[Alexandros]『LAST MINUTE』歌詞の意味を徹底考察|心が騒ぐ“最後の瞬間”に込めた想いとは

1. 歌詞の核心:「心が騒ぐ」とは何を意味するのか?

「心が騒ぐ」という表現は、『LAST MINUTE』の冒頭で登場し、リスナーの感情を一気に引き込む力を持っています。通常、「心が騒ぐ」という言葉には、不安や焦り、期待や高揚感など、相反する感情が同時に込められることが多いです。この曲における「心が騒ぐ」は、まさにそうした曖昧で多層的な感情を象徴しています。

この曖昧さこそが歌詞の魅力であり、聴く人によってまったく異なる意味合いを持つことができるのです。恋の始まりか、別れの予感か、あるいは人生の大きな選択の前触れか──それを決めるのはリスナー自身です。このように、『LAST MINUTE』の冒頭は、感情の揺れを詩的に表現し、物語の幕開けを告げています。


2. 対比の美学:「さよなら」と「いつまでも」の矛盾が生む儚さ

『LAST MINUTE』の後半では、「さよなら」という別れの言葉と、「いつまでも」という永続の願いが並べられます。一見、矛盾するこの2つの言葉は、実は人間の心の深層を描く上で非常に有効な表現です。

別れを受け入れながらも、その記憶や想いが永遠に残ってほしいと願う気持ち。時間は流れても心の中では「いつまでも」存在していてほしいという切実な願望。この矛盾が、楽曲全体に儚さと詩的な美しさをもたらしています。

『LAST MINUTE』は、恋愛や人生の一場面において、「終わり」を迎えたからこそ見えてくる「続いてほしい」という気持ちを、対照的な言葉によって浮き彫りにしているのです。


3. 英語フレーズの解釈:「Last minute on the other side」「Last minute as a passerby」の意味

『LAST MINUTE』には印象的な英語フレーズが複数登場します。その中でも特に象徴的なのが「Last minute on the other side」と「Last minute as a passerby」という表現です。

「Last minute on the other side」は、「あちら側の最後の瞬間」という意味に捉えることができます。これは、死や別れ、あるいは人生の転機といった不可逆的な「境界線」を暗示しているようにも感じられます。聴き手はその「向こう側」が何を指すのかを想像する余地があり、それによって楽曲に個人的な解釈を重ねることができます。

一方、「Last minute as a passerby」は、「通りすがりとしての最後の瞬間」。これは、短く、儚い出会いを象徴しています。人と人との関係が時に一瞬で終わってしまうこと、その切なさと美しさをこの一文が凝縮しています。

このように英語表現を織り交ぜることで、言葉の響きと意味の両方から多層的な解釈を引き出す工夫が施されています。


4. 月のあかりと時間のない夜:幻想的な世界観の構築

歌詞の中盤に登場する「月のあかりを頼りにして」「時間のない夜に旅立つ」といったフレーズは、現実の時間軸から解き放たれた幻想的な空間を創出しています。月明かりという自然の灯りを頼りに進む様子は、孤独と静けさ、そしてほんの少しの希望を感じさせます。

「時間のない夜」とは、永遠にも感じられるような一夜のことを指しているのかもしれません。心の中では永遠に感じられるけれど、現実にはすぐに終わってしまう、そんな一瞬を描写しています。

このような幻想的な描写によって、『LAST MINUTE』は聴く者を現実から引き離し、どこか夢の中のような空間へと誘ってくれます。


5. 川上洋平の詞世界:感情の揺らぎと普遍性の表現

『[Alexandros]』の川上洋平は、歌詞において具体的な出来事や人物を描かず、抽象的な言葉で感情を表現することを得意としています。そのため、リスナーは自分自身の経験や感情を重ね合わせて楽曲を受け取ることができます。

『LAST MINUTE』でも、感情の揺らぎや、何かを手放す時の切なさ、そして残る余韻といった普遍的なテーマが巧みに織り込まれています。特に印象的なのは、感情を言葉で説明しすぎないこと。聴き手に想像の余地を残し、まるで自分自身がその物語の登場人物になったかのような感覚を与えてくれるのです。

この普遍性と詩的な曖昧さこそが、川上洋平の詞世界の魅力であり、多くのファンが彼の歌詞に惹かれる理由でもあります。