「味方」はどんな楽曲？リリース背景とバンドコンテキスト
「味方」は、My Hair is Badが2023年にリリースしたEP『love』の収録曲の一つであり、リスナーの間でも特に「心に沁みる」「やさしさに包まれる」と評価の高い楽曲です。このEPは、バンドにとって初めて“愛”というテーマを明示的に掲げた作品であり、リード曲「love」に象徴されるように、バンドの新たなフェーズを感じさせる構成になっています。
My Hair is Badといえば、どこか荒々しく、感情をそのままぶつけたような歌詞が特徴ですが、この「味方」はそれとは対照的に、非常に静かで、丁寧に想いを紡ぐような楽曲となっています。ボーカル椎木知仁の声も、叫ぶようなパートよりも“寄り添うようなトーン”で歌い上げられており、タイトルの「味方」が象徴するように、まるで誰かの背中をさりげなく支える存在そのものを体現しているかのようです。
歌詞に描かれる“日常の愛おしさ”──小さな幸福のリアル描写
この曲の大きな魅力は、「大それたことは言わない」その等身大さにあります。特別な出来事やドラマチックな別れを歌っているわけではなく、あくまで“今、隣にいてくれる君”への静かな感謝が綴られているのです。
たとえば《君が笑うなら それだけでいい》というフレーズに代表されるように、主人公は派手なアクションをするわけではありません。むしろ、ほんの小さなことで十分であり、「君が隣にいて、いつも通りに過ごしてくれるだけでいい」と語ります。この視点は、リスナー自身の生活にも通じるものがあり、共感を呼ぶ大きな要因となっています。
また、《駅までの道を歩いてる》といった日常の風景も歌詞に自然に織り込まれており、リスナーは自分の記憶や体験と重ね合わせながら、物語の中に入り込むことができます。
“味方”という言葉の重み──守る側・支えに徹する想い
タイトルにもなっている「味方」という言葉は、楽曲全体の感情の核をなすキーワードです。愛情や友情、家族愛など、様々な関係性の中で「味方であり続ける」ということは、時に自分を後回しにすることでもあります。
《君が敵だって 僕は味方だ》という印象的なフレーズは、その代表例でしょう。ここでは「君が世界から敵と見なされても、僕だけは君の味方でいる」という強い意志と覚悟が読み取れます。この言葉には、無条件の愛や献身が込められており、ただの恋愛ソング以上の深みを感じさせます。
恋人や家族、親友など、関係性は人それぞれですが、この楽曲においては「誰かの味方でいられること」自体が幸福であり、同時に責任なのだと伝わってきます。
印象的なフレーズを解体：泣きたくなるシーンから“ハッピーエンド”宣言へ
「味方」の中でも、特にエモーショナルな部分は《映画や漫画になってもさ／もう誰も泣かない話にしよう》という箇所です。このフレーズには、過去の苦しみや痛みを乗り越えた先にある希望が込められています。
この“誰も泣かない話”という言い回しは、単にハッピーエンドを願うのではなく、「泣かせるような悲劇をもう繰り返さない」という強い決意にも聞こえます。つまり、過去に涙した出来事があったからこそ、次は笑って終われる物語にしたいという、優しさと成長の証なのです。
My Hair is Badの歌詞は時に刃のように鋭く、時に包帯のようにやさしいですが、「味方」は明らかに後者であり、しかもそこにある“覚悟”がじんわりと心を打ちます。
ファンやメディアの視点から見る共感度：リアルさが呼ぶ安らぎ
SNSやYouTubeのコメント欄、音楽メディアのレビューなどを見ても、「味方」は多くのリスナーから「泣けた」「そっと背中を押された」という反応が寄せられています。
TikTokなどでは、恋人や友人、家族への感謝を伝える動画にこの楽曲が使用されることも多く、その汎用性の高さからも、“特定の誰かに捧げる歌”というより、“誰かを大切に思う全ての人”に寄り添う普遍的なメッセージがあることがわかります。
また、My Hair is Badにありがちな“自分勝手さ”や“未熟さ”が前面に出ていないことも、この曲の評価を高めている要因の一つです。「感情を吐き出す」ではなく「感情を包み込む」曲として、リスナーの心に長く残る存在となっているのです。
総まとめ
「味方」は、My Hair is Badの中でも特に“静かな名曲”と呼ぶにふさわしい一曲です。目立たずとも大切な存在、派手じゃないけれど強い愛情――そういった“じんわりとした優しさ”が丁寧に描かれたこの楽曲は、日々を生きる私たちにとって、大きな慰めや励ましを与えてくれます。
心のどこかが疲れたとき、思い通りにいかないとき、そっと再生して「味方でいてくれる誰か」を思い出したくなる。そんな楽曲です。あなたにとっての“味方”を、思い浮かべながらぜひ聴いてみてください。
