一日が終わろうとしているのに、気持ちが片づかない。ニュースを見ても、今日の出来事を振り返っても、何をどう受け止めればいいのかわからない。
クリープハイプの「23、24」は、そんな夜の迷いに耳を澄ませる楽曲です。TBS『news23』のエンディングテーマとして書き下ろされ、2026年9月30日に配信されました。creephyp.com
タイトルに並ぶ二つの数字は、23時から24時へ進む時間を表しています。しかし、日付が変わる瞬間を「0時」と呼ぶこともできるのに、歌詞では「24」が選ばれています。そこには、どんな意味があるのでしょうか。
本記事では、尾崎世界観の制作コメント、時計のイメージ、そしてMVを手がかりに、「23、24」を考察します。公式に説明された制作背景を踏まえつつ、数字や場面の意味については筆者の解釈として読み解いていきます。
「23、24」はどんな曲?『news23』への書き下ろし楽曲
「23、24」の読み方は「にじゅうさん、にじゅうよん」。作詞・作曲は、クリープハイプのボーカル・ギターを務める尾崎世界観が担当しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 楽曲名 | 23、24 |
| アーティスト | クリープハイプ |
| 作詞・作曲 | 尾崎世界観 |
| 配信日 | 2026年9月30日 |
| タイアップ | TBS『news23』エンディングテーマ |
| 番組での起用期間 | 2025年10月1日〜2026年9月30日 |
配信日と、番組で使われ始めた日は異なります。約一年にわたり番組の終わりに流れていた曲が、最後のオンエアとなる2026年9月30日にデジタルシングルとして配信されました。ユニバーサル ミュージック合同会社のプレスリリース
この曲を読むうえで大切なのは、ニュースを見終えた人の心に何が残るか、という視点です。遠い場所の出来事にも、自分の暮らしに近い問題にも、すぐには答えを出せないことがあります。「23、24」は、その考え続けている時間を歌として受け止めているように感じられます。
なぜ23時なのか?時計の針と、首をかしげる姿
尾崎世界観はTBSのインタビューで、歌詞を考えながら11時の時計を見ていたとき、自然と首をかしげていたことを明かしています。その針の姿に迷いを感じ、23時から24時へ向かう間に、傾いていた気持ちが少し整い、悩みも抱えながら翌日へ進める曲を目指したと説明しています。TBS NEWS DIG (2ページ)
23時ちょうどのアナログ時計では、長針は12、短針は11を指します。二本の針には角度があり、24時になると、どちらも12の位置に重なります。
この時計の変化を思い浮かべると、タイトルにある一時間が、心の動きとも重なって見えてきます。
納得できないとき、人は首をかしげます。うまく言葉にできない違和感が、身体の小さな傾きとして現れる。その姿と時計を結びつけることで、ありふれた時刻が、迷っている人の表情を持つのです。
ただ、針がまっすぐになることを、すべての問題が解決することと重ねる必要はないでしょう。疑問を整理できたり、今夜は結論を急がなくてもいいと気づけたりするだけで、気持ちの持ち方は少し変わります。
時計は進んでいく。心も、その歩みに合わせてわずかに動いていく。「23、24」が描くのは、そんな小さな変化だと考えられます。
正しさを探すほど苦しくなるのはなぜか
歌詞では、出来事を見つめ、正しさや善悪を判断しようとする姿が描かれます。その視線は、やがて自分の内側へと向かっていきます。歌ネット
たとえば、誰かの発言に腹を立てたあとで、別の事情を知って戸惑うことがあります。気持ちが変われば、最初の判断が早すぎたのではないかと、自分にも疑問を持つでしょう。
こうした迷いを通して、この曲が見つめているのは、自分の中にいくつもの判断や感情があることだと読めます。
相手に共感する気持ちも、反発する気持ちもある。理解したいのに、素直に受け入れられないこともある。その複雑さに気づくほど、単純な答えでは落ち着けなくなります。
ここで自分の内面を見つめることを、出来事の責任まで自分にあるという意味に受け取る必要はありません。むしろ、他人を判断しているとき、自分は何を基準にしているのか、その基準は揺れることがないのか、と問い直しているように感じられます。
首をかしげる姿には、世界への疑問と、自分の見方への疑問が重なっている。その二つを同時に抱えるからこそ、この夜は簡単には終わらないのです。
なぜ「0」ではなく「24」なのか?今日の側から明日を見る
歌詞の終盤では、日付が変わる瞬間について、「0」と「24」を区別する表現が置かれています。歌ネット
ここからは筆者の解釈ですが、この違いは、同じ瞬間をどちらの日の側から見ているかを示しているのではないでしょうか。
「0時」は、次の日の始まりです。「24時」は、いま過ごした一日の終わりです。
時計が示す瞬間は同じでも、言葉を変えると視線の向きが変わります。新しい日を始めることにも、その前に今日という日を受け止めることにも、それぞれ意味があります。
この曲が「24」を選ぶことで、聴き手の意識は、まだ今日の側にとどまります。楽しかったことも、悔しかったことも、うまく整理できなかった感情も、その一日に含まれている。
何も達成できなかったと感じる日にも、心が動いた時間はあります。出来事を見て考えたり、誰かの言葉に引っかかったりしたことは、自分がその日を過ごした痕跡です。
そう考えると、「24」は、一日を積み重ねてきた自分を見つめる数字として響きます。日付が変わるからといって、気持ちまで急に切り替える必要はない。今日の感情を持ったまま、次の一日へ渡っていくこともできるのです。
また、歌詞に登場する未来には、明るさが保証されていません。それでも未来として捉えられている点に、この曲の希望があります。先がよく見えない状態でも、時間の流れの中に自分を置き直すことはできる。希望が大きな確信になる前の、その手触りを描いているように思います。
わからないことを認めると、何が変わるのか
この曲の中心を考えるうえで、印象的なのが「わからないをわかるまで」という短い言葉です。歌ネット
尾崎世界観は、答えを求められ、断言する人が支持されやすい時代への思いを語っています。そして、自信がなくても迷いながら言葉を探す人に惹かれることや、自分自身もそうした表現者でありたいことを、制作背景として説明しています。TBS NEWS DIG (2ページ)
この説明を踏まえると、先ほどの言葉には、自分が理解できていないことを認める、という意味が感じられます。
何かをわかったつもりになると、それ以上調べたり、別の立場から見たりする必要を感じにくくなることがあります。理解が足りないと気づけば、もう少し考える時間を持てるでしょう。
日常の小さな行き違いにも、この読み方は重なります。相手の態度が冷たく見えたとき、嫌われたと決めつける前に、相手の事情を知らないことに気づく。自分がなぜ傷ついたのか、すぐには説明できないと認める。そこから会話や理解が始まることがあります。
曲の前半にある迷いも、こうした視点で見ると意味が変わってきます。自分の考えが揺れていることは、何かに触れ、受け止め方を探している証しにもなる。
「23、24」は、迷っている時間の中にも、次の考えへ進む余地があることを示しているように感じられます。
MVの「二人の自分」は何を表しているのか
公式の紹介によると、MVは架空の報道番組のスタジオを舞台に、宮﨑優が演じるキャスターと、そのキャスターにカンペを出すもう一人の自分を描いています。ユニバーサル ミュージック合同会社のプレスリリース
この設定は、歌詞が見つめる内面の揺れを、目に見える二人の姿にしたものとして読めます。
人に向かって言葉を発している自分と、その言葉でよかったのかを考える自分。目の前の役割を果たす自分と、別の伝え方があったのではないかと問いかける自分。
二人は、同じ人の中にある複数の視点として捉えることができます。カンペを出す姿も、自分の言葉を確認し、支えようとする働きとして見ることができるでしょう。
たとえば、仕事の場で説明を終えたあとも、頭の中では言い方を振り返っていることがあります。誰かと会話をしながら、相手の表情に気づいて、次の言葉を選び直すこともあります。言葉を発する人の内側では、そうしたやり取りが続いています。
ニュースを伝えるスタジオという舞台を通して、MVはその内側の対話を描いているように感じられます。伝える言葉が整っていても、その人の中で考える時間まで終わっているとは限らない。その余白が、歌詞の迷いとつながっています。
「23、24」が描く、迷いを抱えたまま迎える明日
「23、24」は、答えを出せないまま一日を終える人にも、心を動かした時間があったことを思い出させてくれる曲だと考えられます。
23時の時計に重なる首の傾き。外の出来事を見つめるうちに気づく、自分の中の複雑さ。そして、過ごした一日の終わりとして示される24時。
これらをつなぐと、今日の迷いを抱えながら、少し姿勢を変えて明日へ向かう人の姿が浮かびます。
自分の考えが定まらなかった日にも、何かを見て、感じ、考えた時間は残っています。「24」という数字には、その一日を受け止める視線がある。
夜が明けたら、また違う考えに出会うかもしれない。今夜の気持ちを持ったまま、その可能性に向かって進んでいく。そこに、この曲の静かな希望があるのではないでしょうか。
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