「HANABI」というタイトルの二重構造:「花火」と「離日(別れ)」の意味
Mr.Childrenの「HANABI」というタイトルには、視覚的な美しさと儚さを象徴する「花火」という意味が込められています。しかし、それだけではなく「HANABI」は「離日=日常や過去との決別」という意味合いも持っているのではないかという考察が多く見られます。
花火は夜空を彩り、一瞬で消えてしまう儚い存在。これは、人生の一瞬の輝きや、取り戻せない過去の象徴とも捉えられます。また、日常に埋もれた感情や、忘れかけていた情熱を思い出させてくれる存在でもあります。このように、「HANABI」は、視覚的なインパクトだけでなく、内面的な喪失や再生も示唆する象徴的なタイトルだといえるでしょう。
歌詞に描かれる“日常の虚無感と葛藤”:冒頭Aメロから読み解く心理
楽曲の冒頭、「どれくらいの値打ちがあるだろう?」という問いから始まる歌詞は、現代に生きる私たちの“漠然とした不安”や“自己価値への問い”を反映しています。
このAメロは、日々の忙しさに埋もれ、自分の存在価値や意義を見失いがちな現代人の心情を丁寧にすくい取っています。「何を信じ歩けばいい?」というフレーズは、信じるべきものが曖昧で揺らぎやすい社会への疑念とも解釈できます。
ミスチルの桜井和寿さんは、このような曖昧な不安を、等身大の視点で描くことで、リスナーに深い共感を呼び起こしています。
「花火のような光」に映す「君=儚く美しい存在」:サビ部分の深読み
サビに登場する「もう一回、もう一回」というリフレインとともに、「花火みたいな光だ」という表現が出てきます。ここで描かれている“君”という存在は、まるで花火のように美しくも儚い、触れられそうで触れられない象徴的な存在です。
君は単なる恋愛対象ではなく、「自分が理想とする生き方」や「憧れの存在」といった、抽象的な意味も内包していると考えられます。花火のように眩しく、見ているだけで涙が出そうになるその姿は、叶わぬ夢や希望そのものなのかもしれません。
この部分は、多くのリスナーが自身の人生経験や感情と重ねることができる、非常に普遍的な魅力を持っています。
「もう一回」の連呼に込められた“再挑戦・再生”のメッセージ
「もう一回」という言葉は、この曲の中でも特に印象的なフレーズです。同じ言葉を何度も繰り返すことで、諦めきれない想いや、もう一度立ち上がろうとする意志が強調されています。
これは単なる恋愛の復縁を願う気持ちというよりも、「もう一度人生をやり直したい」「夢を追い続けたい」という強い願いを象徴しています。失敗や後悔があっても、それでもまた挑戦したい。そうした再生の希望がこのフレーズには込められているのです。
このように、「HANABI」は悲しみや諦めを描きながらも、その中にある「希望」をしっかりと見つめている作品でもあります。
「水」のメタファーが示す“心の在り方”:金魚エピソードと結びつけて
歌詞の中に登場する「水」のモチーフは、透明でありながらも不安定な「心の状態」を象徴していると解釈できます。また、インタビューなどで桜井さんが語った「金魚が水面をパシャっと跳ねるような」心の揺らぎも、この曲に重なる部分があります。
水は自由に形を変え、時には流れに逆らい、時には飲み込まれる存在。その流動性が、心の迷いや不安、そして希望までもを写し出しているのです。
この「水」の描写によって、「HANABI」は視覚的な花火のイメージだけでなく、心象風景をも豊かに描き出している点が非常に印象的です。
✨まとめ
「HANABI」は、美しいメロディーとともに、現代社会に生きる人々の心の葛藤、希望、喪失、再生といったテーマを多層的に描いた名曲です。タイトルや象徴、繰り返されるフレーズには深い意味が込められており、それぞれのフレーズに対する読解が聴き手自身の人生と重なることで、より一層の共感と感動を生み出しています。