【歌詞考察】優里「レオ」に込められた意味とは?犬目線で描く切ない愛と別れ

① 歌詞の視点:これは“犬(レオ)”の目線で語られる物語

「レオ」という曲の大きな特徴のひとつは、歌詞が犬の視点で描かれていることです。冒頭から「小さな部屋 君と僕とで…」という一節があり、二人の時間がとても親密で大切なものであることが伝わってきます。しかし、次のフレーズ「君の匂いを探していた」が象徴するのは、人間ではなく“犬”ならではの感覚です。犬は嗅覚を通して愛情や安心感を感じ取る生き物であり、この部分から物語の語り手が犬であることがほぼ確定します。

さらに、「ショーケースの隅っこに僕がいた」という表現も、人間なら入り込めないような小さな隙間を選ぶ犬らしい行動です。このように、歌詞には犬らしい視点や仕草が散りばめられており、聴き手が気づいた瞬間に物語が一気に立体的になります。

この視点の選択は、聴き手に強い感情移入を促す仕掛けになっています。飼い主と犬という関係は、無条件の愛と信頼で結ばれています。その純粋な感情を犬目線で描くことで、聴き手は「言葉を持たない存在が、こんな風に感じていたのかもしれない」という温かさと切なさを同時に味わえるのです。


② 成長と別れ:飼い主(“君”)の成長と共に失われる日常

歌詞の中盤には、「香水つけた君の匂い 僕にとっては辛いや」という印象的なフレーズがあります。犬にとって匂いは、飼い主との信頼や愛情を確認する手段です。しかし、その匂いが香水によって変わってしまう。これは単なる匂いの変化ではなく、「君」が新しい世界に踏み出したことを示す象徴的なサインです。

この香水のエピソードの背後には、飼い主の成長があります。新しい友達ができたり、恋人ができたりする中で、犬との時間は次第に減っていく。かつて二人で過ごした「当たり前の日常」が、少しずつ遠ざかっていく寂しさ。犬はその変化を理解できないまま、ただ感じ取ってしまうのです。この「言葉のない理解」が、聴き手の胸に深い余韻を残します。

優里の歌詞は、単なるペットと飼い主の関係を描くだけでなく、「成長」という普遍的なテーマを巧みに重ねています。変わっていく“君”を誇らしく思う気持ちと、置いていかれるような孤独感。その二つの感情が、犬という存在を通して純度の高い形で表現されているのです。


③ “別れ”の瞬間と感情の描写:最後の夜と撫でる手の温もり

「君が誰かと暮らすことを伝えに帰ってきた夜」――この一文は、物語のクライマックスです。飼い主は結婚や同棲といった新しい生活を始めるため、犬と一緒に暮らすことができなくなったのでしょう。この瞬間、犬は状況を理解できないまま、ただ“変化の空気”を敏感に感じ取ります。

続く「撫でる手の温もり」が、なんとも切ない。犬にとって撫でられることは、最大級の愛情表現です。しかし、その優しさの裏に“お別れ”の予感がある。この二重の意味が、聴き手の心を揺さぶります。ここで歌詞は一切、別れを直接的な言葉で描かない。それが逆にリアルで、胸に刺さるのです。

こうした繊細な描写が、優里の楽曲に深みを与えています。「言葉を使わずに別れを語る」という手法は、犬と飼い主という関係性を象徴するかのようであり、聴く者の想像力を大きくかき立てます。


④ 別れ後のメッセージ:「会えたから幸せ」「新しい誰かに名前を…」

別れの後、犬はどんな思いを抱くのでしょうか? 歌詞の後半には、「最後に会えたから幸せだよ」「忘れないでよ」というフレーズがあります。この言葉に込められているのは、恨みや後悔ではなく、純粋な愛と感謝です。犬は、ただ飼い主と過ごせた時間を誇りに思い、その思い出を大切に胸にしまい込んでいるのです。

そして、「新しい誰かにまた名前つけて」という一節。これには、未来への希望が込められています。飼い主に対して、「次の命にも、僕にくれたような愛を注いでほしい」という優しさ。この自己犠牲的な愛が、犬という存在の本質を見事に表しています。ここまで読むと、涙をこらえるのが難しいでしょう。

このポジティブなメッセージが、曲全体をただの“悲しい別れの歌”に終わらせていません。むしろ、聴き手に「命と過ごす時間の尊さ」を改めて気づかせてくれるのです。


⑤ 曲の背景と制作者の想い:実話に基づいた切なさと日常への気づき

「レオ」は、優里自身が飼っていた愛犬との思い出をもとに作られたといわれています。突然の別れや後悔、もっと一緒にいたかったという気持ち。そうした実体験が、この曲のリアリティを生み出しています。

さらに、優里はこの曲を通じて「当たり前の日常は、当たり前じゃない」というメッセージを伝えています。犬との生活も、人との関係も、失って初めてその尊さに気づくことが多い。だからこそ、今を大切にしてほしいという願いが、この曲の根底に流れています。

実際、SNSやコメント欄には「うちの犬のことを思い出して泣いた」「今一緒にいる子をもっと大事にしたい」という声が多く寄せられています。優里の「レオ」は、ペットを飼ったことがある人なら誰でも共感できる、普遍的なテーマを持った楽曲なのです。


✅ まとめ(Key Takeaway)

「レオ」は、犬目線で描かれる“別れと愛”の物語を通じて、聴き手に「当たり前の幸せの尊さ」を訴えかける楽曲です。優里が実体験をもとに描いたリアルな感情が、香水の匂いや撫でる手の温もりといった細やかな描写に表れています。この曲を聴くと、今そばにいる大切な存在をもっと大事にしたくなる――そんなメッセージが込められています。