今回は「King Gnu(キングヌー)」 のヒットナンバー、「the hole(ザ・ホール)」の歌詞の意味の考察、そしてどういった曲なのか探っていきたいと思います。
「The hole」概要・曲紹介
『The hole』はKing Gnuの2枚目のアルバム「Sympa」に収録された壮大なバラード曲になります。
これまでにないストレートで濃厚なバラード曲になっており、メンバーが語るようにロマンチックで、人の心の奥底にある感情や欲望などが、思い起こされるような曲調や歌詞になっています。
公開されたMVも話題となっており、様々な考察がされています。
三角関係に陥った男性2人と女性1人がお互いにさらけ出す感情や行動が、MVとは思えない程の見応えのあるストーリー性を演出しており、感動の声も多いです。
今回はそんな『The hole』に込められた意味や想いを、MVを中心に、メンバーの境遇やコメントなどからも考えていきます。
曲名「The hole」の意味とは
まずは「The hole」 という言葉の意味に関して考えます。
単純に「穴」という和訳の意味がもちろんありますが、ここでは「傷口」といったテーマもあるようです。
メンバーの常田さんもコメントしており、人の心の奥深くに訴えかけるような曲調ともリンクします。
MVを見てもお互いの心の傷口を埋め合うような性的なシーン、そして心の傷を負った相手に対する、優しさや触れあいの場面も見られます。
歌詞解釈
それでは歌詞の解釈をしていきたいと思います。
「The hole」1番
晴れた空、公園のベンチで1人
誰かを想ったりする日もある
世界がいつもより穏やかに見える日は
自分の心模様を見ているのだろう
MVはいきなり主人公と男性のキスシーンから開始されます。
そして場面が変わり、天気の晴れた日に公園で複雑な表情でうつむき、悩んでいそうな女性の姿。
おそらくこの部分の歌詞では、平和で穏やかな日々の中で、これまでにあった自分の辛い過去や気持ちを、落ち着いて整理し振り返っているのではないのでしょうか。
吐き出せばいいよ
取り乱せばいいよ
些細な拍子に
踏み外してしまう前に
MVではカフェで女性が、店員として働く主人公の姿を見つけ、主人公の男性もまた女性の姿を見て少し気になる素振りを見せます。
これが恐らく、初めての出会いであり、主人公は女性が何か傷みや傷口を抱えていることに気付いたのではないでしょうか。
歌詞でも「吐き出せばいい」、「踏み外してしまう前に」とありますので、悩みや傷みをさらけ出して、大事になる前に相談して欲しい、と表現していると思われます。
愛を守らなくちゃ
あなたを守らなくちゃ
消えそうな心の声を聞かせて
そして主人公がパスタを女性の前にサーブして、優しく微笑みかけます。
歌詞でも「愛」を守りたい、そして「あなた」を守りたいと歌っています。
心の声を聞かせてほしいとも言っていますので、やはり女性が思い悩んでいる様子、ぽっかりと空いた心の「穴」、つまりは傷口を抱えていることに気付いたようです。
ぽっかりと空いたその穴を
僕に隠さないで見せておくれよ
あなたの正体を
あなたの存在を
そっと包み込むように
僕が傷口になるよ
次のシーンでは目にアザのある涙ぐんだ女性を、優しく後ろから主人公が抱きしめます。
そして一夜を過ごして優しく寝ている女性を撫でる主人公。
この部分の歌詞でも、やはり心の「穴」、つまりは心の傷口を見せてほしい、共有したいという気持ちを表現しています。
自分が傷口になるということは、そうした想いの表れなのでしょう。
「The hole」2番
気づけば誰かの物差しで
人と比べた未来に傷ついて
身体にぽっかりと空いたその穴を
埋めてあげることが出来たのなら
その後、MVでは主人公が呼び出されて男性の家に行きます。
そしてそのまま濃厚なラブシーンに入ります。
おそらくこの男性もまた過去に傷心しており、その傷口、つまりは心の「穴」を主人公が埋めてあげていたのでしょう。
この部分の歌詞でも相手の傷みを共有し、助けになりたい気持ちが表れています。
逃げ出せばいいよ
全てを放り出せばいいよ
些細な拍子に
壊れてしまう前に
愛を守らなくちゃ
あなたを守らなくちゃ
消えそうな心の声を聞かせて
ここでは辛いときがあれば、無理をせず逃げ出してもいいんだよ、という気遣いの気持ちが溢れています。
心が壊れてしまう前に相手を救いたいと労わっていますね。
このあと主人公は女性と海で楽しそうに過ごしています。
しかし帰り道にケンカをしてしまい、女性は車から飛び出してしまいますが、男性は追いかけて抱きしめます。
相手を守りたい気持ちが表現されています。
ぽっかりと空いたその穴を
僕に隠さないで見せておくれよ
傷には包帯を
好き勝手放題の
世界から遠ざけるように
僕が傷口になるよ
この部分では「傷には包帯を」と言っていることから、やはり人の心の傷やトラウマ、傷心といった内容がテーマであることがうかがえます。
「好き勝手放題の世界」とは、世の中の辛い現実や人間関係、社会全体を指しているのではないでしょうか。
そんな世界や現実から相手を守り、傷を塞ぐ包帯のような役割に自分がなってあげたい、という気持ちを表現しています。
MVでもそんな気持ちを表現してか、主人公と女性が和解し、穏やかに寄り添う姿がとても美しく印象的です。
愛する誰かが自殺志願者に
僕らはそのくらい脆く不確かで
愛を守らなくちゃ
あなたを守らなくちゃ
世界の片隅に灯るかすかな光を
掻き集めて
「愛する誰かが自殺志願者に」という少し怖い印象の歌詞が入っていますが、ここでは作詞したメンバーの常田さんの近況が垣間見えます。
2019年頃より立て続けに友人が亡くなったこと(おそらく自ら命を絶った?)が影響しているようです。
「僕らはそのくらい脆く不確かで」とは、自分たちはそのくらい弱い存在であるから、お互い愛を守り、生きる希望(光)を大切にすべき、という思いを伝えているのではないでしょうか。
MVでも女性の名前が「光」であることからも分かりますね。
この世界の 希望も絶望も
全て飛沫をあげて
あなたに降り注ぐのなら
あなたの正体を あなたの存在を
そっと庇うように
僕が傷口になるよ
MVでは女性が主人公と男性の関係に気付いて、主人公と激しく揉めた後に飛び出し、それを追いかけた主人公が車にひかれて亡くなるというラストになっています。
歌詞でもあなたの存在を庇いたい、助けたい気持ちが全面に出ていますね。
しかしながらMVでは亡くなった主人公の姿を女性が見てショックを受け、再び心に「穴」が空いてしまい、涙するシーンとなっています。
傷口を塞ぐつもりが、最後には主人公の死が再び女性の心の傷となってしまう、という悲しい結末になってしまいました。
まとめ
全体として総括すると、やはりこの曲は大切な友人や愛する人を守りたいと思う気持ち、寄り添いたいと思う気持ちを表現した曲であると思います。
また、タイトルの「The hole」、つまりは「穴」ということに関連してか、MVの主人公がよくイヤホンを耳に装着したり、関係を持った男性もまたキスをする際に、主人公の耳を塞ぐといった行為が印象的です。
おそらくは「耳の穴=心の穴」と捉えて、耳を塞いだりイヤホンをすることで、心に空いた穴を埋めている、と暗示しているのでしょう。
MV、メロディー、さらには歌詞を含めてこれほどまでに調和し、メッセージ性の強い楽曲があるでしょうか。
これからも彼らが出す楽曲に目が離せませんね!
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