【歌詞考察】ずっと真夜中でいいのに。「暗く黒く」に込められた意味と“赦し”の物語

「映画『さんかく窓の外側は夜』との深いリンクを読み解く」

『暗く黒く』は、映画『さんかく窓の外側は夜』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。この映画は霊が視える青年・三角と、除霊師・冷川がバディを組んで事件を追うオカルト・ミステリーでありながら、人間の恐怖や孤独、救済を描いた物語でもあります。

歌詞の中には、「護っていたい」「赦されていく」など、傷を抱えた登場人物たちが、互いに支え合うことで癒されていく姿が投影されています。また「君の呪いも 僕が受け止めてやる」というフレーズは、三角が冷川の抱える過去や力を理解しようとする姿勢とも重なります。

映画の物語と共鳴するように、『暗く黒く』は単なる主題歌以上に、物語の心理的主軸を音楽で表現しているのです。


「“君”との出会いがもたらした心境の変化」

この曲の大きなテーマの一つは、孤独の中で生きてきた“僕”が、“君”との出会いによって心を開いていくプロセスにあります。

「護っていたい」という言葉は、従来のずっと真夜中でいいのに。の作品群と比べても珍しく、他者への想いが強調されたフレーズです。また「赦されていく」や「未読にした美学」など、自分を抑えつけてきた価値観から解き放たれる過程が描かれています。

“僕”の中には過去の後悔や、誰にも理解されなかった苦しみがあるのでしょう。“君”との出会いが、それらを受け入れてくれる存在であり、世界の色を変えていく存在となるのです。


「“暗く黒く塗り潰す”というメタファーの意味とは?」

タイトルでもあり、歌詞の中でも繰り返される「暗く黒く塗り潰す」というフレーズは、非常に象徴的です。

この表現には、自分自身の感情や過去を抑え込むニュアンスと同時に、他者からの呪いや悪意を受け止め、それすらも引き受けて生きていくという覚悟が読み取れます。つまり「塗り潰す」のは逃避ではなく、自己肯定へとつながる再構築の行為とも言えるでしょう。

また、黒という色が象徴する「すべてを吸収する性質」も含めて考えると、悲しみや怒り、孤独といった負の感情を一度すべて抱きしめることが、前に進むための第一歩として表現されているのかもしれません。


「抑圧された自我と“美学”──イントロから伝わる葛藤」

冒頭の「未読にした美学」や「黙っていた」というフレーズから始まるこの曲は、“僕”が自己を抑え込みながら生きてきた様子を象徴的に描いています。

“未読”というワードは情報や感情を意図的に遮断してきた証。“美学”とは、その態度を美徳と感じていたという皮肉でもあります。しかしその静けさは内なる混沌の隠れ蓑であり、真に心を救ってくれるものではありません。

サビではそれを破壊しようとする決意が描かれ、「護っていたい」という新たな価値が浮かび上がります。感情を抑え込んでいた“僕”が、はじめて誰かを想い、赦し、愛そうとする瞬間なのです。


「MVとの融合:象徴的ビジュアルが示すメッセージ」

『暗く黒く』のミュージックビデオには、歌詞と呼応する多くの象徴が散りばめられています。例えば、三角形の形は映画タイトルとも連動しつつ、人間関係の不安定さやバランスを暗示。また、仮面をつけた人物、儀式的な構成、無機質な機械や都市なども登場し、現代社会の閉塞感や無感情さを表現していると考えられます。

さらに、少女とロボットという対比的なキャラクターも登場し、「感情と無感情」「人間と機械」というテーマが浮き彫りになります。これらの映像的メッセージは、「暗く黒く」という歌詞が内包する感情の多層性と深くリンクしているのです。

映像と音楽、言葉が複雑に絡み合うことで、この作品は視覚・聴覚の両面から鑑賞者に強い印象を残します。


🟨 総まとめ

『暗く黒く』は、“暗さ”や“孤独”を単なるネガティブな感情として描くのではなく、それすらも受け入れ、赦し、再生する力を持つものとして捉えています。映画との連動やMVの象徴性も含め、非常に奥行きのある一曲です。