RADWIMPS「me me she」は、別れた恋人を忘れられない主人公を描いた失恋ソングです。
しかし、単に「元恋人への未練」を歌っているだけではありません。
歌の最初で主人公は、自分ばかりが満たされ、相手を傷つけてしまった可能性を認めています。
それでも別れを受け入れられず、100歳まで続くはずだった未来に執着する。
ところが終盤になると、恋人の存在は「取り戻したい相手」から、現在の自分を作ってくれた存在へ変化していきます。
だから最後に残るのは、復縁を求める言葉ではなく感謝です。
「me me she」とは、女々しいほど相手を忘れられない歌であると同時に、終わった恋を自分の一部として受け入れていく歌なのではないでしょうか。
- RADWIMPS「me me she」とは?発売日・収録アルバム
- 「me me she」のタイトルの意味は?「女々しい」と「僕・僕・彼女」
- 最初から主人公は「自分が彼女を傷つけた」と気付いている
- なぜ別れと一緒に「次の恋の方法」を教えてほしいのか
- 「100歳」と「101年目」が意味するもの
- 「彼女が僕を作った」という告白が曲を変える
- 「遺伝子」は狂気ではなく、彼女が未来にも残るという比喩
- 「2085年まで待つ」とはどういう意味?
- 「生きていようとなかろうと」は死別を意味する?
- 最も重要な変化|「君を愛する」から「自分を愛せる」へ
- なぜ最後に残る言葉が「ありがとう」なのか
- まとめ|「me me she」は未練から感謝へ向かう歌
RADWIMPS「me me she」とは?発売日・収録アルバム
「me me she」は、2006年12月6日に発売された4thアルバム『RADWIMPS 4 ~おかずのごはん~』の4曲目に収録されています。RADWIMPS公式
作詞・作曲は野田洋次郎、編曲はRADWIMPSです。歌ネット
なお、後年のJ-WAVEでRADWIMPSがレコーディングについて振り返った際、「me me she」は何度も録り直した曲の一つとして名前が挙がっています。
当時のRADWIMPSは一斉に演奏する一発録りを基本としており、納得できなければ改めてスタジオを押さえて最初から録り直していたそうです。J-WAVE NEWS
2006年当時のバンドが相当な熱量で作り込んだ楽曲だったことが分かります。
「me me she」のタイトルの意味は?「女々しい」と「僕・僕・彼女」
まず気になるのが「me me she」というタイトルです。
音として聞けば、日本語の「女々しい」を連想させます。
実際、別れた相手を忘れることができず、いつまでも過去の約束にこだわる主人公の姿とはよく一致します。
もう一つ有名なのが、
me=僕
me=僕
she=彼女
つまり「僕・僕・彼女」という読み方です。
「彼女」より「僕」が多い。
このアンバランスさを、恋愛中も相手より自分のことばかり考えてしまった主人公の自己中心性と結びつける解釈です。
非常に説得力があります。
ただし注意したいのは、今回確認できたRADWIMPS公式資料では、野田洋次郎本人が「タイトルには僕・僕・彼女という意味を込めた」と明言した一次資料までは確認できなかったこと。
そのため、本記事ではこれは歌詞とタイトルから導ける有力な解釈として扱います。
そして面白いのは、曲の終盤まで聴くと、この「僕が二つ」という構造に別の意味まで見えてくることです。
最初から主人公は「自分が彼女を傷つけた」と気付いている
この曲は、別れた相手に対する恨みから始まりません。
むしろ主人公は、恋愛によって自分は輝いた一方、相手は曇ってしまったのではないかと振り返ります。
つまり、
「自分は幸せだった。でも彼女も同じだけ幸せだったのだろうか」
という疑問です。
ここが重要です。
主人公は振られた被害者としてだけ自分を描いていません。
恋が終わってから初めて、二人の関係が対等ではなかった可能性に気付いている。
タイトルを「僕・僕・彼女」と読むなら、この冒頭はその自己分析にも見えます。
自分。
自分。
そして、ようやく彼女。
失ってから初めて、彼女が見ていた恋愛を想像し始めた。
そこに、この歌の後悔があります。
なぜ別れと一緒に「次の恋の方法」を教えてほしいのか
主人公は恋人との別れを受け入れようとします。
そこで考えるのが、過去の約束をどう終わらせればいいのか、そして別の誰かをどう愛せばいいのかということです。
ところが、本心ではその答えを知りたくない。
頭では恋が終わったと分かっている。
でも感情は次へ行くことを拒否している。
これは「me me she」の非常にリアルなところです。
人は失恋した瞬間に、相手を嫌いになれるわけではありません。
関係は終了しているのに、愛情だけは終了していない。
恋人同士でなくなった日と、好きではなくなる日は同じ日ではない。
主人公は、その時間差の中に取り残されています。
「100歳」と「101年目」が意味するもの
二人は、100歳まで一緒にいるような未来を想像していました。
それは事実上、「人生の最後まで一緒にいよう」という約束でしょう。
だから主人公にとって、二人が別れた日は単なる交際終了の日ではありません。
本来なら人生の最後まで来ないはずだった「約束の外側」が、突然やって来た日なのです。
そこで「101年目」という発想が生まれます。
実際に101年間付き合ったという意味ではありません。
100歳まで続くはずだった二人の時間が終わったため、予定より何十年も早く“その先”へ放り出された。
時間を数字に置き換えることで、失恋によって未来が一気に消えてしまう感覚を表しているのではないでしょうか。
失うのは現在の恋人だけではありません。
一緒にいるはずだった来年。
10年後。
老後。
まだ起きてすらいない大量の未来まで、一度に失います。
だから失恋はこれほど痛いのです。
「彼女が僕を作った」という告白が曲を変える
ここから「me me she」は単純な未練の歌ではなくなっていきます。
主人公は、今の自分を作り、救ってくれた存在として彼女を捉え始めます。
これは大きな変化です。
前半では「彼女がいないから苦しい」。
しかし後半では、
「彼女と出会ったから、今の自分が存在している」
という認識に変わっている。
恋人との関係そのものは終わります。
しかし、その関係によって変化した自分までは元に戻りません。
好きになったもの。
考え方。
自信。
価値観。
人との接し方。
恋愛によって受け取ったものは、別れた後も自分の中に残ります。
だから「彼女を忘れて以前の自分へ戻る」ことは、そもそも不可能なのです。
「遺伝子」は狂気ではなく、彼女が未来にも残るという比喩
この曲で特に強烈なのが、将来ほかの誰かと結ばれて子どもが生まれたとしても、その中に昔の恋人の遺伝子まで混ざっているかのように想像する部分です。
もちろん、生物学的にはあり得ません。
しかし、これを単に「元恋人への狂気じみた執着」と読むだけでは、この歌の重要な部分を取りこぼしてしまうと思います。
先ほど主人公は、彼女によって現在の自分が作られたと認めていました。
だとすれば、その後に誰かと恋をしたとしても、その恋をする「僕」はすでに彼女の影響を受けた僕です。
将来誰かを愛する方法にも。
家庭を作る方法にも。
子どもへ与える価値観にも。
過去の経験は影響するでしょう。
つまり「遺伝子」は、彼女自身の遺伝情報ではなく、
彼女との恋によって自分の中に残ったものが、その後の人生にも受け継がれていく
ことの比喩として読めます。
別れれば二人の関係はなくなる。
しかし、その人と出会わなかった世界線の自分には、もう戻れない。
この感覚を「遺伝子」という極端な言葉にしたのではないでしょうか。
「2085年まで待つ」とはどういう意味?
「me me she」の意味を調べる際、よく検索されるのが「2085年」です。
野田洋次郎は1985年生まれです。
つまり2085年は、野田が100歳になる年にあたります。
そのため、歌詞に登場する「100歳まで」という約束とつながっている、と考えるのが自然です。
主人公にとって別れは、約束を完全に無効にするものではない。
相手が戻ってくるかどうかとは別に、自分の側では100歳までその記憶を持っている。
もちろん、本当に2085年まで復縁を待つという現実的な計画ではないでしょう。
人生の最後まで忘れられないほど大切な恋だったことを、具体的な西暦に変換した表現だと考えられます。
数字を使うからこそ、途方もない時間の長さが突然現実味を持つのです。
「生きていようとなかろうと」は死別を意味する?
この曲を「恋人が亡くなった歌ではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし、歌詞全体を見る限り、相手が亡くなったことを示す明確な記述はありません。
むしろ別れの言葉があり、別の誰かを愛する可能性についても考えているため、基本的には恋人との別離を描いた失恋ソングとして読むのが自然です。
生死にまで触れる表現は、
「今後どれほど長い時間が経っても待つ」
という決意を極端な時間軸まで拡張したものと考えられます。
したがって、「死別の歌」と断定する根拠はありません。
同様に、「野田洋次郎の特定の元恋人について書いた」という説についても、本人が確認できる資料で明言していない限り事実として扱うべきではないでしょう。
最も重要な変化|「君を愛する」から「自分を愛せる」へ
そして曲の終盤で、最も重要な変化が起きます。
主人公は、彼女のことが好きだった。
しかし、それだけではありません。
自分が好きな彼女が、自分を好きでいてくれた。
その経験によって、主人公は自分自身にも価値があると思えるようになったことに気付きます。
これはものすごく大きな発見です。
恋人がいなくなったから「自分には何も残っていない」のではない。
むしろ、
彼女に愛されたことで、自分を愛せるようになった自分が残っている。
ここで「me me she」というタイトルも違って見えてきます。
最初の「僕・僕・彼女」は、自分ばかりを優先した恋の象徴だったかもしれない。
しかし物語の最後では、「彼女」が「僕」を変え、その僕がもう一人の「僕」を大切にできるようになっている。
彼女は去ったのに、彼女から受け取った愛だけは主人公の中に残っています。
なぜ最後に残る言葉が「ありがとう」なのか
この曲の本当の美しさは、失恋を「失敗だった恋」で終わらせないことにあります。
二人は別れた。
主人公には後悔もある。
まだ未練もある。
それでも、その恋が存在しなかった方がよかったとは言わない。
彼女に出会ったから人を愛した。
彼女に愛されたから、自分自身を大切にする感覚を知った。
だから、関係そのものには終わりがあっても、その恋が自分に与えた意味はなくならない。
そして最後に主人公がこの恋につける名前が「ありがとう」になります。
これは復縁ではありません。
完全に忘れたわけでもありません。
「君に戻ってきてほしい」という恋を、「君と出会えてよかった」という記憶へ変換する瞬間です。
まとめ|「me me she」は未練から感謝へ向かう歌
「me me she」を一言で「女々しい失恋ソング」と説明することはできます。
けれど、歌詞はそこから先へ進んでいます。
最初の主人公は、自分のことばかり考えてしまった過去を後悔します。
別れを受け入れられない。
未来の約束も捨てられない。
100歳になるまで待つとまで考える。
それでも曲が進むにつれて、彼女は「取り戻したい恋人」だけではなく、「今の自分を作った人」へと変わっていきます。
だから彼女の影響は、遺伝子の比喩によって未来にまで残る。
そして彼女から受け取った愛によって、自分自身を大切にできるようになったことに気付く。
恋は終わっても、その恋によって作られた自分は消えない。
だから最後に残るのは「戻ってきて」ではない。
感謝なのです。
「me me she」は、忘れられない恋を描いた曲であると同時に、失った恋を自分の一部として受け入れていく歌なのではないでしょうか。


