Mr.Children『HANABI』歌詞の意味を徹底考察|届かぬ想いと希望のリフレイン

2008年にリリースされたMr.Childrenの代表曲「HANABI」。ドラマ『コード・ブルー』の主題歌としても知られ、発表から15年以上が経つ今なお多くの人の心を打ち続けています。その魅力の一つが、繊細かつ深い意味を持つ歌詞にあります。

本記事では、この楽曲の歌詞に込められたメッセージを丁寧に考察・解釈していきます。聴くたびに心に残るこの名曲を、より深く味わうヒントになれば幸いです。


「HANABI」というタイトルが持つ二重の意味 ― “花火”と“離日/別れ”

タイトルの「HANABI」は文字通り「花火」を意味しますが、それだけに留まりません。花火は「美しく、一瞬で消えるもの」の象徴であり、この楽曲においては「儚さ」や「届かない想い」「過ぎ去っていく時間」を象徴していると考えられます。

また、「HANABI」というカタカナ表記には、音としての響きが際立ち、抽象的な印象を与える効果もあります。一部のファンの間では、「離日(はなび)」=大切なものとの別れや終焉、または“何かから離れていく心”という解釈も存在します。

このように、タイトルからすでに多層的な意味が込められており、楽曲全体のテーマにも直結しています。


冒頭〜Aメロに描かれる〈自分〉の葛藤と時間の流れ

歌い出しの「どれくらいの値打ちがあるだろう 僕が今生きてるこの瞬間」は、自己の存在価値を問い直す非常に内省的な一節です。続く「全部が無意味だって思える ちょっと疲れてんのかな」では、日常の中でふと感じる“生きづらさ”や“虚無感”がリアルに描かれています。

このAメロは、単なる悲観ではなく、誰もが持ちうる心の揺らぎや、日常に潜む違和感にフォーカスしています。Mr.Childrenの桜井和寿氏が描く人物像は、決して特別な存在ではなく、「私たち自身」に非常に近い存在なのです。


“君”という存在の象徴性:届かない光/花火のような儚さ

サビで繰り返される“君”という存在は、恋人とも限らず、「理想の自分」や「過去の憧れ」「もう戻れない存在」など、多様な意味を持ちます。その“君”に対して「もう一回、もう一回」「僕はこの手を伸ばしてるのに」と歌う姿は、まさに“届かない想い”を象徴しています。

ここでの“君”は、見ることはできても掴めない“花火”のような存在。美しくて鮮やかだけれど、触れようとすると消えてしまう、そんな対象として描かれています。

このように“君”は、外界とのつながりを求める「自分自身の願望」や「未練」を投影する存在であり、リスナーによって自由に解釈できる余地を残しています。


〈もう一回、もう一回〉というリフレインが示すもの ― 希望と再起の願い

サビで何度も繰り返される「もう一回、もう一回」というフレーズは、単なる執着ではなく「再チャレンジしたい」「やり直したい」という前向きな意思の表れでもあります。これは“希望”の言葉でもあり、同時に“絶望”を跳ね返そうとする意志でもあります。

この言葉をリフレインすることで、聴き手に強い印象を残すだけでなく、現実の中で立ち上がろうとする“人間らしさ”を力強く描き出しています。


「滞らないように揺れて流れて透き通ってく水のような心であれたら」― 心の浄化と前向きな生き方のメッセージ

楽曲の終盤に登場するこの一節は、「心が濁ることの多い日々の中で、それでも透明なままでいたい」という願いが込められています。水のような心とは、過去に囚われず、感情に固執せず、しなやかに生きる姿勢の象徴です。

これは、「HANABI」という楽曲が単なるラブソングではなく、“人生の哲学”や“生きる上での指針”を提示していることを象徴する部分でもあります。浄化・再生・希望といった要素が凝縮された、非常に詩的で心に響くフレーズです。


おわりに:花火のように、心を一瞬で照らす“希望”の歌

「HANABI」は、その詩的で深い歌詞によって、聴く人それぞれの人生と静かに響き合う力を持っています。一瞬で消える花火のように、かけがえのない感情や記憶が一曲の中に凝縮されており、何度聴いても新たな気づきや共感を得られる名曲です。

あなたにとっての“君”は誰でしょうか? “もう一回”と願いたい瞬間はありますか? この楽曲を通して、あなた自身の物語にもそっと目を向けてみてください。