【歌詞考察】official髭男dism「うらみつらみきわみ」に込められた本当の意味とは?

official髭男dismの「うらみつらみきわみ」は、2025年に発表された最新アルバム収録曲で、タイトルからもわかるようにネガティブな感情をテーマにした異色の楽曲です。しかし、単なる「恨みつらみ」では終わらず、最後には人間らしい温かさや成長の兆しを描いています。ここでは、歌詞を細かく読み解き、その意味を深掘りしていきます。


1. 「うらみ」と「つらみ」──曲が描く心理的葛藤の深層

「うらみつらみきわみ」というタイトルは、強烈な負の感情を連想させます。実際、歌詞の冒頭からは、自分の中にある黒い感情を隠しきれない主人公の姿が浮かび上がります。

「愛想笑いで耐えきった 大人だものって飲み込んだ」

この一節が象徴するのは、理不尽や不条理を前にしても「大人だから」という理由で感情を押し殺す現代人の姿です。恨みやつらみを心に抱えながら、表面的には笑顔でやり過ごす。その結果、心の中で膨れ上がる葛藤は、やがて限界に達し、「きわみ」に到達します。

多くのリスナーが共感するのは、この「押し殺した怒りと苦しみ」でしょう。歌詞は、その感情が爆発する寸前の心理をリアルに描写しています。


2. “大人の振る舞い” の皮肉──抑え込む矛盾と自己欺瞞

歌詞全体には、「大人らしく振る舞わなければならない」という社会的プレッシャーに対する皮肉が込められています。

「大人だもの 笑ってやり過ごすのが正解だろ」

ここで語られる「大人像」は、決して理想的な成熟ではありません。むしろ、社会に順応するための仮面です。本心を隠し、相手に合わせ、波風を立てない。それが「正しいこと」だと自分に言い聞かせる姿は、多くの人にとって身に覚えがあるはずです。

この楽曲が強い共感を呼ぶ理由は、こうした「大人の皮肉」を真正面から描き、聴き手に「それでいいの?」と問いかけているからです。髭男の楽曲はこれまで、希望や愛をポジティブに描くことが多かっただけに、本曲のダークなテーマは異彩を放ちます。


3. 自己嫌悪と感情の二面性──傷ついた自分への問いかけ

歌詞中には、ネガティブな感情を持つ自分自身に対する嫌悪感が表れています。

「情けないし綺麗な人間じゃない」

人を恨んだり嫉妬したりするのは「醜い」とされる感情です。しかし、歌詞はそれを否定するのではなく、むしろ「それが人間らしさだ」と受け止めています。ここには、「理想の自分」と「現実の自分」の間で揺れる葛藤があります。

この二面性は、多くの人が持つ普遍的なテーマ。「本当は嫌いな自分」を受け入れられず、でも消し去れない。その苦しみを、official髭男dismはリアルに言語化しているのです。


4. ネガティブ感情のエネルギー化──「鍛える重み」への昇華

この曲が単なる鬱屈ソングで終わらない理由は、ラストに向けて「感情の転換」が描かれているからです。

「愚直に自分をやけに鍛える重み」

恨みや悔しさを抱えたまま、それをエネルギーに変えて前に進む決意。ここには「負の感情は悪いものではない」というメッセージが込められています。つまり、「うらみつらみ」は、成長のためのバネになるのです。

この発想は、現代社会において非常に重要です。SNSや職場でのストレスを抱える私たちにとって、怒りや嫉妬を「ゼロにする」ことは不可能。むしろ、それを原動力に変える術を見つけることが求められています。


5. 「それでいい」──不完全さを受け入れるメッセージ

最後に印象的なのは、曲の締めくくりで語られる「受容の言葉」です。

「それもいい」「それでいいじゃん」

ネガティブな自分を否定せず、そのまま受け止めること。完璧でなくてもいい。弱さや醜さを抱えたまま、前を向いていけばいい──この肯定感が、聴く人の心を救います。

official髭男dismは、この曲を通じて「人間は弱くて当たり前」「それを隠さず、抱えて生きていこう」というメッセージを発信しているのです。


まとめ:official髭男dism「うらみつらみきわみ」歌詞の核心

  • 恨みやつらみといった感情を抱えることは、誰にでもある自然なこと。
  • 大人らしさという名の仮面は、しばしば自己欺瞞に変わる。
  • 自己嫌悪と向き合い、負の感情を力に変えて成長していく姿を描く。
  • 「それでいい」という言葉に、人間らしさの肯定が込められている。