「青」は何を象徴する?—未熟さと瑞々しさの狭間に込められた青春
Official髭男dismの「Same Blue」は、タイトルからも分かるように、「青」という色が全編を通じて重要なモチーフになっています。一般的に「青」は、未熟さや若さ、純粋さ、そして切なさなど、複雑な感情を象徴する色として使われることが多いですが、この楽曲でも例外ではありません。
歌詞の中で「濁って澄んでいく青」や「青のまま募る心」といった表現が出てきます。これは、まだ形になりきらない想い、あるいは未熟だからこそ強く、激しく募る恋心を指していると考えられます。時間の経過や経験によって人は変化していくはずですが、恋の感情だけは変わらずに「青いまま」であるというのは、まさに青春の象徴です。
この「Same Blue」というタイトル自体が、2人の間にあった過去の記憶や感情が今も「同じ青のまま」存在していることを示しており、時間を超えた想いの強さを印象付けています。
“鞄”は心のメタファー—想いの整理と葛藤の描写を読み解く
歌詞の中で印象的なのが、「いつかのため詰め込んでいたカバンがまた膨らんでる」という一節です。この「カバン」は、物理的な鞄というよりも、「心」や「気持ち」を象徴するメタファー(比喩表現)と捉えることができます。
人は気持ちをうまく整理できないと、それを内側に溜め込み、いつか溢れてしまいそうになるものです。この歌詞では、過去の感情や言葉にできなかった想いが「カバン」という形で視覚化されており、それがまた膨らんでいる=今でも心の中で整理しきれていないことを意味しています。
「詰め込んでいた」という表現からも、本人が何かしらの感情を意識的に押し込めてきた様子が伺えます。素直になれなかった過去、自分の中で蓋をしていた想い、それらが再び顔を出してきた今、主人公は葛藤と向き合わざるを得なくなっています。
四季を巡る恋心—移ろう時間と変わらない“青い想い”の対比
この楽曲には、春夏秋冬といった季節の変化を描いた表現が散りばめられています。「春の風」「夏の匂い」「秋の静けさ」「冬の寒さ」など、自然の描写を通じて時間の流れが表現されています。
一方で、それらの移ろう季節とは対照的に、主人公の「青い想い」は変わることがありません。季節が変わり、周囲の環境が変化しても、心の中の感情だけは「Same Blue」として存在し続けているのです。
これは、恋という感情の不思議さと強さを表しているように感じられます。時間の経過が人を成長させても、誰かを想う気持ちは簡単には変わらない。むしろ、その想いが年月と共に深く根を張っていく様子が、「青いまま募る心」という表現に凝縮されています。
「近くて遠い」「寒暖差」—感情の揺れを表す比喩の妙
歌詞の中では、「近くて遠い日々」や「寒暖差」という言葉が使われており、これはまさに恋心の揺れ動く感情を見事に表現しています。
「近くて遠い」という矛盾した表現は、物理的な距離ではなく、心理的な距離感のもどかしさを表していると解釈できます。たとえば、同じ場所にいても、心が通い合っていなければ、それは「遠い」と感じられるもの。逆に、離れていても心が近ければ「近い」と感じられる。恋愛の本質を突いた繊細な表現です。
また、「寒暖差」は季節や天候の描写であると同時に、感情の不安定さを示す象徴でもあります。好きな気持ちが高まる瞬間と、それに伴う不安や自己嫌悪、期待と現実のズレ。そうした「温度差」を、寒暖差という言葉で巧みに描いている点に、ヒゲダンらしい感受性の鋭さが光ります。
恋の葛藤と自己否定—「釣り合い」を求める繊細な心理を探る
「やっぱり僕じゃ…釣り合いたがる資格もないよなあ」という歌詞は、この曲の中でも特に胸を打つ一節です。恋愛において、「自分が相手にふさわしいかどうか」という悩みは、多くの人が一度は経験する感情ではないでしょうか。
この一節には、主人公の強い自己否定と、相手への敬意、そして愛情が複雑に絡み合っています。「釣り合いたがる」という表現が面白いのは、相手に追いつこうとする気持ちがあっても、自分で自分を「ふさわしくない」と感じてしまう心理です。
それでも「Same Blue」というタイトルにあるように、相手と自分が「同じ青」を共有していた時間があったという事実が、せめてもの救いでもあります。自己否定の中にも、どこか希望を感じさせる絶妙なバランスが、この楽曲の魅力の一つだといえるでしょう。
総まとめ
「Same Blue」は、比喩や象徴を多用しながら、青春の苦さや恋愛における未熟な心、自己との葛藤を繊細に描いた名曲です。Official髭男dismならではの文学的な歌詞構成と、誰もが共感できる普遍的なテーマが見事に融合しています。
Key Takeaway(要点)
「Same Blue」は、未熟さゆえにこじれる恋愛感情と、その中で変わらず募り続ける“青い想い”を、四季や比喩を用いて丁寧に描いた楽曲である。青春の切なさと、変わらない心の在り方にそっと寄り添ってくれる一曲。