DISH//の代表曲「猫」は、シンガーソングライターあいみょんが作詞を手がけたことで話題になった楽曲です。失恋・喪失・後悔といった普遍的な感情を、“猫”という一匹の存在に重ねるように描かれており、聴く人の心に深く残ります。この記事では、「猫」の歌詞に込められた意味やメッセージについて、丁寧に考察していきます。
1. 「なぜ“猫”なのか?タイトルが語る意味
「猫」というタイトルは、楽曲全体を貫く象徴的な存在として機能しています。ここでの“猫”は、決して動物そのものを指すだけではなく、“自由で孤独”、“愛されたいけど近づきすぎるのは怖い”という、人の心のありようを投影したものだと考えられます。
- 猫は気まぐれで、誰にも縛られない生き方を象徴する動物。
- 歌詞中では「捨て猫」「猫になったんだよな君は」という言葉が使われ、猫が“いなくなった君”や“手の届かない存在”のメタファーになっている。
- 「飼い主」になれなかった後悔、「戻ってきてほしい」という願いを“猫”という存在に重ねることで、普遍的な喪失の悲しみが描かれる。
2. 冒頭~Aメロに描かれる“手放す”と“明日”の情景
歌詞の冒頭では、「夕焼けが燃えてこの街ごと 飲み込んでしまいそうな今日に」という印象的なフレーズから始まります。
- “夕焼け”=終わりの象徴であり、日常の終焉や別れの時を示唆。
- 「君を手放してしまった」という表現は、別れたことに対する自己責任と後悔が込められている。
- 続く「明日が不安だ」などの言葉からは、“君”がいないこれからの人生への不安や喪失感がリアルに描かれている。
このAメロでは、別れが“今日”の出来事として生々しく描写され、聴く者に共感を呼び起こします。
3. サビ「君がもし捨て猫だったら」に込められた願いと想い
サビはこの楽曲の感情のピークとも言える部分。「君がもし捨て猫だったら 僕は一片の迷いもなく…」という歌詞が印象的です。
- 「捨て猫」は、“誰からも愛されず、行き場を失った存在”の象徴。
- 主人公は、“君”がそんな状態なら迷わず手を差し伸べると歌うが、それができなかった後悔が滲んでいる。
- 「優しさで溢れた家に連れて帰るよ」という理想と現実のギャップが、さらに切なさを際立たせる。
この部分は、別れた“君”への強い未練と「もしやり直せるなら…」という希望が込められた、非常に感情的なセクションです。
4. 「猫になったんだよな君は」──別れ/死別/喪失の読み解き
2番の歌詞には「猫になったんだよな 君は いつかふらっと現れてくれ」という印象的なフレーズが登場します。
- “猫になった”という言葉は、姿を消した“君”がもう戻らない存在になったという諦めの表現。
- 一部では、この“君”は恋人との別れではなく、「死別」や「永遠の別れ」を暗示しているのではないかと解釈されることも。
- 「ふらっと現れてくれ」という願いは、現実には叶わないことを知りながらも、諦めきれない想いがにじみ出ている。
このフレーズにより、“猫”という存在がよりミステリアスで儚いものとして描かれ、聴き手の想像力をかき立てます。
5. 言葉遊び・比喩・繰り返し表現から読み取るあいみょんの詩技法
作詞を担当したあいみょんは、比喩や言葉の繰り返しを使い、聴く人の感情に訴えかける技法に長けています。
- 「猫」という単語をあえて直接的に使うことで、物語の核心を象徴づけている。
- 「手放してしまった」「戻ってきてほしい」など、繰り返しのフレーズが主人公の感情の揺れを強調。
- 直接的な“別れ”や“死”といった言葉は使わず、風景描写や情景描写から感情を読み取らせる手法が、文学的な深みを生んでいる。
これにより、歌詞はストレートでありながらも多義的な意味を含み、聴く人それぞれの経験と重ねることができます。
おわりに:
DISH//の「猫」は、誰しもが一度は経験する“別れ”や“後悔”を、あいみょんならではの言葉選びで丁寧に紡ぎ出した楽曲です。聴くたびに異なる表情を見せるこの楽曲は、多くの人にとって「自分の物語」として響くことでしょう。
【Key Takeaway】
「猫」という楽曲は、“猫”という存在に込めたメタファーを通じて、喪失・後悔・願望といった複雑な感情をあいみょんが見事に表現した名詞的作品である。


