藤井風『何なんw』歌詞の深読み|ハイヤーセルフと対話するスピリチュアルな一曲

1. 「何なんw」の歌詞に込められたハイヤーセルフのメッセージとは?

藤井風のデビュー曲「何なんw」は、一見するとユーモラスなタイトルや語感が印象的ですが、歌詞を読み込んでいくと深い精神性と自己内省が込められていることに気づきます。曲中で使われる「あんた」と「ワシ」は、他人同士の会話のように見えながらも、実はどちらも“自分”を表しています。これは、藤井風が度々語っている「ハイヤーセルフ=高次の自己」の視点を持つと、非常に腑に落ちます。

ハイヤーセルフとは、スピリチュアルな概念で、自分の中にある高次元の意識や魂のことを指します。この曲において「ワシ」がそのハイヤーセルフであり、「あんた」は現実の自分であると解釈すると、内なる自己からの警告や導きを歌っているとも読めるのです。迷いながらも前に進もうとする人間の姿が、ユーモアと温かさを持って描かれています。


2. 方言と「w」がもたらす独特な表現効果

「何なんw」というタイトルからして、異色な印象を受けるこの曲。関西圏以西の人にとっては馴染み深い言い回しでも、他地域の人にとっては少し距離感を感じるかもしれません。しかし、それが逆に藤井風らしさ、そして楽曲の魅力に繋がっているのです。

岡山弁で話すことにより、歌詞のトーンがどこか親しみやすく、自然体に感じられます。さらに、「w」というネットスラングをタイトルに用いることで、深刻になりすぎない軽妙なニュアンスを加えています。歌詞の内容が重めの自己反省や精神的な話題であるにもかかわらず、それを軽やかに伝える工夫がここに見て取れます。このような言葉選びは、藤井風のユーモアと人間味を強く感じさせる要素の一つです。


3. ミュージックビデオに見る白と黒の象徴性

「何なんw」のミュージックビデオは、そのビジュアルと演出が歌詞の世界観を巧みに補完しています。特に注目すべきは、“白”と“黒”の衣装による対比です。MVでは、藤井風自身が黒い服を着て、もう一人の登場人物(黒人ダンサー)が白い衣装を纏っています。この白黒の構図は、スピリチュアルな視点での“二元性”を象徴していると考えられます。

つまり、黒い藤井風は“現実の自分”、白い人物は“ハイヤーセルフ”のメタファーであり、自分自身の内側で起きている対話や葛藤を表しているのです。この構造は、自己認識の過程で不可避な「自分を見つめ直す苦しさ」と「その先の気づき」を、映像として明快に描き出しています。まさに「見る歌詞」としての役割を果たしている点で、このMVは非常に優れた作品です。


4. リズムとメロディに潜む「ズレ」の魅力

「何なんw」を聴いてまず印象的なのは、そのリズムのユニークさです。イントロからAメロにかけて、ピアノとギターのリズムが微妙にずれて進行していきます。この“ズレ”は、音楽理論的には「ポリリズム」と呼ばれる手法に近く、聴き手に浮遊感や不安定さを与える効果を持ちます。

しかし、これは単なる技術的な遊びではなく、歌詞のテーマとリンクしています。自己対話や葛藤というテーマにふさわしく、不安定なリズムによって“今の自分”が揺らいでいる様子を音でも表現しているのです。そして、サビに入るとリズムが安定し、メロディも伸びやかになっていきます。これは、ハイヤーセルフの声に耳を傾けた結果、内面が調和し始めたことを象徴しているのではないでしょうか。


5. 「何なんw」に込められた自己への問いかけと成長の物語

この曲の大きな魅力の一つは、単なる恋愛の愚痴や日常のぼやきに終わらず、“自分を見つめ直す物語”になっている点です。歌詞には、相手に対する疑問形のフレーズが繰り返されますが、実はこれらはすべて自己への問いかけでもあります。「何であの時、ああしたんだろう」「どうしてそんな風に思ってしまうんだろう」――それらはすべて、自分の弱さや未熟さを浮き彫りにするものです。

しかし、この自己反省は単なる自己否定ではなく、「次にどうすればいいか」を見つけるためのステップとして描かれています。だからこそ、藤井風はこの曲を、聴く人の心に響く“人生の処方箋”として機能させているのです。聴くたびに気づきがあり、変化が促される――そんな力を持った一曲であるといえるでしょう。


このように「何なんw」は、ユーモラスなタイトルとは裏腹に、非常に奥深く、精神的な成長と内省をテーマとした楽曲です。藤井風がデビュー曲でここまで多層的な表現を成し遂げていること自体が、彼のアーティストとしての非凡さを物語っています。