WANIMA「アゲイン」歌詞の意味を考察|「挑戦」と「失敗」が同じ回数になる理由

WANIMA「アゲイン」は、「失敗しても、もう一度頑張ろう」という応援歌。

そう説明することはできます。

しかし歌詞を細かく追っていくと、それだけではないことが見えてきます。

前半で問われるのは「挑戦」、後半では「失敗」。さらに、うまくいかなかった一日の原因も「誰か」から「僕」へと変化します。

つまりこの曲が描いているのは、過去をなかったことにしてやり直すことではありません。

他人に傷つけられた過去も、自分自身が間違えた過去も引き受けたうえで、もう一度始めること。

タイトルの「アゲイン」には、そんな意味が込められているのではないでしょうか。

そしてこの読み方は、KENTA本人が語った制作背景や、故郷・天草で撮影されたMVとも不思議なほど重なります。

WANIMA「アゲイン」とは?発売日・ドラマ主題歌など基本情報

「アゲイン」はKENTAが作詞・作曲、WANIMAが編曲を手がけた楽曲です。歌ネット

2019年2月1日に先行配信され、3月6日発売の4thシングル『Good Job!!』の1曲目に収録されました。WANIMA公式

さらに2019年10月23日発売のメジャー2ndアルバム『COMINATCHA!!』にも14曲目として収録されています。WANIMA公式

そして重要なのが、2019年放送のTBS系金曜ドラマ『メゾン・ド・ポリス』の主題歌だったことです。

TBSは当時、「アゲイン」をドラマのための書き下ろし曲として発表しています。TBS公式

ただし、ここには興味深い制作背景があります。

「アゲイン」の原点は、ドラマ主題歌の依頼より前にあった

TBSではドラマのための書き下ろし曲として紹介されていますが、KENTAは2019年のインタビューで、曲の根底にある衝動自体は主題歌の話をもらう前からあったと明かしています。

当時のWANIMAは、『Everybody!!』のツアーでメットライフドーム2日間公演まで成功させていました。

普通に考えれば「夢を叶えた側」です。

ところがKENTAの中に生まれたのは、達成感だけではありませんでした。

もっと多くの人と出会いたい。

そのためには次に何をすればいいのか。

まだ終われない。

そんな感情が「アゲイン」の出発点になったと語っています。CINRA・WANIMAインタビュー

ここがこの曲を読み解くうえで非常に重要です。

「アゲイン」は、何かに失敗した人だけの再挑戦ソングではない。

成功したとしても、人生に「もう十分だ」と思えない瞬間がある。

そこから再び歩き始める歌なのです。

冒頭にいるのは「若者」ではなく、疲れた人

歌詞の冒頭には、懐かしさとともに、疲れた顔や変化していく身体が描かれています。

これは一般的な青春応援歌とは少し違います。

何も知らない若者が「さあ挑戦しよう」と走り出すのではない。

すでにいろいろな経験をしている。

疲れている。

時間も経っている。

それでも身体のどこかが、もう一度動きたいと訴えている。

つまり「アゲイン」が対象にしているのは、ゼロから始める人ではありません。

一度歩いて、疲れて、止まってしまった人です。

「再出発」と「最初の出発」は似ているようで違います。

再出発する人には、すでに過去があります。

この曲は、その過去を消そうとしません。

閉じた心を動かすのは、大きな成功ではなく小さな「きっかけ」

続いて歌詞には、まだ十分に開いていない蕾のイメージが登場します。

注目したいのは、それが完成した花ではないことです。

完璧でもない。

頼もしい存在でもない。

それでも閉じてしまった心を動かす「きっかけ」になる。

さらに、それまで何度も見ていた普通の景色が、忘れられない場所へ変化していきます。

ここから見えてくるのは、人生を変えるのは必ずしも劇的な出来事ではないということです。

同じ町。

同じ人。

同じ日常。

それまで価値に気付かなかったものが、ある瞬間から特別な意味を持ち始める。

後ほど触れる「アゲイン」のMVが故郷・天草で撮影されていることを考えると、この構造はより印象的に響きます。

過去を消して再スタートする歌ではない

「アゲイン」の中では、自分が知りたくなかった現実まで知ってしまったことが描かれます。

さらに善悪の両方を抱え込み、閉じ込めていた記憶を再び動かしていく。

ここが重要です。

普通、「やり直す」という言葉にはリセットのイメージがあります。

失敗する。

リセットする。

もう一度最初から始める。

しかし「アゲイン」は違う。

過去に知ってしまったことも、傷ついたことも、間違ったことも消さない。

それらを抱えたまま進もうとします。

だからこの曲における「再挑戦」は、

過去を捨てることではなく、過去をもう一度エネルギーに変えること

なのではないでしょうか。

最大のポイント|「挑戦」と「失敗」は本当に別のものなのか

歌詞の前半と後半には、よく似た場所に対照的な二つの言葉が置かれています。

「挑戦」と「失敗」です。

ここが「アゲイン」という曲の核心だと考えます。

ある出来事を、挑戦だったと呼ぶこともできる。

同じ出来事を、失敗だったと呼ぶこともできる。

では、その違いは何でしょうか。

成功したかどうかだけではないのかもしれません。

何度も挑戦すれば、同じだけ失敗が増えることがあります。

逆に言えば、失敗の数が多い人ほど、それだけ何かを試してきた可能性もある。

「何度失敗したか」と「何度挑戦したか」は、同じ人生を別の角度から数えているだけなのかもしれない。

だからタイトルは「リセット」ではなく「アゲイン」なのでしょう。

ゼロへ戻るのではない。

一回目も二回目も失敗も抱えたまま、次の一回を始める。

そこにこの曲の力があります。

「誰か」のせいだった過去から「僕」の過去へ

もう一つ、非常に重要なのが主語の変化です。

前半では、うまくいかなかった一日について、その原因が自分以外の存在に置かれています。

しかし後半では、自分自身が台無しにしてしまった一日へ視点が移る。

これは大きな変化です。

人生には、自分ではどうすることもできない傷があります。

誰かに傷つけられることもある。

理不尽な出来事もある。

しかし同時に、自分の選択によって誰かや自分自身を傷つけてしまうこともある。

「アゲイン」は、その両方を認めています。

だから単純なポジティブソングではないのです。

世界が悪かった。

誰かが悪かった。

そう言い続けるだけでは、次へ行けない。

かといって、すべて自分が悪かったと責め続ける歌でもありません。

他人によってできた傷と、自分自身が作った後悔。その両方を抱えて、それでも次へ進む。

それが「アゲイン」の再出発です。

「優しさ」「空しさ」「正しさ」だけでは前に進めない

曲の中では、優しさだけでは傷を消せず、空しさだけでも何かを変えることはできず、最後には「正しさ」だけでは見えないものがあることが示されます。

ここにも一貫した考え方があります。

ただ慰められるだけでもない。

諦めるだけでもない。

正論を言われれば解決するわけでもない。

人間の感情は、そんなに簡単ではありません。

では何が必要なのか。

この曲が最後まで繰り返すのは、理屈ではなく「もう一度動く」ということです。

答えが出たから始めるのではない。

不安が消えたから始めるのでもない。

まだ迷っていても、とにかく次の一歩を選ぶ。

KENTAがインタビューで語っている「難しいことを抜きにして届けたい」という制作姿勢とも重なります。CINRA

最後に変わるのは「身体」ではなく、自分の見方

曲の終盤では暗い夜から光へと風景が変わっていきます。

しかし興味深いのは、主人公自身が若返ったり、疲れが完全になくなったりするわけではないことです。

疲れた自分はそのままです。

過去も消えていません。

それでも、身体の中にはまだ前へ進んできた記憶が残っている。

つまり再生とは「昔の元気な自分へ戻ること」ではない。

今の自分のまま、まだ動けることに気付くことなのではないでしょうか。

だから「アゲイン」は年齢を問わず響きます。

やり直すのに、若かった頃へ戻る必要はない。

今日の自分から、もう一度始めればいい。

そんなメッセージが浮かび上がります。

『メゾン・ド・ポリス』と「アゲイン」が重なる理由

『メゾン・ド・ポリス』は、高畑充希演じる新人刑事・牧野ひよりが、退職警察官たちの暮らすシェアハウスを訪れ、彼らと事件を解決していくドラマです。TBS公式

新人のひよりがいる一方、共に事件へ挑むのは一度警察組織を離れた人たち。

そこにも「もう一度」があります。

しかもTBSの橋本芙美プロデューサーは、主題歌発表時に「アゲイン」がドラマの“まだ終われない”というテーマを捉えていることを評価しています。TBS公式

ただし、先ほど触れた通り、KENTAの中にこの曲の核となる感情が生まれたのは主題歌の依頼より前でした。

だからこそドラマ専用の説明ソングにならず、もっと広い人生の歌として成立したのでしょう。

MVで故郷・天草へ戻った本当の意味

「アゲイン」のMVは、KENTAとKO-SHINが生まれ育った熊本・天草で撮影されました。

特に重要なのが「パチンコ大和」です。

KENTAによれば、ここは元パチンコ店の跡地で、高校時代に自分たちで内装やステージを作り、バンド練習やライブをしていた場所。

「アゲイン」のMVでは、その場所を再びスタジオとして作り直す様子が撮影されています。WANIMA公式

これは、この曲を象徴する映像だと思います。

昔の場所へ戻って、ただ懐かしむのではない。

かつて使っていた場所を、現在の自分たちでもう一度作る。

過去へ戻るのではなく、

過去を材料にして「今」を作り直している。

これこそ「アゲイン」なのではないでしょうか。

ドーム公演まで成功したWANIMAが、高校時代の原点へ戻る。

しかし高校生に戻ろうとしているわけではありません。

これまで積み重ねてきたすべてを持ったまま、原点からもう一度始める。

歌詞とMVが最も美しく重なる部分です。

まとめ|「アゲイン」は失敗を消す歌ではない

WANIMA「アゲイン」を単なる再挑戦の応援歌として聴くと、「もう一度頑張ろう」という曲に聞こえます。

しかし歌詞を追っていくと、もっと複雑なものが見えてきます。

挑戦した過去。

失敗した過去。

誰かに傷つけられた日。

自分自身が間違えた日。

知りたくなかった現実。

忘れようとして閉じ込めていた記憶。

そのどれも消さない。

そして、それらを抱えた現在の自分でもう一度始める。

「アゲイン」とは過去のやり直しではなく、過去を引き受けた人間が選ぶ“次の一回”なのだと思います。

だから何度失敗したとしても、その数は同時に、何度挑戦したかという記録にもなる。

まだ終わりではない。

何度目であっても、次の一回はここから始められる。

「アゲイン」が長く人を励まし続ける理由は、そんな現実的な希望を歌っているからではないでしょうか。

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