BEGIN『爬竜舟』歌詞の意味を深掘り|沖縄の祈りと応援が響く魂の楽曲

「爬竜舟(ハーリー)」とは?〜沖縄の海祭りに込められた意味と歴史

「はりゅうせん」とは、沖縄で毎年行われる伝統行事「ハーリー(爬竜舟)」を指します。これは旧暦5月4日に開催される海の祭りで、漁業の安全や豊漁を願う地域に根付いた行事です。特に沖縄本島南部や離島、八重山地方では深く親しまれ、観光資源としても知られています。

この祭りでは、装飾された細長い舟を複数の漕ぎ手が力強く漕ぎ、スピードを競い合います。その競争には、単なる勝ち負け以上に、地域の団結や伝統文化の継承という意味が込められています。BEGINの「爬竜舟」では、この祭りの活気と、共同体のエネルギーが楽曲全体を貫いています。


歌詞に散りばめられた沖縄方言を標準語で紐解く

BEGINの歌詞は、沖縄方言がふんだんに使用されているのが特徴です。「真栄里ぬ海から」は、「真栄里の海から」という意味で、石垣島の地名「真栄里(まえざと)」を指します。このように具体的な地名が入ることで、リスナーに土地の空気感や生活がリアルに伝わってきます。

「かじふちゅさ」は、「風が吹いてきたね」という意味で、天候や自然現象を語ると同時に、状況の変化や運命の流れをも象徴します。これらの表現は、沖縄の方にとっては日常語でありながら、本土出身者には詩的で異国情緒を感じさせるものでもあります。

こうした言葉が歌詞に使われることで、楽曲が単なるポップソングではなく、土地と文化を語るドキュメントとしても機能しています。


「爬竜舟やぃ出ししょーり」「世ば稔れ」の深いメッセージ

サビ部分に出てくる「爬竜舟やぃ出ししょーり(はりゅうせんやいだししょーり)」は、「爬竜舟よ、出発して勝利をつかめ」という意味に訳されます。単に舟競争の勝利を願うだけでなく、人生や挑戦そのものに対するエールとも取れる表現です。

「世ば稔れ(ゆばみのれ)」という表現は、「世の中が豊かになりますように」という願いが込められており、地域全体の幸せや繁栄を祈る気持ちがにじみ出ています。

BEGINがこのような表現を選んだ背景には、音楽を通して「ふるさとの誇り」や「人々の絆」を伝えたいという強い想いがあると考えられます。


大嶺選手への応援歌としての一面—BEGINの思い

「爬竜舟」は、元々はプロ野球・千葉ロッテマリーンズの大嶺祐太選手の応援歌としても使われていました。大嶺選手はBEGINと同じ石垣島出身。地元のスターに対する応援の気持ちが、この楽曲に込められているのです。

応援歌としての「爬竜舟」は、球場でのコール&レスポンスやリズミカルな囃子の要素が観客の一体感を高める仕掛けとなっており、音楽の力がスポーツの場でも活用されている好例といえます。

また、島から羽ばたいていく若者に「島の誇りを胸に、勝利をつかめ」とエールを送るという意味でも、非常に象徴的な楽曲です。


楽曲の音楽的印象と情緒—囃子とリズムが伝える力強さ

この曲のもう一つの大きな特徴は、囃子(はやし)や掛け声による活気と力強さです。「ほーぅれ」という掛け声は、舟を漕ぐリズムを揃えるためのものでもあり、エネルギッシュで男性的な雰囲気を強調しています。

また、三線の旋律にのせた力強いリズムや太鼓のビートが、聴き手に心の鼓動を伝えるような一体感を与えます。この音楽的な仕掛けによって、ただ聴くだけでなく、身体が自然と動き出すような「参加型」の魅力が生まれています。

このように、音と言葉の両面で沖縄の文化を体感させる楽曲に仕上がっている点も、「爬竜舟」が長年愛され続けている理由のひとつです。