【Creepy Nuts】DJ松永の凄さを解説!何がどう凄いのか⁉

ヒップホップの実力派グループに名DJあり

洋邦問わず、ヒップホップの有名グループには腕利きのDJが在籍している場合が多い。
ビースティ・ボーイズにはミックス・マスター・マイクという全米ナンバーワンのヒップホップDJがいるし、サイプレス・ヒルのドープなサウンドはDJマグスが作り上げている。
ウータン・クランではプロデューサーでもありリーダー格のRZAがトラックメイカーも兼任しているし、ハウス・オブ・ペインにはラップメタルバンド、リンプ・ビズキットでも活躍するDJリーサルがいる。

日本のグループにおいても、スチャダラパーのシンコ、BUDDHA BRANDのDJ MASTERKEY、キングギドラのDJ OASIS、SHAKKAZOMBIEのTSUTCHIE、RHYMESTERのDJ JINなどがグループのサウンドの要として多くのマスターピースを作り上げてきた。
THA BLUE HERBにはトラックメイカーとしてO.N.Oが、ライブ時にはDJとしてDJ DYEがステージに立っている。
比較的新しい世代だと、サイプレス上野にはロベルト吉野がいる。
勿論、グループに所属しないDJもいる。
DJ YUTAKAはまだ日本語ラップというものが存在しない頃からDJ活動を行い、ヒップホップの始祖とも呼ばれるアフリカ・バンバータのコミュニティ「ZULU NATION」にも参加した。
その他、DJ HASEBEやDJ KENSEI、DJ HAZIME、DJ VIBRAMといった主にソロで活動を行う面々は多くの日本語ラップクラシックに関わってきたし、またMCでありながらDJも行う、KING OF DIGGIN’ことMICROPHONE PAGERのMUROやBUDDHA BRANDのDEV LARGEのような者もいる。
兎に角、ヒップホップにDJは欠かせない存在であるのは間違いないだろう。

ヒップホップ文化が日本に根付き、様々な色を持ったグループやラッパーが生まれてくる中で一際異彩を放つグループがいる。
Creepy Nuts(クリーピーナッツ)。
ラッパーのR-指定とDJ松永によるヒップホップユニットで、両者ともMCバトルやDJコンテストでチャンピオンとなった実力もさることながら、そのタレント性で多くのメディアにも登場する新世代ヒップホップのトップランナーである。

今回はそのCreepy Nutsのサウンドを担うDJ松永の魅力を余すところ無く紹介したい。

肩書は「世界一のDJ」

30年以上の歴史があるDJコンテスト「DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS」という大会がある。
世界各国で予選を行い、優勝した者だけが決勝ラウンドに駒を進めることができるというもので、DJ松永は2019年の世界大会で優勝を果たし、晴れて「世界一のDJ」を名乗る事となる。
ちなみに相方であるR-指定はULTIMATE MC BATTLEというフリースタイルラップ日本一を決める大会で三年連続優勝という実績を持っており、およそコンテストの実績でCreepy Nutsの上を行くグループはまだ出てきていない。
勿論、コンテストやバトルの結果などは楽曲のクオリティには関係ないという見方もあるが、その実力を多くの人が認めたというのはCreepy Nutsの底力を裏付けする証拠の一つだろう。

音作りはサンプリングからオリジナルへ

元来DJ松永はサンプリングをメインに楽曲を作り上げてきた。
生粋の音楽オタクと呼べる幅広くそして深い知識と、Creepy Nutsの「かっこよければ何でもあり」なスタイルにより、従来ヒップホップにサンプリングされることの多いファンクやジャズ、ソウルに留まらず、新旧問わずに様々なジャンルからサンプリングし、多くの楽曲を世に送り出した。
一例を挙げると、Creepy Nutsの代表曲の一つである「合法的トビ方ノススメ」はアメリカのソウル歌手、Spanky Wilsonの「Mighty Great Feeling」という楽曲から割とそのままサンプリングして使用されている。
その他、元ネタを探し出すのもヒップホップの楽しみ方の一つではあるが、近年(2021年現在)ではサンプリングを使わず、一から音作りをしているようだ。
日本語ラップにおいても黎明期よりサンプリングは多く使われてきたが、JP THE WAVYやBAD HOPのような新しい流れのヒップホップミュージシャンの中にはサンプリングを全く使用せず、今までとは全く違った新しいサウンドやビートを作り出す者も多い。
ただCreepy Nutsはそれとも少し違って、サンプリングをせずにサンプリングっぽい音を作り出す、という手法を取っている。
メジャーフィールドできちんとした流通・販売をするとなると申請に手間がかかる、というのがサンプリングをせずにサンプリングっぽい音を使う理由だとインタビューなどで語られている。
いずれにせよ、DJ松永が作り出す従来のヒップホップでは見られなかったようなビート、テンポ、音作りはCreepy Nutsの大きな魅力の一つだ。

RHYMESTERへの憧れ=ラジオDJ?

Creepy Nutsの二人が共通して愛するヒップホップグループにRHYMESTER(ライムスター)がいる。
言わずと知れた日本語ラップの重鎮で、後進への影響力は大きく、メディアへの露出も多い。
その影響があってのことなのか、それとも生来の喋り好きが影響したのかは不明だが、Creepy Nutsもニッポン放送「オールナイトニッポン」をはじめ、ラジオのレギュラー番組を持っている。
言わずもがなRHYMESTERの宇多丸は主にTBSラジオにてパーソナリティを務めた「ウィークエンド・シャッフル」をはじめ、数多くのラジオ番組に出演してきた。
古くはラッパーのYOU THE ROCKが持ち前の明るさで伝説のヒップホップラジオ・TOKYO FMの「HIP HOP NIGHT FLIGHT」などに出演していたが、宇多丸はAMである。
ヒップホップ色が全く無い、とは言わないが、おそらく宇多丸が出演したラジオで最も有名なコーナーは書籍にもなった映画評論コーナー「ザ・シネマハスラー」だろう。
映画である。
ヒップホップではない。
幅広い知識と鋭い視点、勿論笑いも取り入れた喋りでヘッズのみならずお茶の間の大衆を大いに楽しませてきた。
Creepy Nutsの二人も同様である。
ヒップホップネタは勿論あるが、それよりはDJ松永の暴走とR-指定のワードセンスによる雑談、リスナーからのお便りを取り上げたトークが聴きどころである。
どちらかと言うと破天荒なイメージのあるのはR-指定だが、ラジオのDJ松永の暴走はその破天荒を凌駕する爆発力があり、Creepy Nutsの音を聞いたことがない方も楽しめるはずだ。
サイコパスぎりぎりのDJ松永を豊富な語彙でたしなめるR-指定とのやり取りは必聴。
さながら宇多丸がヘッズ以外にも評価を受けたように、Creepy Nutsのラジオも息の長いものとなるのかもしれない。

人として大丈夫?

一見するとアウトローな風貌のR-指定と常識人なDJ松永というイメージだが、どちらかというとDJ松永の方が危ない発言が多い。
天然なのか計算なのかは不明だが、DJ松永が引き起こした事件と名言を幾つか紹介しよう。

  • 一人暮らししている時、ほぼ制作作業しかせず、人と遊びに行ったのが年に一回
  • 友人からのプレゼントを帰り道のコンビニのゴミ箱に捨てる(理由としては「友達じゃないから捨てた」)
  • 自分に話しかける女の子は自分の事が好きなんだと思い、その子に気持ちがあると思われないように距離をおいていた
  • 友人でもあるオードリーの春日が自分の部屋に泊まって帰った後、隅から隅まで掃除をするほどの潔癖症
  • YOASOBIのラジオに出演して、好きなナスの話題になった際、スタッフやYOASOBIのメンバーに止められてもナスの話を止めなかった
  • 24時間ゴミが出せるタワーマンションへの引っ越しを考えたが、ネットで検索するとタワーマンションへのバッシングばかり出てきたので「タワーマンション」と定義されない18階建てのマンションに引っ越した

まだまだ発展途上の段階にある「DJ松永」というコンテンツ

ここまでDJ松永及びCreepy Nutsの魅力を一部分紹介してきたが、このユニットが結成されて10年も経っておらず、まだこれから色々な分野での活躍が楽しみなCreepy Nuts。

異色の存在・DJ松永の動静から目が離せない。