【よふかしのうた/Creepy Nuts】歌詞(リリック)の意味を考察、解釈する。

Creepy Nuts(クリーピーナッツ)の曲「よふかしのうた」は、ラジオ番組「オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー」のテーマソングとして使用されました。
また、このMVはオードリー春日の「むつみ荘」で撮影され、そのことが話題となりました。
眠れないときに聴きたくなる歌詞を以下にご紹介します。

気まぐれな大人の女性のような存在

それでは、歌詞を詳しく説明していきましょう。
「よふかしのうた」は、中盤においてラブソングのような雰囲気を醸し出す瞬間がありますが、実際にはそうではありません。
この楽曲は夜の情景と少し大胆な青年の物語を描いています。


ガキの頃から夜が好きだった
9時に寝るのは何か嫌だった
なんと無くただ勿体無かった
お前の事がもっと知りたかった
いわゆる三文の得
投げ売ってでも見たいのさもっと奥の奥の奥
色濃く紐解く
12オクロックから丑の刻まで
初めてお前を跨いだのは、
いや初めて跨ったのは確か14

子供の頃、何故か遅くまで起きていることに憧れを感じたことはありませんか?
遊び疲れて眠りたいのに、「もう寝なさい」と言われると、反抗心が湧いてきたことでしょう。
大人たちに仲間外れにされることを嫌うのか、一日が終わることを嫌うのか。
ここでは、そんな多くの人が経験した感情を率直な歌詞に表現しています。
「お前」という言葉がこの楽曲で何度か使われています。
「もっと知りたい」というフレーズが続くため、誰か恋人か好きな人を指しているのかと思うかもしれません。
しかし、これは「夜」という時間を擬人化した言葉です。
曲の主人公は幼少期から夜に魅了されていたことがうかがえます。
この主人公は14歳の時に初めて日付が変わり、深夜(午前1時から3時)まで起きていました。
「跨いだ」というフレーズは、実際に「日付を跨いだ」ことを指しています。
さらに、「~た」「~く」の語尾はリズムを作り出し、夜の魅力を引き立てています。
14歳の夜、部屋でこっそり深夜ラジオを聴いた人も多いのではないでしょうか?
これは少し大人の世界にのぞいたようなワクワク感を思い出させます。
夜という時間は、まさに大人の女性のように魅力的で魅惑的な存在なのです。


俺は何も知らねワナビー
手取り足取り全てが新しい
姿形にその香り
静けさが似合うその黒い肌に
吸い込まれてた手招きされるままに
それからお前は音楽をくれた
女の裸も見せてくれた
飲んだ事ねぇ酒に口つけて
オトンのタバコくすね火を付けた
やっちゃいけないが溢れて
知っちゃいけないに塗れてる
迎えに来る闇に紛れて
お前はいつも気まぐれで…

物語の主人公は、初めて夜更かしを経験します。
まだ子供であるが、夜にしか味わえない魅力をたっぷり楽しむのです。
夜中に放送される番組を観たことはありますか?
通販番組、音楽のランキング番組、そして大人向けの番組、夜中にしか放送できないもの…。
主人公にとってはこれらは刺激的で、楽しくてたまりません。
特に、家族がすでに寝てしまった真夜中がその時間帯です。
夜更かしをすることで、主人公は何となく大人になった気分になり、ついついいたずら心が湧いてきてしまいます。
その結果、主人公はタバコやお酒に手を出すことになります。
14歳は一般的に中学2年生と言えます。
この年齢では「中二病」と呼ばれる病気のような言葉も存在し、背伸びしたい時期でもあります。
しかしこれが主人公を大きく変える要因となるのです。
夜は、その魅力に引き寄せられ、悪ふざけも教えてくれる存在のようです。
夜は、気まぐれな大人の女性のような存在で、主人公を惹きつけ、誘惑し、夜の魅力にどんどん引き込んでいきます。

日々の現実から目を逸らすため

晴れて憧れていた夜更かしを経験した主人公。
誘惑に屈してしまった彼は、その後どのような人生を歩むことになるのでしょうか。


晴れて大人の仲間入り
我が物顔で朝帰り
腫れ物触るよな周りの目に中指立てども空回り
暗い部屋照らしてよブルーライト
視力低下に体力低下
認めたかないがお前のせいさ
起こさないでティーチャー
I’m a day dream believer
俺の若さを日々吸い上げる
まるでサキュバスまたはインキュバス
近いうちに朽ち果てる

ここでは「大人」という表現が使われていますが、主人公は実際には20歳に達していないようです。
おそらく高校生くらいでしょう。
「大人」という言葉は、主人公が「もう子供じゃないし、夜更かしに憧れる年齢じゃない」という強気な態度を示しているのかもしれません。
最初は一人で夜更かしを楽しんでいた主人公ですが、仲間を作り、朝まで遊ぶようになりました。
まだ学生で実家に住んでいると考えられるため、家族は主人公の変化に心配しているかもしれません。
また、近所の人々も主人公の変わり様に驚いていることでしょう。
主人公はそのような注目に無頓着の様子を示していますが、体調にも変化が現れています。
学校に行っても眠りっぱなしで、毎日体がだるい状態になっています。
主人公は自身の健康について心配し、「このままでは早く死んでしまうのではないか」と思いながらも、夜更かしをやめることができません。
物語の中でサキュバスやインキュバスが登場しますが、これらは悪魔や妖精の一種とされ、夢の中で色っぽい夢を見せ、人間の精気を吸い取る存在とされています。
夜の魅力に取り憑かれたかのように、主人公は徐々に弱っていきます。
しかし、その弱体化に気付きつつも、夜更かしの魅力から逃れることができないのです。
この物語の中で「ブルーライト」というフレーズが登場します。
これはスマートフォンの画面を連想させる言葉で、ラジオにメッセージを送るリスナーのイメージを呼び起こすものかもしれません。
夜更かしをしたことがなくても、スマートフォンを使い、友達とメッセージをやり取りしたことがある人は多いでしょう。
このようなさまざまな要素が巧みに組み合わさった歌詞となっています。


お前に手を引かれて出向いた土曜の溜まり場
同じ周波数のムジナもれなく社会不適合者
だけどお前は決して誰も責めない
お前は決して何も聞かない
お節介な陽の光と違い
俺も正さない
未だお前を乗りこなせない
未だお前を使い果たせない
ずっと今日が終わらない
明日を始められない

主人公は完全に夜の魅力に魅了され、夜遊びに明け暮れています。
その結果、家庭内でも居場所を見失いつつあります。
このため、同様に居場所のない若者たちが集まる場所に足を運ぶようになります。
では、なぜ主人公はよふかしを辞めないのでしょうか?
その理由は、文章の最後の部分から読み取れます。
主人公は、日々の現実から目を逸らすためによふかしをしていたのです。
最初は好奇心から始まった夜更かしの習慣が、後には悪癖となり、いつかは辞めるつもりでもなかなかできないでいる状態に陥ってしまい、多くの人々から責められることで反発心を抱いてしまう悪循環に陥りました。
主人公にとって、夜は安心感を提供してくれる場所となっています。
昼間は社会的に成功しているサラリーマンや学生などが多く存在し、何もできない自分を責める気持ちが生まれるでしょう。
しかし、夜になると、どんな人でも受け入れてくれる場所の広がりを感じるのです。
一度でも人生でつまずいた経験がある人々にとって、この感情は非常に共感を呼び起こすものでしょう。
さらに、文章にはラジオネタも巧みに組み込まれています。
例えば、「土曜の夜」は「オードリーのオールナイトニッポン」が放送される曜日を指し、「周波数」という言葉はラジオの周波数を連想させます。
「電波」という言葉は、変わった状況やクレイジーな出来事を指すこともあります。
深夜ラジオのリスナーはしばしば自分たちを「社会不適合者」として揶揄しながら、夜中に秘密裏にコミュニケーションを取ることで楽しむことが多いです。
このような要素は、リスナーにとって共感できるものであり、リリックの巧妙な表現となっています。

大人たちの子守唄

夜に誘惑され、夜の誘惑に囚われた主人公。
彼は夜更かしを辞めることができるのでしょうか?


よふかしのうた
照らしてってmoonlight
目を奪ってブルーライト
ネオンサインが呼ぶ表裏
よふかしのうた
連れてってmidnight
血走ったredeye
大人達の子守唄
なんせ俺達の夜は忙しい
keep on dancin
さぁ鬼の居ぬ間に
俺達の夜は忙しいoh yeah
なんせ俺達の夜は忙しい
keep on dancin
さぁ鬼の居ぬ間に
俺達の夜は忙しいoh yeah

結論から言うと、主人公は夜更かしを続けました。
その理由は、夜中の月や液晶画面からの光を含むすべてが美しく感じられるからです。
夜には楽しい出来事がたくさんあります。
特に都会は夜のダンスクラブなどのお店で溢れており、楽しみが尽きません。
それらの経験を逃すわけにはいかないと思ったのです。
「鬼」という言葉は、昼間の人々が自分たちを悪者と決めつけることを示しているのかもしれません。
彼らがいない夜に騒ぎ、踊ることに何が悪いのでしょう?
主人公にとって、自分の居場所は夜であると確信したのです。
夜型の人々にとって、この「よふかしのうた」はぴったりの曲かもしれません。
日の出が近づく頃、もうすぐ眠りにつくあなたの良いお伴になる、大人たちの子守唄を試しに聴いてみませんか?