「好きだ」はどんな曲？リリース背景と小説『ヒカリノタネ』との関係
YOASOBIの楽曲「好きだ」は、作家・森絵都による書き下ろし小説『ヒカリノタネ』を原作とした一曲です。この小説は、ソニーグループのプロジェクト「ソニーミュージック × YOASOBI × 直木賞作家による『はじめて告白したときに読む物語』」の一環として発表されました。
「好きだ」は、青春の中で訪れる「初めての告白」の感情と、それにまつわる記憶の重なり、そしてそれらを乗り越えるまでの葛藤を描いています。タイトルの通り、一見すると純粋なラブソングのように感じられますが、物語性と哲学的な問いが内包されており、YOASOBIらしい文学的アプローチが際立っています。
歌詞全体のストーリーを時系列で追う：初告白からタイムトラベルへの展開
「好きだ」の歌詞は、大きく3つの時期を経て展開されます。「十年前」「五年前」「三年前」といった時間の経過を追うことで、主人公の恋愛の軌跡と内面の変化が描かれています。
歌詞の冒頭では、主人公がかつての初恋の相手に何度もフラれた過去を回想しています。その経験がどれほど痛みを伴っていたか、そして未だにその記憶が心に影を落としていることがわかります。
やがて彼は「タイムトラベル」をして、その過去の記憶そのものを消し去る決断をします。つまり、「告白しなかった人生を選び直す」という選択をしようとするのです。これは現実世界ではあり得ない行動ですが、歌詞の中ではそれが可能であるかのように描かれます。
「タイムトラベル」の意味とは？主人公の心情の変化解釈
この「タイムトラベル」は単なるSF的な設定ではなく、むしろ「記憶や感情とどう向き合うか」という心理的なメタファーとして捉えることができます。
告白を後悔していた主人公は、恋心を抱いた記憶自体をなかったことにしたいと願います。これは「好きになること」や「傷つくこと」を否定したい、という一種の自己防衛です。
しかし、物語が進むにつれ彼はその記憶を「無駄ではなかった」「宝物だった」と再評価していきます。つまり、たとえ報われなかったとしても、自分が誰かを好きだったという気持ちは尊く、人生を形作る大切な一部なのだという結論に至るのです。
“苦い想い”から“宝物”へ：フレーズごとの歌詞考察
歌詞の後半に登場する「何回フラれてがっかりしたって あの時の僕がいたから…」というフレーズには、主人公の心情の変化が集約されています。かつての苦い思い出が、いつしか人生を豊かにする栄養へと変化しているのです。
さらに「君に出会えてよかったって 思い出にできる日が来た」という言葉も注目です。ここには、未練や後悔を乗り越え、感謝の気持ちへと昇華していく様子が込められています。
YOASOBIの楽曲はしばしば「成長」や「自己受容」をテーマにしており、「好きだ」もその系譜にあります。誰もが経験する“報われない恋”を、美しい思い出として再定義するその過程こそが、本楽曲の核心です。
視聴者・ファンの声から見える共感ポイントと人気の理由
SNSやレビューサイトでは、「好きだ」の歌詞に共感する声が多く見られます。特に「昔の恋を思い出して泣いた」「自分の過去と重なって苦しいけど救われた」といったコメントが目立ちます。
また、「時間を巻き戻したくなる気持ちは誰しもあるけれど、それを乗り越えて前に進むというメッセージに心を打たれた」という意見もあり、幅広い年代に支持されていることがわかります。
YOASOBIの特長である“物語性と音楽の融合”が、多くのリスナーの心に届いている証拠といえるでしょう。
🟨 まとめ
YOASOBI「好きだ」は、ただのラブソングではなく、「後悔」「葛藤」「自己受容」という人間の普遍的な感情を、物語と音楽によって深く描いた作品です。
過去の恋が「宝物」へと変わるまでの感情の旅路に、多くのリスナーが共感し、自らの経験を重ね合わせています。まさに「好きだ」は、心の奥底に響く“感情の文学”なのです。
