くるり「There is (always light)」は、アルバム『THE PIER』のラストを飾る曲であり、映画『まほろ駅前狂騒曲』の主題歌としても知られている一曲です。
静かに始まりながらも、聴き終わる頃には不思議な高揚感と「生きていかなきゃ」という小さな決意が胸に残る――そんな余韻の深さが、多くのリスナーを惹きつけています。
この記事では、「くるり there is 歌詞 意味」と検索してたどり着いた方に向けて、
- 曲の背景や物語性
- 映画『まほろ駅前狂騒曲』との関係
- 歌詞に込められた“喪失”と“希望”のメッセージ
を丁寧に掘り下げていきます。
- くるり「There is (always light)」とは?曲の基本情報とリリース背景
- 映画『まほろ駅前狂騒曲』主題歌としての「There is」の役割
- アルバム『THE PIER』ラスト曲としての位置づけと物語性
- 「There is (always light)」歌詞の意味を一言でまとめると?――喪失と希望のあいだのラブソング
- 冒頭の「さよなら」に込められた別れと死別のニュアンスを読み解く
- サビ「There is always light behind the clouds」が示す“雲の向こうの光”とは何か
- 「Love the life you live, Live the life you love」――英語フレーズが伝える生き方のメッセージ
- 賛美歌の引用と英語詞から考える、現代を生きる「僕ら」の空虚さと救い
- MVに描かれる“雨と光”のコントラストが象徴するもの
- まとめ:くるり「There is (always light)」が教えてくれる、悲しみのあとに続く日々の歩き方
くるり「There is (always light)」とは?曲の基本情報とリリース背景
「There is (always light)」は、2014年9月17日にリリースされたアルバム『THE PIER』に収録された楽曲で、作詞・作曲はいずれも岸田繁。
アルバムの中ではラストを飾る1曲であり、くるりのキャリアの中でも“希望”というテーマをもっともストレートな言葉で歌い上げたナンバーのひとつとされています。
同曲は、三浦しをん原作・大森立嗣監督による映画『まほろ駅前狂騒曲』の主題歌として書き下ろされました。前作映画『まほろ駅前多田便利軒』でもくるりが主題歌を担当しており、シリーズを通して作品世界と深く結びついたバンドと言えます。
中速テンポのロックバラードで、ギターとバンドサウンドはあくまでシンプル。その分、英語と日本語が交錯する歌詞と、岸田の生々しいボーカルが前面に押し出された構成になっています。
映画『まほろ駅前狂騒曲』主題歌としての「There is」の役割
『まほろ駅前狂騒曲』は、架空の地方都市“まほろ”を舞台に、瑛太演じる多田と松田龍平演じる行天が、便利屋としてさまざまな依頼に巻き込まれていく群像劇です。日常のちょっとした出来事から、人の生死に関わる問題まで、笑いと痛みが同居する独特のトーンが魅力のシリーズ。
「There is (always light)」は、そんな映画のエンドロールを静かに、しかし力強く締めくくる役割を担っています。歌の中で描かれるのは、都会の雑踏の中を少し急ぎ足で歩く「僕」と、すでにこの世にはいないかもしれない「あなた」。ビルが林立する街、駅前のバルコニー、そして“少し先の未来”という言葉が、まほろの街で生きる人々の姿と重なっていきます。
映画の登場人物たちは、それぞれに“居場所のなさ”を抱えながらも、ときに不器用に、しかし確かに他者とつながっていきます。この物語のラストで「雲の向こうにはいつも光がある」と歌うことは、彼らの行く末をそっと肯定するラストメッセージとして機能している、と解釈できるでしょう。
アルバム『THE PIER』ラスト曲としての位置づけと物語性
『THE PIER』は、レーベル公式の紹介でも「時代と世界を自在に行き交う、音と言葉の冒険の旅」と表現されている通り、さまざまな国や都市を想起させる楽曲が並ぶ“旅のアルバム”です。
海を思わせる楽曲や、エスニックなビート、郷愁を誘うバラードなど、多彩なサウンドを巡る50分強の“航海”の終点に置かれているのが「There is (always light)」。音楽ライターのレビューでも、「航海から桟橋へ戻ってきて行われる最後のセレモニーのようだ」と評されており、アルバム全体を締めくくる儀式的な一曲として位置づけられています。
歌詞の中にも、「少し先の未来」「生きなければ」といった言葉が登場し、旅の果てに、改めて“これから生きていく日常”へと立ち戻る瞬間が描かれます。単体で聴いても美しいですが、アルバム1枚を通して聴くと、そのカタルシスがより鮮明に浮かび上がってくる構造になっているのです。
「There is (always light)」歌詞の意味を一言でまとめると?――喪失と希望のあいだのラブソング
この曲の歌詞を一言でまとめるなら、
「大切な誰かを失った後も、その人の残したものと共に生きていく決意を描いたラブソング」
と言えるでしょう。
歌詞では、別れの痛みや喪失感がはっきりと歌われます。一方でサビでは「雲の向こうにはいつも光がある」という英語のフレーズと、「生きなければ」「また会う日まで」というニュアンスの日本語が繰り返されます。
音楽メディアの解説では、この曲について「賛美歌と対比させながら、現代に生きる僕らの空虚さと、それでもなお光を求める心情を描いた楽曲」と評されており、祝祭と虚無、希望と喪失が複雑に絡み合う構造が指摘されています。
冒頭の「さよなら」に込められた別れと死別のニュアンスを読み解く
歌は、いきなり「さよなら」という言葉から始まります。その直後に続くフレーズでは、「別れはつらいものだけれど、世の中は別れで溢れている」といったニュアンスのことが語られ、誰かが“海鳴りのする方へ”と日常を手放していく光景が描かれます。
ここでの「さよなら」は、単なる恋愛の終わりというより“この世から旅立つこと”=死別をも連想させる書き方です。続くパートでは「手紙を出せば届くような時代に生まれた僕ら」という一節があり、テクノロジーの発達によって、物理的な距離は縮まったはずなのに、それでも埋まらない“決定的な別れ”があることが暗示されます。
さらに、「あなたが残した音楽や台詞が、今も新しい景色や困難な時代に響いている」という旨が歌われます。ここから、この「あなた」は、すでにこの世にはいないアーティスト、あるいは身近な誰かである可能性が高いと読み取ることができます。実際、一部のレビューでは「くるりと親交のあった亡くなったミュージシャンを思って書かれた曲ではないか」とする見方も紹介されています。
曲全体に漂うのは、“喪失の悲しみ”そのものよりも、「あなたが残してくれたものに支えられながら生きていく」という静かな決意。冒頭の「さよなら」は、その決意へと至るための第一歩として置かれているように感じられます。
サビ「There is always light behind the clouds」が示す“雲の向こうの光”とは何か
サビで繰り返されるフレーズ「There is always light behind the clouds(雲の向こうには、いつも光がある)」は、英語圏でもよく知られたことわざ的な言い回しです。
この言葉に続く日本語では、「明日になれば晴れるさ」と未来の天気に例えながら、目の前のつらい現実が永遠に続くわけではないことを、半ば自分に言い聞かせるように歌っています。ここにあるのは、根拠のないポジティブシンキングではなく、「今は雨だけど、いつかは止む」という、現実を認めた上でのささやかな希望です。
さらに後半では、「空に舞う grief & loss(悲しみと喪失)」という言葉が登場します。悲しみや喪失が空中を漂うように世界を覆っている──そんな重苦しいイメージの直後に、再び「雲の向こうの光」が歌われることで、“重さを抱えたまま、それでも光を見失わない”というスタンスがより強調されています。
「Love the life you live, Live the life you love」――英語フレーズが伝える生き方のメッセージ
サビでは、「Love the life you live」「Live the life you love」という、人生訓のような英語フレーズも印象的に繰り返されます。直訳すれば「自分が生きている人生を愛しなさい」「自分が愛する人生を生きなさい」といった意味合いになりますが、こうして並べることで“与えられた人生を受け入れつつ、自分で選び取る人生を生きる”という二重のニュアンスが生まれています。
このフレーズは、ポスターやTシャツにもよく使われる世界的に有名な言葉ですが、「There is (always light)」の中では、決して安っぽいスローガンとしては扱われていません。その前後に、「死ぬまで」「また会う日まで」といったフレーズが置かれることで、“人生を愛そうとすること”が、有限性を意識した切実な選択であることが強調されます。
「あなた」が残してくれた音楽と台詞に背中を押されながら、喪失の痛みを抱えたまま、残された自分の人生をどう愛し、どう生きるのか。その問いへの暫定的な答えとして、この英語フレーズがサビに刻み込まれているように思えます。
賛美歌の引用と英語詞から考える、現代を生きる「僕ら」の空虚さと救い
歌詞の中には、「Joy to the world」というフレーズも登場します。これは言うまでもなく、有名なクリスマス賛美歌のタイトル。世界の救いと喜びを高らかに歌う宗教曲のフレーズを、そのままポンと放り込むことで、歌の世界に“祝祭”の気配が立ち上がります。
一方で、この曲における「僕」は、そこまで素直に喜びを享受できていないようにも見えます。街はビルで溢れ、人々は忙しなく行き交い、情報は簡単に届く――そんな現代の風景の中で、「僕」はむしろ空虚さを強く感じている。音楽メディアの解説でも、「賛美歌的な“Joy to the world”と、現代の虚無感が対比されている」と評されています。
だからこそ、サビで何度も繰り返される「雲の向こうの光」や「人生を愛して生きる」という言葉には、“空っぽな毎日をどうにか意味づけしようとする現代人の祈り”が込められているように感じられます。宗教的な救いをそのまま歌うのではなく、賛美歌の言葉を借りつつ、あくまで“今を生きる僕ら”の視点から希望を歌っているところに、くるりらしいバランス感覚が光っています。
MVに描かれる“雨と光”のコントラストが象徴するもの
「There is (always light)」のMVは、『Liberty & Gravity』と同じく田向潤が監督を務め、黒を基調とした映像の中で、メンバーの演奏シーンとCGによる雨や光が印象的に描かれています。
前作MVのポップでカラフルな世界観とは対照的に、「There is (always light)」では暗い空間に雨が降り注ぎ、ときおり強い光が差し込む、モノクロームに近い画作りが特徴です。演奏するメンバーの姿も、派手な演出ではなく、淡々と、しかし真剣に音を鳴らしている様子が切り取られています。
雨は、言うまでもなく悲しみや喪失のメタファー。一方で、その雨粒を貫くように差し込む光は、サビで歌われる「雲の向こうの光」と重なります。視覚的にも“悲しみの中に射す光”を描くことで、歌詞で歌われているテーマがより立体的に伝わってくる構成と言えるでしょう。
まとめ:くるり「There is (always light)」が教えてくれる、悲しみのあとに続く日々の歩き方
ここまで見てきたように、くるり「There is (always light)」は、
- 映画『まほろ駅前狂騒曲』の主題歌として、人知れず生きる人々の物語をやさしく包み込む曲であり
- アルバム『THE PIER』のラストを飾る、“旅の終わりと日常への帰還”を象徴する曲であり
- 喪失と死別を受け止めながら、それでも前を向いて生きていこうとする決意を歌ったラブソング
でもあります。
別れの痛みを「なかったこと」にせず、悲しみや空虚さも抱えたまま、「雲の向こうの光」を信じて生きていく――。それが、この曲が提示している“悲しみのあとに続く日々の歩き方”なのだと思います。
「くるり there is 歌詞 意味」と検索してこの曲にたどり着いたあなたが、もし今、何かを失った直後のような気持ちでいるなら。この曲の言葉とサウンドが、ほんの少しだけでも、あなたの明日を照らす光になりますように。

