主人公が壊れないために作った“希望の形”と考えるのが自然です。
「君」は死別か失恋か?歌詞に残された余白を考察
この曲の強さは、別れの理由を確定しないことです。死別と読むなら、ポイントは「戻ってきて」ではなく“ふと現れてほしい”という祈りの語感。不可逆な別れに向ける言葉として、非常に切実です。
一方で失恋と読むなら、「忘れてやる」「全力で忘れようとする」といった自己暗示の言葉が効いてきます。相手がどこかで生きている前提だからこそ、忘却と欲望が往復する。この両義性があるから、読む人の人生段階によって「正解」が変わる歌詞になっています。
「いつかフラッと現れてくれ」に込めた希望と執着
この願いは、再会の約束ではありません。日時も場所も指定できない“偶然任せの祈り”です。だから甘い希望というより、諦めきれない心が最後に掴んだ細い糸に近い。ここに、この曲のリアリティがあります。
さらに「頼りない僕」「慰めてほしい」という自己認識が続くことで、主人公の弱さは美化されません。かっこよく立ち直る物語ではなく、未練を抱えたまま明日を生きる物語として描かれている点が、多くの共感を生んでいる理由です。
「君色に染めておくれよ」が示す、愛の記憶の残り方
このフレーズが示すのは、恋愛感情そのものより“世界の見え方”の変化です。主人公にとって「君」は、日常を意味づけるフィルターでした。だから不在になった後の毎日は、単に寂しいのではなく、色彩を失って見えるのです。
終盤で描かれる「傷を拭う」「温もりをあげる」というイメージは、見返りを求める恋ではなく、保護と受容に近い愛へと感情が変質したことを示します。未練の歌でありながら、同時に“愛の成熟”の歌として読めるのが「猫」の奥行きです。
まとめ:DISH//「猫」の歌詞が描く“別れのあと”の感情
DISH//「猫」は、別れの瞬間ではなく「別れた後」を描いた曲です。だからこそ、派手なドラマより、帰り道の速度や夜の微妙な笑いといった生活のディテールが刺さります。楽曲背景(2017年収録曲→2020年の再評価)を踏まえると、時代を超えて聴かれる理由も見えてきます。
「猫 dish 歌詞 意味」という検索でこの曲に辿り着く人の多くは、答えを一つ求めているようで、実は“自分の喪失に名前をつけたい”のだと思います。『猫』はそのための余白を、最後まで手放さない名曲です。


