🎨 Colorsにおける“色”のモチーフとメタファー
宇多田ヒカルの「Colors」は、タイトル通り“色”が非常に重要な役割を果たしています。歌詞の中では「灰色」「黒」「赤」「青」「白」といった色が登場し、それぞれが心の状態や人生の段階を象徴しています。
たとえば、「灰色の空」は心の曇りや不確かさ、「赤いルージュ」は過去の恋愛の記憶や情熱を象徴していると考えられます。「青い傘」は自分自身の意思を示すシンボルであり、雨というネガティブな状況の中でも、自ら選択して前に進む決意の現れです。
色彩の対比を通して、感情の揺らぎや変化を描写し、無色から有色へと移行することで、聴き手に“変化する自分”の重要性を訴えかけています。
「ミラーが映し出す幻」=自己不透明感の描写
「鏡が映し出す幻」は、この楽曲の中でも特に詩的で抽象的な表現です。これは、現代人が抱える「自己とは何か」というアイデンティティの揺らぎを象徴していると多くの考察で言及されています。
特に、自分が自分であるという感覚が、外部の期待や視線によって歪んでしまう感覚が、鏡に映る“幻”という形で表現されています。つまり、他者から見た自分が「本当の自分」ではないという葛藤や不安が背景にあるのです。
これは、宇多田ヒカルが一貫して描いてきた「リアルな自分」と「社会的な自己」とのギャップというテーマにも通じます。
別れと再出発のストーリー構造
歌詞中の「別れて一月」や「ルージュの痕」といった描写から、「Colors」は明確に別れを経験した後の物語であることが読み取れます。ただし、それはただの喪失を描いた悲しい歌ではありません。
別れによって一度は心が曇ったものの、そこから新たに歩き出す準備をしている主人公の姿が浮かび上がります。「今しかない」や「キャンバスを何度でも塗り潰してよ」というフレーズは、時間の尊さと、過去を乗り越えて今を生きようという意志の表れです。
このように、「Colors」は“別れの歌”であると同時に、“再生と成長の歌”でもあるのです。
「青い傘」をはじめとする行動への鼓舞のメッセージ
「青い傘を広げて歩き出す」描写は、宇多田ヒカルがリスナーに伝えたいメッセージの核とも言える部分です。傘とは、自分を守る手段でありながら、色によってその人の個性や意志が象徴されます。
「青」は冷静さや自由を表す色とされており、それを自らの手で広げる行為は、他人任せにせず自分の意志で人生を進めることを意味しています。また、「雨が止むまで待つ」のではなく、「雨の中でも進む」という行動的な姿勢が、多くのリスナーに勇気を与えています。
この点から、「Colors」は“主体性”や“自己決定”の大切さを描いたメッセージソングとしても評価されています。
自分で“キャンバスを塗り替える”=リセットと挑戦の提案
「塗り潰してよ キャンバスを何度でも」という一節は、人生におけるリセットの可能性を象徴しています。過去の出来事や傷は消すことはできないけれど、それを“塗り潰す”ことで、新たな物語を描くことができるという前向きな提案です。
また、「白い旗はあきらめた時だけ」というフレーズからは、“降参”や“妥協”を拒む強い意志が伝わってきます。失敗しても立ち止まらず、何度でも挑戦する姿勢が、歌詞全体に力強さを与えています。
この部分は特に、多くの人が共感しやすく、自分の人生に置き換えて希望を感じられるポイントになっています。
🗝 まとめ
「Colors」は単なるラブソングではなく、“色”という比喩を通して、アイデンティティ、自己肯定、別れと再生、そして行動への勇気を描いた深いメッセージソングです。聴く人それぞれの「色」を映し出し、今の自分を肯定し、未来に進む力を与えてくれる楽曲です。