「TK from 凛として時雨」が手がけた「unravel」は、日本人で二人目のSpotifyで1億回再生突破となった世界的にも有名な曲です。
そして同バンドが、TVアニメ東京喰種シリーズ最終章のオープニングテーマを再び手がけるということで話題になったのが「katharsis(カタルシス)」です。
作詞作曲を手がけるTKこと北嶋徹さんは、この曲にどのようなメッセージを込めたのか。
歌詞を見ながら考察していきたいと思います。
「katharsis」の意味とは?
曲名の「katharsis」はギリシャ語であり、「浄化」や「排泄」の意味を持っているのだそう。
悲劇はそれを観る者の心に恐怖や憐れみといったものを呼び起こしますが、そういった感情を浄化するというものです。
東京喰種の主人公である金木研(かねきけん)は、死んだと思われていましたが、記憶を失い佐々木排泄(ささきはいせ)と名前を変えて第二と言える生を歩んでいました。
この排泄という名前は、曲名である「katharsis」そのものであり、つまりはこの曲が彼を表していると考えて良いでしょう。
上記を踏まえながら、東京喰種の物語と共に歌詞を追っていきましょう。
歌詞の考察①金木の切望と現実に苦しめられる様
例えば目が覚めて「すべては幻だ」って 奇跡的な妄想を叶えて欲しいんだ
僕が描いた罪で 結末を満たさないで
冒頭の歌い出しは、金木の切望から始まります。
彼は、人を食べることでしか生きられない喰種(グール)となってしまい、一度記憶を失って解放されたものの、その記憶を徐々に取り戻してしまうため、再び喰種としての宿命に苦しめられるのです。
普通の人間として過ごせていればどんなに良かったか。
彼の願いの詰まったフレーズではないでしょうか。
さらに続く「いつか君と見ていたこの景色は 誰にも渡さないと誓ったのに」は、ヒロインである霧嶋董香(きりしまとうか)や喰種の仲間達との安息を誓っていたものの、再び人間との抗争に身を投じ続けなければならない自身に対して「壊し続けた僕は何かを救えた?」と自問自答しています。
しかしながら彼は大切な人たちを守ることもできず、壊すことしかできなかったのです。
1番の終わりに綴られた「溢れる叶わない妄想」とは金木の思い描いた大切な人たちとの平穏な日々であり、それが叶わなかった今、悔やんでいる彼の様子がうかがえます。
歌詞の考察②希望を掴みに行こうとする金木
2番は1番の対比とも取れる歌詞が登場します。
例えば目が覚めて「すべては真実だ」って 悲劇的なサイレンを鳴らさないで
世界の傷跡に 未来を降らして欲しいんだ
そして「すべての綻びは僕が選んだ運命だったんだ」と金木が運命を受け入れると共に抗い、未来を変えていこうとする様子が描かれています。
このような心境に至ったのは、金木が喰種の王として君臨したからです。
彼の判断一つで多くの命が失われるかもしれず、種を守るためだけでなく、元は人間だった身として人との共存への架け橋として努めようという強い心境が表れています。
歌詞の考察③悲劇に満ちた金木の物語に光が刺す時
まずはラストの畳み掛けるような歌詞を見ていきましょう。
罪も罰も僕も君も滅せずに残されてしまった
傷が痛いよ ほどけたシナリオ 輝く未来よ 君に会いたいよ
金木が抗った結果、「僕」や「君」の他に「罪」と「罰」も残ってしまいました。
これは、彼が犯した罪と捉えることができ、「過去を忘れ去ることはできない」と解釈できます。
ただ、それらを思って胸を痛めながらも金木研は、自身の悲劇に満ちたシナリオから解放されていきます。
そして、最後のフレーズは次のとおりです。
僕を刺したナイフさえも いつかきっと光を刺すから
この曲では「革命のナイフ」という言葉が登場します。
この「僕を刺したナイフ」が革命のナイフだったとして、金木にとっての人生の革命は、間違いなく人間から喰種になってしまったことでしょう。
ただ、その運命さえも「光は射す」ということであれば頷けます。
何故なら、これまで辛く悲しかった東京喰種の物語は、金木に光が刺すことでようやく完結を迎えたからです。
自身の運命を受け入れ、抗うことで光に満ちた未来を手に入れる。
それは「輝かしい未来は自身の力で手繰り寄せることができる」というメッセージを含んでいるのかもしれません。
「katharsis」を裏付けるカップリング曲「memento」
「katharsis」のカップリングである「memento」は、金木が排泄になったときを表しているような歌詞になっています。
例えば、「またどこかで会えたらいいね」「会えもしないこの街の中で 探して探して探して」というように、記憶を失った金木が董香や喰種のことを思い出せず、しかしながら葛藤している様子が描かれています。
ただ金木は、「無くなったものが片目に溢れて 手に入れたものが片目に溢れて」「滲んでしまった」とあるように、記憶を無くし空虚ながらも感覚的に覚えているものがあり、涙を止められないというような様子が描かれています。
より金木の心情について考察できる曲となっていますので、気になった方はこちらもチェックしてみてください。
まとめ
「katharsis」は東京喰種の最終章にふさわしく、金木の運命を辿るような一曲となっています。
ここまで作品に寄り添った仕上がりになっているのも北嶋徹さんの作品に対するリスペクトと、それらを読み解く感性が秀でているからなのでしょう。
原作ファンをも頷かせる「katharsis」を、是非作品とともに味わってみてくださいね。
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