【view/スキマスイッチ】歌詞の意味を考察、解釈する。

今回は、スキマスイッチのデビューシングルである「view」(ビュー)についてご紹介します。
このミュージックビデオには、優れた文学作品との深い関わりが組み込まれており、その中から歌詞の意味を詳しく解釈していきます。
男性は繊細な部分を持つ存在です。
その繊細さを通じて経験することで、彼がどのような「答え」を見つけることができるのか、探ってみましょう。

メジャーデビューシングル

この曲は、スキマスイッチの初のメジャーシングルであり、彼らの音楽活動の幕開けを飾る大切な楽曲です。
リリースは2003年となっており、長いスキマスイッチの歴史を感じさせる一曲となっています。
初のシングルとはいえ、その完成度は非常に高く、優れた歌唱力と楽器の音を巧みに取り入れたアレンジ、そして重厚なコーラスなどが見事に調和されています。
さまざまな工夫が込められた楽曲として、今なおその魅力は色あせることなく、聴く者を惹きつけてやみません。

檸檬爆弾

YouTubeの公式チャンネルには、この楽曲のミュージックビデオがアップされています。
常田さんの個性的なアフロヘアが目を引きますね(笑)。
いや、もちろん常田さんのアフロヘアについては有名ですが、その個性はやはり際立っています。
大橋さんが海辺でドライブに出かける場面や、それをバイクで追いかける常田さんのシーンなどが印象的です。
そして、この二人を繋ぐのはレモン型の爆弾という意外な要素が登場します。
なお、歌詞の中では「レモン」という言葉は使われていませんが、なぜこのミュージックビデオでレモンが使われることになったのでしょうか。


このレモンには、梶井基次郎の小説「檸檬」と密接な関係があります。
この小説の主人公は、非常に不快な気分に押し潰されそうな状態にあります。
そのような時、主人公はかつて好きだった本屋の店で、本を積み上げ、その上に果物屋で手に入れたレモンを置く場面が描かれます。
主人公は「この檸檬爆弾が爆発したら、きっと爽快だろうな」と妄想します。
この妄想の中で、自身の抱える暗い感情を爆風で吹き飛ばす様子が描かれます。
この「檸檬爆弾」という概念が、スキマスイッチの「view」の歌詞にも取り入れられています。

ミュージックビデオでは、大橋さんが本屋の本の上に置かれた檸檬爆弾を手にする場面からスタートします。
この場面は、おそらく「檸檬」の主人公がレモンを置いた場所を再現しているのかもしれません。
「檸檬」の物語において、主人公は檸檬爆弾を通じて内なる陰鬱な感情を吹き飛ばそうとする姿勢が描かれています。
一方で、「view」の歌詞の中でどのような関係性が築かれているのかを探求しながら、この檸檬爆弾の象徴性と主人公の状況についても考えてみましょう。

解放されるためには、強がりを装うしかない

車から見えるこのビュー 海と空の区別もなく
腹立つほど続く青だほら、ハンドル握って
あのトンネルくぐるぜ

あの日から初めて来る 伊豆じゃなく焼津の海
家にいたらクサるだけだ カーラジオもとぎれて
まだトンネル終わんねぇ

物語の主人公は車に乗って青い海と空が広がる景色を前にします。
しかし、美しい風景が広がっているにも関わらず、主人公の心情は怒りに満ちています。
そして、トンネルをくぐり抜けます。
目指しているのは焼津の方向。
東京から焼津に向かうドライブの中で、海が見える瞬間があるかもしれませんね。
伊豆半島を進み、静岡市に向かう道はトンネルが多いエリアです。
トンネルをくぐるたびに、カーラジオの音も途切れ途切れになるでしょう。

ただし、この「トンネル」は文字通りの地下の通路だけでなく、主人公の内面的な感情や心情を表していることが考えられます。
トンネルを進む過程で、主人公の陰鬱な気持ちが具現化されているのかもしれません。
暗いトンネルの中で進むように、主人公の気持ちも暗闇から抜け出せない状態を象徴しているかもしれません。
その「トンネル」は、主人公が抱えるどのような悲しい感情や出来事なのか、この場面では詳しくは明かされていません。

主人公が言及する「あの日」には、どのような出来事があったのか、その謎めいた部分にも着目しながら、彼の心情や過去の出来事に迫ってみましょう。


“永遠なる愛”信じ現実は君の奴隷
時おり見せた優しいしぐさに浮かれ
未来のビジョン気付かぬうち描いていたのはこっちの方

この部分で、物語に「君」という人物が登場します。
そして同時に、物語には「愛」という重要なテーマが絡んできます。
「君」とは主人公の恋人であることが分かります。
そして、前述した「あの日」が「君」との別れの日であることが明らかになります。
物語は、最初は永遠の愛を誓い合ったと信じていた主人公の視点から進んでいきます。
しかし、その後、主人公と「君」の関係は主人と奴隷のようなものになってしまい、主人公はその現実に気づくようになります。
別れを考える瞬間も訪れますが、同時に「君」の優しい仕草や行動によって、主人公はその気持ちを保ち続けます。

「君」は主人公の気持ちや思惑をよく理解しておりながら、彼の感情に応えるような態度を見せます。
主人公は、「君」の思惑を知りつつも、その愛情に浮かれてしまいます。

主人公はこの関係が長く続くのだろうかと未来を予想しますが、その予想はあくまで仮説に過ぎません。
物語が進む中で、青写真として描いていた未来の予想が、別れの日に壊れてしまうことが示唆されます。


こんな闇早く抜け先へ 君の体思い出すのも飽きたし
開けた向こうに待つのが例えなんであれ僕はかまわない
あれ いつからこんな強気だ?

別れの辛さという暗闇へのトンネルを、「僕」はなるべく早く抜け出したいと考えます。
この想いが徐々に彼を自信に満ちた状態へと導いていく様子が描かれています。
夜に一緒に過ごした時の記憶も、「飽きた」と感じ始めます。
どんな未来が待っていようと、別れの悲しみのトンネルを通り抜ける準備ができていると、「僕」は受け入れます。
彼は、どんな状況でも受け入れる覚悟を持っているようです。

しかし、この「強気」な態度は実は内面の「強がり」であることは、すぐに見抜かれます。
「飽きた」と言いつつも、何度も過去の思い出を思い出していることは、未練がましさの表れです。
別れの悲しみから解放されるためには、強がりを装うしかない、というのが「僕」の現状です。
こういった男性の複雑な感情や性格の一面が物語に反映されているようです。

破壊された未来のイメージが主人公の心を支配している

晴れ間があの出口に見える 光に吸い込まれるよう
2000mでも君をまるで忘れなかった
トンネルは終わるのに

車を進めれば必ずトンネルを抜けることができます。
「僕」の視界の先には、晴れ間が広がっています。
その光景には、暗闇ではなく希望や明るい未来が感じられます。
通常、光は明るさや希望を象徴するシンボルですが、しかし「僕」にとってはそのような前向きな意味合いはありません。
実際にはトンネルを抜けることには成功しても、別れの悲しみからはまだ解き放たれていないのです。
「君」との思い出が頭に浮かび、「僕」は飽きたと思いつつも彼女の姿を思い出してしまいます。
どれだけトンネルをくぐっても、「君」を忘れることは叶わないのです。

そして、逆に外が明るくなればなるほど、「僕」の心の暗さが際立つことに気付きます。
「僕」にとっては、明るい光景がかえって無情なものとなります。
この部分では、「僕」の内面の葛藤や、明るい光が彼にとってどのような意味を持つのかが描かれています。


太陽が僕の目の前に落ちてくる
速度をあげて あの海へ逃げ込もう
未来のビジョン 気付かぬうちに壊してたのはそっちの方

トンネルを抜けると、青空に輝いていた太陽がゆっくりと沈んでいきます。
青い海は次第に橙色に染まっていきます。
しかし、別れの悲しみからまだ解放されていない「僕」は、海を目指して進みます。
自分を受け入れてくれるかのような海へと、「僕」は車を速めます。
そんな瞬間でも、「僕」の心には「君」の姿が浮かび上がります。
「僕」が描いていた輝かしい未来を壊してしまった「君」の姿です。

この部分では、トンネルを抜けた後の状況が描写されています。
夕日が沈む景色や海の色彩の変化が、主人公の感情と重ね合わさりながら進行しています。
また、「君」への思いと、彼女によって破壊された未来のイメージが主人公の心を支配していることが示唆されています。

「君」と向き合って決着をつける

暗闇ひとつ抜けて 君を忘れてしまうよりは そう、
いっそ君が死ぬまで二度と僕を忘れさせない方がいいね
それがこの旅の答えだ
もう一度だけ君のもとへ

そして、このドライブを経て「僕」は一つの結論にたどり着きます。
「この恋をここで終わらせるわけにはいかない」と、彼は宣言します。
この言葉には多くの解釈が含まれているでしょう。
おそらく、「僕」は再びチャンスを求めて、対話を試みるかもしれません。
あるいは、今まで我慢してきた感情をぶちまける覚悟を持っているかもしれません。
どちらにせよ、「僕」は「君」との再会に向けて新たな一歩を踏み出す覚悟をしています。
彼はただ悲しみを抑えるだけではなく、新しい未来へ進むために「君」と再び向き合おうと決意します。
「僕」は、過去の感情を整理し、未解決の問題をクリアにするために、「君」と向き合って決着をつけるつもりです。
彼は海に逃げ込むのではなく、真摯に向き合い、新たな局面での勝負を選ぶことに決めたのです。

この部分では、「僕」の決断と彼の未来に向けた意志が描かれています。


ここまで進むと、「檸檬爆弾」の意味が明らかになってきたと思います。
「僕」は、「君」との過去の思い出を檸檬爆弾を通じて一掃しようとしているのです。
ただし、その意図は単に「忘れる」ということではありません。
むしろ、過去を爆発させることで、新しい世界を築こうとする意志を示しています。
彼は過去の束縛から解放され、新たな関係性を形成しようとしています。
これは以前のような偏った関係ではなく、より平等な立場で向き合うことを意味しています。
新しい関係を築くためには、古い関係を一掃する必要があります。
そのために、「檸檬爆弾」を設置しようとするのです。

まとめ

「view」の世界観は、いかがでしたでしょうか。
この楽曲とそのMVは、緻密な考察を通じて、文学作品との深い関係性を浮き彫りにしています。
このオマージュは、音楽の領域をさらに拡張し、独自の世界を生み出しています。
失恋した男性の女々しさだけを描いたものではありません。
この男性は、海へのドライブを通じて、さまざまな過去を回想していきます。
そして、新たな関係性を模索していく彼の姿勢が描かれています。
「僕」の未来に幸福が訪れることを願わずにはいられないのは、私だけではないかと思います。
再び関係が以前のように戻るとは限りませんが、新しい一歩を踏み出すための対話が展開されることを望むばかりです。