my hair is bad「真赤」歌詞の意味を考察|犬・首輪・合鍵が示す“依存”と別れ

(※本記事は歌詞の解釈・考察です。公式が明言している“正解”ではなく、歌詞表現から読み取れる物語として丁寧に紐解いていきます。)

My Hair is Bad「真赤」は、2015年7月8日リリースの『一目惚れ e.p.』1曲目に収録された代表曲で、作詞作曲は椎木知仁さん。短い情景の切り取りだけで、恋の熱・依存・別れの痛みまで一気に連れていく“生々しい失恋ソング”として支持され続けています。


「真赤」とは?基本情報(リリース・収録作品・作詞作曲)

  • 収録:『一目惚れ e.p.』(2015年7月8日)1曲目
  • 作詞・作曲:椎木知仁
  • MV:2015年6月にYouTubeで公開(シングル発売前に先行公開)
  • のちにアルバム『woman’s』にも収録され、より広く聴かれる導線になりました。

「真赤」は“恋の美談”よりも、格好悪いほど相手に縋ってしまう心を、過剰に飾らず出してしまう曲。ここが刺さる人は、思い出の中でいつまでも夏が終わらない。


まず結論:『真赤』の歌詞が描くストーリー(恋の始まり〜終わり)

物語を一本の線にすると、だいたいこうです。

  • 身体的に近い夜:ふたりきりの時間は濃密で、「わかり合えた気がする」錯覚が生まれる
  • 翌朝の“置き去り”:彼女は先に出ていき、鍵だけが残る=関係は続くようで、どこか一方通行
  • 街とライブハウスの夜:下北やライブハウスの空気が、恋の熱と若さを濃くする
  • 駅のホーム:三番線、流れる音、曖昧な誓い——“会いたい”が“痛い”に変わり、終わりが見えてくる
  • 季節の移ろい:春に落ちた恋が、夏の匂いとともに“余熱”だけを残していく

要するに「真赤」は、恋が成就する歌ではなく、恋が“自分の弱さ”を暴く歌なんだと思います。


冒頭の情景が示すもの:親密さと“心の距離”の矛盾

冒頭は、かなり直接的な“距離の近さ”から始まります。ここで重要なのは、描写が過激だからではなく、

  • 触れられる距離=心も近い、と思い込んでしまう
  • でも実際は「わかった気がした」止まりで、確証はない
  • だから主人公は、携帯や時間といった“外部”を止めたくなる(現実が戻ってくるのが怖い)

つまり冒頭は、幸福のピークではなく、後で崩れることを前提にした「危うい幸福」の描写。甘いのに、最初から少し苦い。


「君」と「僕」の関係性:登場人物と視点を整理して読み解く

「僕」は、恋に落ちた側。いわゆる“重い”というより、重くなっていく自分を止められない人です。

一方「君」は、ずるいほど自然体。冷たくもできるし、二人の時だけ優しくもできる。
この非対称が、「真赤」の痛みを作っています。

  • 「君」は関係の主導権を握る(去れる/戻れる/距離を調整できる)
  • 「僕」はその都度、心が振り回される
  • それでも「待とう」と決めてしまう——“意志”というより“癖”に近い

だから読後感が切ない。失恋の悲しさだけじゃなく、自分の情けなさを直視させられるからです。


「犬」「首輪」「合鍵」モチーフ考察:依存・束縛・手放す決意

この曲が異様に刺さるのは、モチーフが全部“関係性の力学”を示しているから。

犬=無条件の忠誠/「都合のいい存在」になっても離れられない

「犬みたいでいい」と言われるニュアンスは、優しさにも見えるけど残酷でもある。
“あなたはそれでいい”という言い方は、相手を対等に扱っていない可能性があるから。

首輪=束縛というより「所属」の承認

首輪は、縛る道具でもあり、同時に「自分の居場所がある」印でもある。
主人公が痛いのは、束縛が嫌なんじゃなくて、むしろ 首輪がないと不安なところ。

合鍵=信頼の証に見える“保留”

鍵を残すのは、希望も与えるけど、決定打を避ける行為でもある。
「終わり」を宣言せず、戻る余白を残す。だから主人公は断ち切れない。

この3つが揃うと、「真赤」は恋愛というより、依存と保留の物語に見えてきます。


春→夏の描写が刺さる理由:「夏の匂い」に残る“余熱”と喪失感

「春に恋に落ちて、夏の匂いがした」という流れは、季節がただの背景じゃなくて、

  • 春=始まり、浮つき、世界が明るく見える時期
  • 夏=熱、加速、そして“思い出になりやすい季節”

という感情の温度を表しています。

特に「匂い」は記憶と直結する感覚。視覚よりもしつこく残る。
だから夏が来るたびに、終わった恋が“いま起きているみたいに”蘇る。ここに、失恋のリアルがあります。


下北・三番線・ライブハウス:固有名詞が生むリアリティと切なさ

固有名詞(下北、地下のライブハウス、ホームの番線)が効いているのは、場所が特別だからというより、誰の人生にもありそうなサイズ感だからです。

  • 下北の夜=若さ・音楽・衝動(「いま」が濃い)
  • 地下のライブハウス=逃げ場みたいな親密さ
  • 駅のホーム=別れの装置(電車は“次に進め”と迫ってくる)

そして“悲しい音が流れた”のは、たぶんメロディじゃない。
駅のアナウンスや発車メロディの、日常的で無慈悲な音。恋の終わりって、だいたいこういう生活の音と一緒に来るんですよね。


タイトル「真赤(まっか)」の意味:赤は何の感情を象徴している?

「真赤」は、単に色の強さだけじゃなく、「ごまかしのきかない感情の濃度」を表す言葉です。解釈はいくつか立ちます。

  • 情熱の赤:恋に落ちた瞬間の高揚、体温
  • 羞恥の赤:自分の必死さがバレる、格好悪さ
  • 夕焼けの赤:終わりの色、戻らない時間
  • 血の赤:痛み、刺さるような後悔

個人的には「真赤」は、恋そのものというより、恋で露呈した自分の弱さが“丸見え”になった状態を指している気がします。隠せないから真赤。


MV・他曲とのつながりから再解釈:映像/背景を踏まえると見えること

MVは、メンバーがエモーショナルに演奏する姿と、物憂げに佇む女性の存在が対照的に映る構成だと紹介されています。
ここが歌詞の読みを補強するポイントで、

  • 演奏=「僕」の内側の熱量(抑えられない)
  • 女性の佇まい=「君」の距離感(掴めない)

というコントラストとして見ると、歌詞の“非対称”がより鮮明になります。

他曲とのつながりで言えば、マイヘアは恋愛を「美しい物語」にしすぎず、生活と感情のダメな部分まで描くのが持ち味。だから「真赤」も、聴く人の状況で“刺さり方”が変わる曲として残り続けるんだと思います。


まとめ:『真赤』が“情けないほど一途”な恋として共感され続ける理由

  • 近さ(夜)と遠さ(翌朝)が一瞬で切り替わる“落差”がリアル
  • 犬/首輪/合鍵が、恋の力関係と依存を一発で可視化する
  • 春→夏の移ろいが、恋を「思い出」へ変えていく残酷さを描く
  • 「真赤」は恋の色じゃなく、恋で露呈した“自分”の色

もし今「真赤」が痛いなら、それは恋が痛いというより、その人を好きだった自分を、まだ捨てきれてないからかもしれません。そういう瞬間に、やたらとこの曲は似合ってしまう。