【美しい名前/THE BACK HORN】歌詞の意味を考察、解釈する。

「THE BACK HORN(バックホーン)」の数ある曲の中でも特に有名なバラード曲である「美しい名前」。
この曲がロックフェスで演奏されると、それまで賑やかだった会場が静まり返るほどに多くの人の胸を打つ名曲です。

この曲が何故ここまで多くの人に刺さるのか、歌詞の意味から考えていきたいと思います。

曲名の「美しい名前」とは?

曲名でもある「美しい名前」とは誰の名前のことだろう、と疑問に思う方もおられるかもしれません。
実はこの「美しい名前」にあたる人物と、作詞作曲を担当したギターの菅波栄純さんは知人であり、菅波さんの実体験をもとに歌詞を綴ったというエピソードがあります。

多くの人が胸を打たれたエピソードが盛り込まれている楽曲、それが「美しい名前」なのです。

歌詞の解釈①どうにもならないことに対して主人公が空虚になっている様子

「バックホーン」の曲はギターやベース、ドラムの轟音と共に開幕するものが多いですが、「美しい名前」はベースの「ポン・ポン・ポン」という意味深な音で静かに始まります。

泣きたい時ほど涙は出なくて 唇噛んでる真っ白い夜

身体中に管をたくさん付けて そうかちょっと疲れて眠ってるんだね

この歌い出しだけで多くの人は心を奪われたことでしょう。
この曲の主人公である者が、呼吸器等の生命維持機器を多く繋がなければならない状況の者を見て唖然としている様子がうかがえるからです。
さらに後に続く歌詞に、主人公の嘆きや後悔が表れます。

あぁ 時計の針を戻す魔法があれば

あぁ この無力な両手を切り落とすのに

このようなことから、危篤状態であり、主人公は何もしてやれないことが分かるのではないでしょうか。

歌詞の解釈②悔やむばかりの主人公

2番の歌詞で主人公はさらに追い込まれていきます。

微かにこの手をなぞった指先 小さなサインに敏感になる

こんなふうに君の心の音に 耳をずっと澄まして過ごせばよかった

すぐ後の歌詞も、「想いを隠したまま笑っていた」ことに対し、「知らない振りをしてた僕への罰だ」と大切な人だと気付いていたのに、自身が行動に移せないまま終わろうとしていることを悔やんでいる様子が描かれています。
そして、とうとう次の歌詞のようになってしまうのです。

何度だって呼ぶよ 君のその名前を だから目を覚ましておくれよ

今頃気付いたんだ 君のその名前が とても美しいということ

主人公の大切な人は息もからがらで、今にも事切れてしまいそうな様子です。
この悲痛な様子が聴いている者の涙を誘い、後に続く間奏では激情を乗せたメンバーの演奏も印象的です。

歌詞の解釈③この曲の主人公は・・・

ここまでを読んできた方は、この曲の主人公は歌詞を書いた菅波さんだと思っているのではないでしょうか。
そして、大切な人は恋人や思い人と想像したかもしれません。
実際に歌詞に何度も登場する「世界は二人のためにまわり続けているよ」というフレーズが恋を連想させるものとなっていますよね。

そんな主人公が誰なのかを知るには、「美しい名前」のシングルCDに付属した一枚の紙を見ると答えが分かります。
その紙には、「あなた」が倒れたと聞いた菅波さんが病院に駆けつけると、「あなた」のお母さんが手をさすりながら何度も名前を呼んでいた、このことを歌にしなくてはと思った、今度聞かせにいきます、と書かれているのです。

つまり、この曲の主人公は菅波さんであり、「あなた」のお母さんでもあるのでしょう。
二人の気持ちが凝縮されたエピソードとなっていると考えることができます。

曲の最後では再びベースの「ポン・ポン・ポン」という音が流れます。
この音は実は心拍数測定装置を表していると言われており、この装置は心臓が止まると「ピー」という音が鳴り続けるように、ベースの長音で締め括られます。
「あなた」は息を引き取ったのかもしれませんが、菅波さんは「聞かせにいく」という約束をこの曲をもって果たしたのです。

ちなみに「美しい名前」のMVは二種類あり、「マッチ編」と「ライター編」です。
特にマッチ編はマッチからマッチへと火が移り行く様子が儚げで、時に猛々しく燃える様子は命の尊さを感じられるものとなっています。
併せてご覧になってみてください。

「美しい名前」とエピソードが似ている「虹の彼方へ」

「美しい名前」のカップリング曲である「虹の彼方へ」はベースの岡峰光舟さんが作詞した楽曲です。
この曲も岡峰さんが友人を失ったエピソードをもとに描かれており、歌詞の「羽ばたいた君の忘れてた夢を僕がどこまでも連れていくよ」という部分が友人に対する追悼となっています。

「バックホーン」は邦楽ロックファンの間では「生死を歌うバンド」として知られています。
多くの人が目を背けたくなるような死に対する思いや、それらを生きている私たちがどう乗り越えていくかを体現しているバンドが「バックホーン」であると言っても過言ではありません。

まとめ

楽曲「美しい名前」はとても切ないバラード曲ですが、その歌詞は多くの人の胸を打ち、涙を誘うことでしょう。
「バックホーン」は疾走感があり、勇気をもらえるような楽曲も多いですが、「美しい名前」のように誰かに寄り添ってくれるような曲も歌うバンドです。

辛いことや悲しいことがあったとき、無理に明るい曲を聞くことはあまり良いことではないと言われています。
そんな時は「バックホーン」の寄り添ってくれるような楽曲に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。