『百年戦争』歌詞の意味を徹底考察|相対性理論が描く恋の戦争とは?

歌詞のテーマは「オフィス三角関係」を百年戦争にたとえる戦い

「百年戦争」は、中世フランスとイングランドの長期にわたる戦争として知られていますが、本楽曲『百年戦争』ではそれが恋愛のメタファーとして用いられています。特に、歌詞に登場する「通勤電車」「オフィス6階」などの具体的なワードから、多くのリスナーは現代的な職場恋愛、いわゆる“オフィスラブ”の舞台を想像しています。

この百年戦争とは、恋愛におけるライバルとの対立を意味し、特に「ランチタイムはサバイバル」という表現が、平和的な時間すらも競争の場であることを象徴しています。つまり、百年にも感じられるような長く苦しい恋の戦い。それを“戦争”と表現することで、感情の激しさと執着心を巧みに描写しています。


ジャンヌダルクやベルセルク、ゴルバチョフ…歴史・ファンタジー人物の象徴性

『百年戦争』では、歌詞にジャンヌダルク、ベルセルク、ゴルバチョフといった異なるジャンルの固有名詞が登場します。これらは単なる言葉遊びではなく、すべてが主人公の内面を反映した象徴として機能しています。

ジャンヌダルクは言わずと知れた百年戦争の英雄。彼女のように「聖戦」を掲げ、正義を信じて立ち向かう女性像が、主人公に重なります。ベルセルクは漫画のキャラクターで、剣と戦いの象徴として引用されています。これは、恋敵と戦う覚悟を示すものでしょう。

そして、ゴルバチョフというソビエトの改革者の名が出ることで、「変革」のニュアンスが加わります。恋愛関係を“革命”によって変えてやるという意思が、ここに込められているようにも読み取れます。


中毒性ある可愛らしいサウンドと、激しい内容のギャップ

相対性理論の楽曲の特徴は、可愛らしいポップなサウンドと、その裏に隠された毒のある歌詞のギャップにあります。『百年戦争』も例外ではなく、明るくキュートなメロディの中に、非常にドロドロとした人間関係が描かれています。

軽快なリズムに乗せられる歌詞は、よく聴くと「奪う」「ちょん切る」「殺る」など、暴力性すら感じさせるワードで満ちています。この構造がリスナーに強い中毒性を与え、「何度も聴いてしまう」理由となっているのです。

この可愛さと毒の同居は、J-POPにおいても非常に珍しく、まさに相対性理論ならではの“ギャップ萌え”ともいえる表現です。


キーフレーズ「ちょん切ってみせるわ」に込められた小悪魔的決意

この曲の中でもっとも印象的なフレーズのひとつが「ちょん切ってみせるわ」というセリフでしょう。これは単なる冗談めいた言い回しではなく、主人公の強い意志、つまり“愛する人を奪うためには手段を選ばない”という決意を示しています。

「赤い糸」「運命」といったロマンチックなワードに対して、それを“ちょん切る”というアグレッシブな表現で否定することで、主人公の価値観の転換が明確になります。このように、恋愛においては受け身ではなく、能動的に動く女性像がここに現れているのです。

この小悪魔的とも言えるキャラクター性が、聴く者の心に強烈な印象を残します。


バンド「相対性理論」だから成立する独特の世界観

相対性理論は、ジャンルの垣根を越えた独自の世界観を持つバンドとして知られています。特にボーカル・やくしまるえつこの“か細く中性的な声”は、激しい内容の歌詞を柔らかく包み込むフィルターとなり、毒を毒として認識させない効果を生んでいます。

また、歌詞の内容には明確な物語があるわけではなく、断片的な言葉の組み合わせによって世界観を構築しており、そこにリスナー自身が意味を投影できる余地があります。これは、文学性と音楽性を融合させる相対性理論の真骨頂といえるでしょう。

だからこそ、このような挑戦的で比喩に満ちた歌詞も、リスナーに“考察される前提”で成立しているのです。


✅ まとめ

『百年戦争』は、相対性理論の持つ文学的かつ哲学的な世界観が凝縮された一曲です。ポップなサウンドに隠された戦略的な比喩と感情の奔流は、聴く者に何度も再解釈を促す魅力を持っています。その奥行きこそが、多くのファンに長年愛される理由なのです。