【栄光の男/サザンオールスターズ】歌詞の意味を考察、解釈する。

この楽曲は、サザンオールスターズの「無期限活動休止」から5年ぶりに復活した彼らの再始動を告げる「ピースとハイライト」の3番目のトラックとして発表されました。

1974年10月に長嶋茂雄が巨人を引退したとき、それはサザンが「勝手にシンドバット」でデビューする4年前の出来事でした。
長嶋茂雄氏はその引退の際に「我が巨人軍は永久に不滅です」と言い、その言葉は多くの人々に感銘を与えました。

桑田佳祐氏は青山学院大学に在学中、青山にある喫茶店でこの引退セレモニーを目撃し、涙を流したという話は、サザンファンの間でよく知られています。
当時、桑田氏は18、19歳でした。

「栄光の男」の歌詞を聴くと、かつての感動的な経験を、年月を経て、桑田氏が当時の出来事を回想し、その思い出に基づいて書かれた曲であることが明らかです。

一度聴いたら忘れられないギターの導入部、そして続くハーモニカの響き。
この楽曲の爽やかな始まりから、桑田佳祐氏の独自の歌声が広がります。
個人的に、私はこの曲においてベースギターが非常に印象的であると感じています。

通常、裏方的な存在であるベースが、安定したサウンドで際立つ姿は、サザンの音楽キャリアが単なるものではないことを象徴しているように思います。
この感触を共有する人は、きっと私だけではないことでしょう。

「永遠に不滅」と、彼は叫んだけど、信じたモノは皆、メッキが剥がれていく

もしもこの楽曲を歌うのが若手アーティストであったなら、それは全く異なる印象を与えたことでしょう。
子供の頃に愛した音楽、数年前に流行った曲、そして時折振り返ってみて「あれ?こんな感じだったっけ?」と思うこと、これらの経験は、多くの人に共感を呼ぶでしょう。

叶わない夢など追いかける程野暮じゃない

哀しくて泣いたら、幸せが逃げてしまう
1人寂しい夜、涙堪えてねんねしな

生まれて変わっても、栄光の男にゃなれない

この世は、弱い者には冷たいね 終わり無き旅路よ、明日天気にしておくれ

この曲は、表現としてはネガティブな要素が多いにも関わらず、経験を積んだ大人が共感できるものとして浮かび上がります。
歌詞全体を通して、「がんばろうぜ!」と明示されていないにもかかわらず、なぜか希望に満ちた気持ちになるのは、不思議なことです。

この謎めいた感情の背後には、おそらく桑田佳祐氏の歌唱力と表現力があるのでしょう。
サザンオールスターズというバンドがこの曲を演奏し、桑田氏が歌うからこそ、前向きな感情が湧いてくるのかもしれません。
この曲はまさに、サザンオールスターズにしか歌えない曲と言えるでしょう。

サザンオールスターズは2023年で45周年を迎え、依然としてその力は衰えていません。
この曲に出会えたこと、そしてその曲を通じて前向きになれることに感謝します。