【なんでもないよ、/マカロニえんぴつ】歌詞の意味を考察、解釈する。

マカロニえんぴつのアルバム『ハッピーエンドへの期待は』の中で、先行配信楽曲『なんでもないよ、』は、強力なラブソングとして話題となりました。
この曲の歌詞には、ストレートな愛の表現が込められており、その意味を詳しく考察してみましょう。

身近に感じる愛のカタチ

現在若者を中心に絶大な人気を誇るロックバンド、マカロニえんぴつが待望の1stメジャーアルバム『ハッピーエンドへの期待は』をリリースしたのは2022年1月12日のことです。

その前に、収録曲の1つである『なんでもないよ、』が11月3日に先行配信され、LINE MUSICの「ソング Top 100」デイリーランキングで6位にランクインしました。

さらに、同日に公開された柄本時生さん出演のミュージックビデオもYouTubeで急上昇し、わずか1日で15万回再生を達成しました。

マカロニえんぴつは、様々な愛の側面を描くことで知られるバンドです。

メンバー全員が音楽大学出身という高い技術を持ち合わせたバンドサウンドと、リードボーカルのはっとりさんの感性豊かな歌詞と歌声によって、愛の切なさや儚さが豊かに表現されています。

『なんでもないよ、』では、愛することの真の姿を飾らずにストレートに表現しています。

僕には何もないな 参っちまうよもう
とっておきのセリフも特別な容姿も
きみがくれたのは愛や幸せじゃない
とびっきりの普通と そこに似合う笑顔だ

彼は愛する人を喜ばせるための心のこもったセリフも言えず、自慢できるような特別な容姿も持っていません。

彼は「何も持っていない」と少し消極的な主人公のように思えますが、これは多くの人が共感できる考え方かもしれません。

彼の恋人も、このラブソングに描かれているような「愛や幸せ」といった大それたものを与えたわけではありません。

「とびっきりの普通とそこに似合う笑顔」というフレーズの通り、二人の関係には特別ではない普通の日々があり、お互いに笑い合える些細な瞬間があります。

現実の中でも、きっとそういう平凡な時間にこそ幸せを感じているのかもしれません。

この楽曲には、誰もが身近に感じる愛の形が描かれています。

次に続く歌詞に込められたメッセージも徹底的に考察していきましょう。

上手く言葉にできない気持ち

僕でよかったかい?こんな僕でよかったのかい?
なんて訊いたりしないよ、だって君がよかったんだ
そんな僕の予感なんだ
からだは関係ないほどの心の関係
言葉が邪魔になるほどの心の関係

自分自身を消極的に見てしまうと、あまりにも平凡な自分と一緒にいてくれる恋人に対して「僕でよかったのかな?こんな僕でいいのかな?」と尋ねたくなることでしょう。

しかし、主人公は意図的にその質問をせずに「だって君が良かったんだ」と歌います。

君が後悔しているかもしれないとしても、僕は君が良かったんだと主張します。

自己中心的にも聞こえるかもしれませんが、愛は実際にそういうものだと思います。

愛を返してほしいと思うのも、相手のために何かしたいと思うのも、結局は自分が持つ愛が原動力です。

だからこそ、相手の愛を確かめるのではなく、現在の幸せな時間に満足している主人公の率直な気持ちも理解できるでしょう。

そして、彼は自分がこれからもずっと「君が良かった」と言い続ける予感を抱いています。

言葉や触れ合いを超えた、心のつながりが非常に強いことが伝わってきますね。

会いたいとかね、そばに居たいとかね、守りたいとか
そんなんじゃなくて ただ僕より先に死なないでほしい
そんなんでもなくて、ああ、やめときゃよかったな
「何でもないよ」なんでもないよ、

サビでは、より率直な気持ちが歌われています。

「会いたい」「そばにいたい」「守りたい」という言葉は、数々のラブソングで使われてきました。

確かに、想いを伝える魅力的な言葉ですが、彼は「そんなことじゃなくて、ただ僕より先に死なないでほしい」と続けます。

自分だけを置き去りにされて孤独になりたくないという願いは、究極の愛の形のように感じられます。

彼は自分の気持ちを適切に伝えようと試みていますが、上手く言葉にできずに「やめときゃよかったな」と後悔しているようです。

そして、彼は彼女に対して「何でもないよ」と伝え、言いかけた言葉を取り消してしまいます。

その後、タイトルにもなっている「なんでもないよ、」というフレーズが現れます。

おそらく、「、(読点)」が付けられているのは、本当は伝えたいことがたくさんあるのに言葉にできない、主人公の複雑な感情が込められているのでしょう。

本当は伝えたい言葉がたくさんある彼の、深い愛情が垣間見えます。

愛する人がいるという幸せ

僕には何もないな、ってそんなこともないな
君の本気で怒った顔も呑気に眠る顔も
きっとこの先いちばん映していくこの目
君の大きい笑い声をきっと誰よりも
たくさんきけるのは僕のこの耳

過去の多くの思い出を振り返り、主人公は「自分には何もないな、でもそうでもないな」と気づきます。

「真剣な怒りの表情」も「のんびりと眠る顔」も「大きな笑い声」も、女性にとってはあまり覚えてほしくないものかもしれません。

しかし、それらは心を許した相手の前でしか見せないものです。

愛する彼女のそうしたさまざまな表情を見たり声を聞いたりするだけで、自分自身の存在が特別に感じられます。

自分だけが見聞きしたいというのではなく、誰よりもたくさんのことを見聞きできることを幸せに思う、現実的な考え方には、優しさがにじみ出ているように思えます。

会いたいとかね、離さないから離れないでとか
そんなんじゃなくて
そんなもんじゃなくって、ああ何が言いたかったっけ
「何でもないよ」なんでもないよ、
君といるときの僕が好きだ

最後のサビでは、主人公は言葉に詰まり、自分の考えもわからなくなっているようです。

しかし、「そんなもんじゃなくて」というフレーズから、単純な想いではないことが伝わってきます。

愛は美しい感情ばかりではなく、自分自身でも驚くような感情に気づくこともあります。

そうした気持ちを言葉で表現しようとすると、誰しもがこの主人公のように上手く言葉にできないでしょう。

そして、「何でもないよ」と口にしながらも、彼はまだ言葉を模索しているのです。

主人公はその中で一つの答えを見つけます。

それが「君と一緒にいるときの自分が好きだ」という一言に結実しています。

自分には何もないと思っていた自分自身を、好きだと断言できるというのは大きな変化です。

愛する人と過ごすことで、人として成長できたのかもしれませんし、自分自身への見方が変わったのかもしれません。

どちらにしても、誰かを深く愛することは、愛する人といる自分自身を好きになれる尊い感情であることを思い知らされます。

たとえ今愛する人がすぐそばにいなくても、誰かを深く愛することができたという事実だけで幸せを感じる、温かな心の底から湧き上がる楽曲です。

まとめ

マカロニえんぴつの最新曲『なんでもないよ、』は、手の届く幸せが特別に感じられる美しいラブソングです。

MVのコメント欄には「マカえん史上最高のラブソングだ」「聴きながら涙が止まりませんでした」という絶賛の声が寄せられており、MVを視聴することで歌詞が伝えるメッセージが心に深く響くでしょう。

ぜひ、大切な人を思い浮かべながらこの曲を聴いてみてください。