「ロマンス」のイントロ・ギターリフが伝える“シンプルで力強いサウンド”
『ロマンス』は、イントロの一音からリスナーの心をつかむ楽曲です。シューゲイザーやオルタナの影響を感じさせる厚いギターサウンドと、シンプルながらエモーショナルな構成が特徴です。ドラムとベースはミニマルに抑えられており、その分ギターの存在感が際立っています。
特に冒頭のギターリフは、「これから物語が始まる」という予感を抱かせるような、疾走感と切なさを含んだ音色です。無機質でありながらも、どこか“情熱”を感じさせるこのサウンドが、歌詞の内面世界と絶妙にマッチしています。
サウンド面からも「ロマンス」は、“美しいけれど不安定”というテーマを浮かび上がらせています。
歌詞に隠された物語:「女の子はいつだって無敵だよ」の裏にある狂気とは
サビで繰り返される「女の子はいつだって無敵だよ」というフレーズ。一見するとポジティブなメッセージに思えますが、その繰り返しや歌い方、文脈の中で感じられるのは“自己暗示”や“願望”のような感情です。
「誰にも必要とされていない」「この街では私しか私を知らない」など、自分の存在意義を見失いかけた主人公が、“無敵”という言葉にしがみつくようにして自分を支えているようにも感じられます。
このような感情は、現代を生きる多くの若者、とくに女性が抱える孤独や不安とリンクします。一歩間違えれば“狂気”とも取れるほど強い信念が込められたこの言葉が、リスナーの胸を打つ理由です。
塩塚モエカが語る制作背景:自信と不安、ポップへの挑戦
ボーカル・ギターの塩塚モエカはインタビューの中で、「ポップな曲を意識して作った」と語っています。しかしその裏では、「売れる曲」への不安や、自分たちらしさを失わないかという葛藤もあったと明かしています。
『ロマンス』は、メジャーEP『きらめき』のリード曲という位置づけの中で、「羊文学らしさ」と「大衆性」のバランスに挑戦した楽曲でもあります。歌詞の中の自己肯定と否定の間を揺れ動くような表現には、塩塚自身の心の動きが投影されているとも言えます。
つまり『ロマンス』は、楽曲そのものが「自己表現」であり、「自己確立」の試みでもあるのです。
EP『きらめき』の中での位置づけ:「ロマンス」と他楽曲とのつながり
『ロマンス』は、EP『きらめき』の1曲目に配置されており、作品全体の導入としての役割を担っています。その後に続く「マヨイガ」や「光るとき」とのテーマ的連続性が見られる点にも注目です。
EP全体を通じて「光」「揺らぎ」「自己と世界との距離感」といったキーワードが浮かび上がってきますが、『ロマンス』はその最初の問いかけとして、「本当の自分とは?」「誰かに必要とされたいという気持ちはどこから来るのか?」といった問題を提示しています。
そのため、『ロマンス』は単独で聴いても深い意味がありますが、EP全体を通じて鑑賞することでより多層的な解釈が可能になる作品でもあります。
ファンのリアルな声:ライブ・MV・日常で体感する“ロマンス”のパワー
SNSやレビューサイトでは、ファンによる多くの感想が投稿されています。「この曲を聴いて涙が出た」「ライブでの熱量がすごかった」といった声が多数見られ、リスナーの心を大きく揺さぶる力があることが分かります。
また、MVの中で描かれる都市の孤独や光の演出も、楽曲の世界観をより強く印象づけています。日常の中で何気なく『ロマンス』を流すことで、「私も無敵かもしれない」と感じられる瞬間を得たというリスナーの声も印象的です。
こうした共感や感情の共有が、羊文学というバンドの魅力をさらに広げているのです。
🎯 まとめ
『ロマンス』は、羊文学の音楽性とメッセージ性が凝縮された楽曲であり、サウンド・歌詞・世界観のすべてが緻密に設計された表現作品です。聴く人によって意味が変化し、繰り返し聴くことで新たな発見がある――そんな“深み”を持った一曲だと言えるでしょう。