WANIMAの代表曲のひとつ「ともに」。
明るく疾走感のあるサウンドから「前向きな応援歌」として聴かれることの多い楽曲ですが、その背景を知ると、単純なポジティブソングではないことが分かります。
「ともに」は、もともとニベア花王「8×4 ボディフレッシュ」のCMソングとして、「青春・部活・汗」をテーマに書き下ろされた曲です。
ところが、歌詞が完成しないまま迎えたレコーディング前日に熊本地震が発生。熊本出身のWANIMAにとって、故郷で起きた震災は楽曲にも大きな影響を与えました。
KENTAは後に、地元へすぐに帰りたい気持ちを抱えながらレコーディングに臨み、その状況から歌詞の一節が生まれたことを明かしています。WANIMAインタビュー(激ロック)
つまり「ともに」は、「青春の応援歌」として始まりながら、制作途中で現実の喪失や不安を背負った曲でもあるのです。
この背景を踏まえると、タイトルの「ともに」という言葉も違って聞こえてきます。
WANIMA「ともに」の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 楽曲名 | ともに |
| アーティスト | WANIMA |
| 収録作品 | 『JUICE UP!!』 |
| 発売日 | 2016年8月3日 |
| 作詞 | KENTA |
| 作曲 | WANIMA |
| タイアップ | ニベア花王「8×4 ボディフレッシュ」CMソング |
| 関連作品 | 熊本復興ドラマ「ともに すすむ くまもと」主題歌 |
『JUICE UP!!』はWANIMAの2ndシングルとして2016年8月3日に発売。「ともに」は1曲目に収録されています。PIZZA OF DEATH RECORDS
「ともに」は何のために作られた曲なのか
ここは非常に重要です。
「熊本地震をきっかけに作られた曲」と説明するだけでも、正確ではありません。
WANIMAは2016年5月、「ともに」が自身初のCM書き下ろし楽曲であることを発表しています。
KENTAによれば、与えられたテーマは「青春・部活・汗」。幅広い人の力になってほしいという思いを込めて制作したことも公式サイトで語られています。WANIMA公式
つまり、曲の出発点は若者の汗や青春を描くCMソングでした。
しかし、制作の途中で熊本地震が起こります。
レコーディング前日に起きた熊本地震
KENTAは2016年のインタビューで、「ともに」の歌詞がレコーディング当日まで完成していなかったこと、そしてその前日に熊本地震が発生したことを明かしています。
本当は熊本へ飛んで帰りたかった。しかし、そのとき自分たちにできるのは、目の前のレコーディングをやり遂げ、音楽を届けることだと考えた。
そして、インタビューで話題にされた終盤の一節は、そのとき生まれたものだったとKENTA自身が説明しています。激ロック
ここを知ることで、「ともに」の前向きさに独特の重みがある理由が見えてきます。
この歌は、安全な場所から「頑張れ」と呼びかけるだけの応援歌ではありません。
自分たち自身も不安を抱え、すぐにはどうすることもできない現実の中で、それでも今できることを選ぼうとする歌なのです。
歌詞の意味① 「ともに」は無理に前向きになれとは歌っていない
「ともに」の特徴は、未来を楽観していないことです。
過去にはつらい出来事がある。未来には今より大きな不安が待っているかもしれない。人は泣き、迷い、ときには壊れそうになる。
そうした弱さを消してから前へ進めとは言っていません。
むしろ、
「不安を抱えた自分のまま、それでも次の一歩を選ぶ」
という考え方が歌全体を貫いています。
ここが、単純な「頑張れば夢は叶う」という応援歌との大きな違いでしょう。
歌詞の意味② 「心踊る方」とは何を意味する?
この曲を象徴する言葉のひとつが「心踊る方」です。
興味深いのは、具体的なゴールが示されていないこと。
成功しろ、勝て、夢を叶えろ、とは限定していません。
最後に進む方向を決める基準として置かれているのは、自分自身の心です。
だからこの曲は、部活動にも、受験にも、仕事にも、恋愛にも、人生の再出発にも重ねられる。
「ともに」が特定の状況を超えて長く聴かれる理由のひとつは、この余白にあるのではないでしょうか。
歌詞の意味③ なぜタイトルは「ともに」なのか
さらに重要なのが、この歌が一方的な「応援する人/応援される人」という関係になっていない点です。
KENTAは同じインタビューで、ツアーを通して、本来なら自分たちがお客さんを励ます側だと思っていたのに、実際には自分たちの方がファンから励まされていることに気づいたと話しています。
そこから「みんなと歌える曲を作りたい」という思いにつながっていきました。激ロック
これこそ、タイトルが「君へ」でも「頑張れ」でもなく、「ともに」である理由を考える大きな手掛かりでしょう。
WANIMAが聴き手を引っ張っていくのではない。
歌う側も、聴く側も、それぞれ悩みを抱えている。それでも互いの存在によって前へ進んでいく。
「励ます歌」というより、「励まし合う歌」なのです。
「ともに」は卒業ソングなのか?
歌詞には別れや、過去に一緒に過ごした日々を思い返す場面があります。
そのため、卒業式や友人との別れを重ねて聴くことは十分可能です。
ただし、「この歌の背景は卒業式である」と断定できる公式情報は確認できません。
むしろ確認できる制作背景は、
「青春・部活・汗」をテーマにしたCMソングとして制作されたこと、そして制作中に熊本地震が起きたことです。
したがって、「卒業式について書いた歌」と限定するよりも、「大切な誰かと同じ時間を過ごし、やがて別々の道を進む人間関係」と捉えた方が歌全体には自然に当てはまります。
卒業は、その普遍的な物語を重ねられる場面のひとつなのでしょう。
熊本地震によって「応援歌」の意味が変わった
制作背景を知ったうえで特に重く響くのが、終盤で「命さえあれば」と生を強く肯定する部分です。
ただし、「ともに」の全編を熊本地震だけについて歌った曲だと解釈する必要もありません。
もともとは青春をテーマに制作されていた楽曲に、突然現実として起こった震災が入り込んだ。
だからこそ、
青春
→別れ
→後悔
→不安
→感謝
→生きること
→それでも進むこと
へと、曲の射程が広がっていったように感じられます。
軽快な応援歌として始まった曲が、制作途中で「生きることそのもの」を肯定する歌へと深まった――。
これが「ともに」の最大の魅力ではないでしょうか。
熊本復興ドラマの主題歌にもなった「ともに」
その意味は、後に故郷・熊本へと戻っていきます。
2017年には熊本県とWANIMAによる復興ドラマ制作プロジェクト「ともに すすむ くまもと」の主題歌に「ともに」が決定しました。
WANIMA公式でKENTAは、歌詞を制作していた時期に熊本で地震が起こり、現地の仲間たちと状況をやり取りしていたことを改めて明かしています。WANIMA公式
熊本県側も、「ともに」が熊本地震の翌日にレコーディングされた楽曲であることを説明しています。熊本県
最初から復興ソングとして企画されたわけではない。
それでも、制作時に故郷への思いが刻み込まれ、のちに実際の復興プロジェクトへ結びついた。
この経緯そのものが、「ともに」というタイトルを象徴しているようにも思えます。
サウンドにも表れている「誰かとともに」という思想
歌詞だけでなく、サウンドにも注目です。
制作時にはアコースティックギターを強めることで曲に柔らかさを持たせ、パンクを普段聴かない人にも届きやすい音を意識したことがメンバーのインタビューで語られています。
一方で、リズムにはWANIMAらしい力強さを残した。
つまり音楽的にも、
「激しさは失わない。でも、できるだけ多くの人に届けたい」
というバランスが作られています。激ロック
だからこそ「ともに」は、ライブハウスのロックファンだけに閉じた曲ではなく、学校やスポーツ、人生の節目など、多くの場面で響く曲になったのでしょう。
「ともに」が伝えている本当のメッセージ
「ともに」は、「何があっても笑って頑張ろう」というだけの歌ではありません。
怖くてもいい。
迷ってもいい。
泣いてもいい。
過去を後悔することがあってもいい。
それでも生きている限り、自分自身が選んだ方向へもう一度進める。
そして、その道を完全に一人で歩いているわけではない。
WANIMA自身がファンから励まされたように、人は誰かを支えながら、同時に誰かから支えられています。
だから「ともに」は「君を応援する歌」ではなく、
「不安を抱えた僕らが、それでも一緒に生きていく歌」
なのだと思います。
熊本地震という制作時の現実まで知ったとき、その言葉は単なる理想論ではなくなります。
そこに、この曲が今なお強く胸を打つ理由があるのでしょう。
よくある質問
WANIMA「ともに」は熊本地震について歌った曲?
最初から熊本地震のために制作された曲ではありません。8×4のCM曲として制作が始まり、そのレコーディング前日に熊本地震が発生。KENTAによれば、その経験から歌詞の一節が生まれました。
「ともに」は卒業ソング?
卒業に重ねて解釈できる歌詞ですが、卒業式を背景に作られたという公式情報は確認できません。「卒業限定の歌」ではなく、別れや人生の分岐点全般に重ねられる楽曲と考えるのが自然です。
「ともに」は何のCMソング?
ニベア花王「8×4 ボディフレッシュ」のCMソングとして書き下ろされました。WANIMA公式
「ともに」はいつ発売された?
2016年8月3日発売のWANIMA『JUICE UP!!』に収録されています。PIZZA OF DEATH RECORDS


