レミオロメン『流星』歌詞の意味を深掘り解釈|夢・記憶・母の愛が交差する名曲の本質

「流星」と「シャトル」の対比に見る、夢と成功の儚さと永続性

レミオロメンの「流星」には、宇宙を連想させるワードが数多く登場しますが、その中でも特に印象的なのが「流星」と「シャトル」の対比です。

流星とは、夜空を一瞬で駆け抜けて消えていく光の筋。見る者を魅了する美しさを持ちながら、その姿は儚く、あっという間に消えてしまう存在です。一方で「シャトル」は、人工的な技術の結晶であり、宇宙へ到達するという大きな成功を象徴するものです。

この2つのモチーフは、夢を見る子供時代と、夢を叶えるために努力する大人の姿とを対比させているようにも受け取れます。流星は、純粋に空を見上げていた少年時代の心。シャトルは、その夢を現実に変えるために乗り越えていかなければならない現実の象徴。成功は「飛ぶ」ことができるかもしれないが、そこには喪失や孤独も伴う。その構造こそが「流星」という楽曲の核なのです。


冒頭の“ママ、あれは何なの? 飛行機よ”──幼少時の純粋さと記憶のすれ違い

「流星」の冒頭で歌われる「ママ、あれは何なの?」「飛行機よ」というやりとりは、非常にシンプルで素朴な会話です。しかしこのやりとりこそが、歌詞全体の深層に繋がる象徴的な場面だと考えられます。

少年は空に流れる光を見て、それが何かと尋ねます。彼の視点ではそれは「不思議な何か」、つまり「流星」かもしれません。ところが母は「飛行機よ」と即答します。この返答は、現実的で冷静な答えである一方で、どこか寂しさを感じさせます。母親の「飛行機よ」という答えには、大人としての無意識な「忘却」が表れているのかもしれません。

もしかすると、母もかつては「流星」を見上げて夢を描いた子供だった。しかし今では現実に押され、それを「飛行機」としてしか認識しなくなった。こうした親子の微妙なズレ、そして記憶の断絶が、冒頭から丁寧に描かれているのです。


「もう二度と逢えないもの」「Tシャツで走った夢」──夢見る心とその喪失

歌詞の中盤には、「もう二度と逢えないもの」「Tシャツで走った夢」といったフレーズが登場します。これらは、少年時代に抱いていた自由で無垢な夢、つまり「流星」のような純粋な希望を表しています。

「Tシャツで走った夢」は、季節感や身体感覚をともなう記憶として描かれ、聴く者に郷愁を呼び起こします。そして「もう二度と逢えないもの」という表現は、時間の不可逆性を強調します。かつての夢や気持ちは、いくら思い出しても完全には取り戻せないのです。

この部分では、夢を追いかけることの尊さと、それを失ってしまった喪失感とが交錯しています。それは単なるノスタルジーではなく、「なぜそれを失ったのか」「それを取り戻すことはできるのか」という問いかけでもあります。


「過ぎてゆく時」「記憶は色褪せても」──時間と記憶の流れの中で大人になる

時間の流れと記憶の変化も、「流星」の重要なテーマです。「過ぎてゆく時」「記憶は色褪せても」といったフレーズは、成長していく中で避けがたい変化を静かに示しています。

かつての夢や感情が「色褪せる」ことで、過去と現在との距離が生まれます。これは、現実を受け入れていく過程で誰しもが通る「大人になる」という変化を示しています。記憶は風化するものですが、それでも心のどこかで大切にされている。その「揺らぎ」こそが、歌詞全体に流れる感情の核であり、リスナーの共感を呼び起こす要素です。

また、「時間」は宇宙的なスケールともリンクし、流星のように一瞬の輝きをもつ存在として描かれています。人生の中で大切な瞬間は、ほんの一瞬のきらめきでしかないのかもしれません。


「笑っていて」──母の祈りか、自分への励ましか、二重構造に宿る愛

サビに繰り返される「笑っていて」という言葉には、深い愛と祈りが込められています。このフレーズは単純ながら、文脈によってさまざまな解釈が可能です。

一つは、母から子供へのメッセージ。自分がもうそばにいられなくても、どうか笑顔でいてほしいという母の無償の愛が表れています。もう一つは、過去の自分、あるいは失ったものに対する自分自身の願い。「悲しいこともあったけれど、どうか笑っていてくれ」と、自分自身に言い聞かせるようにも感じられます。

このように「笑っていて」は、送り手と受け手のどちらの視点からも解釈できる、二重構造をもったフレーズです。その多義性が、聴く人それぞれの人生経験に寄り添い、感情を引き出す力となっています。


総括:流星のように輝き、そして消える“記憶”と“愛”の歌

「レミオロメン」の「流星」は、一見すると幻想的で美しい歌詞ですが、その奥には、時間の経過、記憶の風化、夢の喪失、そしてそれでもなお続いていく愛が丁寧に織り込まれています。

誰にとっても「流星」のような一瞬のきらめきはあるもの。それを忘れず、抱きしめて生きていくことが、曲が伝えたいメッセージなのかもしれません。