【日曜日よりの使者/THE HIGH-LOWS】歌詞の意味を考察、解釈する。

およそ9年間の活動期間で8枚のオリジナルアルバムをリリースしたザ・ハイロウズ。

そんな豊富なキャリアの中でも屈指の人気、そして認知度を誇る「日曜日よりの使者」は彼らの代表曲と呼んでまず差し支えはないでしょう。

1995年発売の1stアルバムに収録され、当時は『ダウンタウンのごっつええ感じ』のエンディングテーマとして使用されましたが、その後も時を経て様々なテーマソングやCMソング等で使用され続けている普遍的な名曲です。

90年代に青春を過ごした者の中で、ザ・ブルーハーツとダウンタウンというジャンルの異なる2組に対して、特別な想いを抱く人は非常に多いはずです。

お笑いコンビ”スピードワゴン”の小沢一敬が、

「僕らの世代でダウンタウンとブルーハーツの影響受けてない人って絶対いないですよ。」

と発したのは有名なエピソードですが、私も大きく同意しますし、非常に的確な指摘だと感じます。

80年代から続いたバンドブームは、表現や承認欲求を持て余す若者の行き場としても、学歴を問わない成功の夢舞台としても、時代を象徴するユースカルチャーとして機能し続けていました。

ザ・ブルーハーツはそんな若者にとっての代弁者であり、羨望の対象でもありました。

そこに入れ替わるように台頭したのがダウンタウンでした。

NSCという芸人養成所の1期生としてキャリアをスタートした彼らは、20代中頃には全国ネットでも冠番組を持ち、それまでのお笑いのセオリーを塗り替える斬新なアプローチの数々で、若者を中心に”信者”と言われるほどのコアファンを集める事となります。

NSCをはじめとした芸人養成所という”王道ルート”が確立された事も大きいですが、いずれにせよダウンタウンの登場は、若者の夢の選択肢をバンドから芸人に書き換えた分岐点だったとさえ言えます。

その一つの証左として、当時若者だったお笑い芸人には(現在40代くらい)、元バンドマンだったり趣味でバンド活動を続ける人、バンド音楽好きが非常に多く、バンドとの天秤の末に芸人の道を選択した背景が伺い知れます。

そんな一つの世代の象徴的存在である両者は、共にリスペクトし合い、交流がある事も知られています。

それらのバックボーンを知るファンの間では、「日曜日よりの使者」について、この曲はダウンタウンや松本人志、もしくはいずれも日曜日にオンエアされていた「ごっつええ感じ」や「ガキの使いやあらへんで」の事を歌ったという考察がされています。

歌詞と共にみていきましょう。

このまま どこか遠く 連れてってくれないか 君は 君こそは 日曜日よりの使者

たとえば 世界中が どしゃ降りの雨だろうと ゲラゲラ 笑える 日曜日よりの使者

“日曜日よりの使者”に救いを求める中、求めた通りにゲラゲラと笑わせてくれ、どしゃ降りを忘れさせてくれたのだと解釈ができます。

きのうの夜に飲んだ グラスに飛び込んで 浮き輪を浮かべた 日曜日よりの使者

適当な嘘をついて その場を切り抜けて 誰一人 傷つけない 日曜日よりの使者

同様に、現実逃避の為の前日の深酒さえも救済してくれる”日曜日よりの使者”のヒーローぶりを伝えています。

この楽曲の中でも、特に詩的で美しい一節です。

流れ星が たどり着いたのは 悲しみが沈む 西の空

そして東から昇ってくるものを 迎えに行くんだろ 日曜日よりの使者

たとえばこの街が 僕を欲しがっても 今すぐ出かけよう 日曜日よりの使者

いくつかの解釈が可能な箇所ですが、悲しみやどしゃ降りといったネガティブな気持ちでその日が終わったとしても、明日になればまた、日曜日よりの使者は救いに行くのだろうし、”僕”のどしゃ降りがもし晴れたとしても、日曜日よりの使者と共にいる事を望んでいる。
おおよそそんな風に読み取れます。

なるほど、【日曜日よりの使者=ダウンタウンやその番組】と解釈すると、非常にしっくりと収まりますし、双方のファンとしてはこの上なく深イイ話です。笑

それに加えてザ・ブルーハーツ解散後、ヒロトは自殺を考えるほどに落ち込んでおり、そこで観たダウンタウンのテレビ番組に笑わせてもらい救われたという噂もありますが、その点については現時点ではっきりとしたソースはないようです。

仮に、ファンの間で語られるこれらの説が事実であるのならば(ダウンタウンを歌っているという点は確率が高い気がしますが)、非常に箱庭的で私的な歌詞だと言えます。

それを匂わせつつも、誰しもが自分の歌として解釈可能な歌詞に落とし込んでいる点は白眉です。

ある種”らしくない”ポップソング的な抽象度の高さを感じる一曲ですが、それによってキャリアの中でも特に広く知られる曲になったという事でしょう。

ただ、その”らしくない”理由は、打算ではなく、ヒロト流の照れ隠しによる結果だったようにも思えてなりません。