ロックスターと聞いて、みなさんはどのような人物像を想像するだろうか。
自由奔放で破天荒、トラブルやスキャンダルで世間を騒がせ、暴力沙汰は日常茶飯事。
多くの女性と浮いた噂を流し、まるで一国の君主にみたいにソファにふんぞり返ってインタビューを受ける。
天性のカリスマ性で熱狂的なファンを集め、そして何より、ライブに行けば最高に格好いい。
リアム・ギャラガーは、そんなロックスターのイメージを地で行く。
ビートルズの再来と呼ばれ、2009年に惜しまれながら解散した後も世界中で絶大な人気を誇るイギリスのモンスターバンド「オアシス」。
そのリードボーカルであり、実兄のノエル・ギャラガーとともにバンドを率いたリアムは、その傍若無人な行動と歯に衣着せぬ発言が常に世間の注目を集めてきた。
今回は、そんな彼の発言の中から、特にリアムらしさが表れている名言(迷言?)の数々を紹介しよう。
『本名は神』
イギリスのラジオ局「Radio X」が実施した「ネットで検索されている質問に答える」という企画で、「リアム・ギャラガーの本名は?」という問いに対して「神。覚えておけ」と真顔で即答。
おそらく、本当に自分はある意味では神だと思っているに違いない。
かつて、リアムが敬愛してやまないジョン・レノンは「ビートルズはキリストよりも人気がある」と発言したことがある。
その結果、世界中で反ビートルズ運動が巻き起こり、ジョンは謝罪会見を開くこととなったが、仮にリアムの発言によってどのような騒動が起こったとしても、彼が謝罪のために会見をするところを想像するのは難しい。
『曲にはクソほどたくさんの意味を込めてる。どんな意味かはわかんないけど、とにかく意味がある』
本人はいたって真剣なのだが、リアムの発言にはどこか愛すべき滑稽さみたいなものがある。
この言葉は、オアシスの曲について言ったものだが、自分で歌っておきながら「意味はわからない」というのがいかにもリアムらしい。
オアシスの楽曲のほとんどはノエルが作曲しており、「それでも意味がある」と言いきるのは、普段は喧嘩ばかりしていても結局のところ兄のソングライティングの能力を評価しているということなのだろう。
『兄弟がいるってことは、ケンカをするっていうことだ』
この発言はある意味では真実だし、正直なところ大した名言でもない。
しかし、ノエルとの数えきれないほどの兄弟喧嘩で世間を騒がしてきたリアムが言ったとなれば話は別だ。
有言実行を称えたいところではあるが、兄弟喧嘩が理由でオアシスが解散してしまった今となっては、ファンとしては「頼むから仲良くしてくれ」と言わざるを得ない。
『トイレでクソしてる時もオアシスは最高のバンドだって思ってるよ』
文字通り汚い言葉ではあるが、リアムのオアシスへの愛情が垣間見える名言。
同時に、自分たちがナンバーワンだという自負が表れている一言である。
それにしても、もうちょっとマシな言い回しがあるとは思うが。
『その時は正しいと思ってやったことだから、後悔してることは特にない』
リアムと言えば、トラブルメーカーとしてあまりに有名だ。
バーでの乱闘騒ぎやパパラッチへの暴力に始まり、窃盗やコカイン所持での逮捕、さらには、身長195cmのアメフト選手とやり合い前歯を折られたうえ、駆け付けた警官を蹴り上げるなど、とてもじゃないが「ロックスターらしいね」と笑って済まされるレベルの話ではない。
子どもができてからはすっかり子煩悩なようで丸くなった印象があるが、過去の悪行についてインタビューで聞かれると、前述の言葉が示しているように特に反省はしていないようだ。
『飛行機に乗るくらいなら、歩いたほうがマシだ』
リアムは、1998年に香港からオーストラリアに向かう機内で喫煙し、それを注意した乗客に食べ物を投げつけるなどしてキャセイ・パシフィック航空から永久搭乗禁止を言い渡されたが、そのことについて聞かれると「歩いたほうがマシだ」と答えた。
念のため断っておくが、もちろん歩いて海を渡ることはできない。
カメラを指さしながら、こういう突拍子もないビッグマウスを「子どもたち、よく聞け」と真顔で言うところがリアムのすごいところだ。
そんなリアムだが、2017年には他の乗客が喫煙したために自身が乗った飛行機が遅れる出来事があり、その時にはTwitterに「どっかのアホが機内で煙草を吸ったおかげで、滑走路で足止めされている。お前もだけど、飛行機で煙草を吸うなんて何考えてんだよ」と1998年当時の自分の写真を載せて投稿し、話題となった。
少なくとも今は、飛行機で煙草を吸ってはいけないという認識はあるようだ。
『コールドプレイの曲を聞くと自殺したくなる』
いまや21世紀で最も成功したバンドと呼ばれるコールドプレイが、まだ現在ほど世界的な人気を博していなかったころの発言。
初期のコールドプレイは非常に内省的な楽曲が多かったため言いたいことはわからなくもないが、ストレートな表現はやはりリアム節と言うべきだろう。
リアムは他のバンドやミュージシャンに対する発言を多くしている。
(そして、そのほとんどが批判的なものか、侮辱的なものか、あるいはその両方だ)
ちなみに、コールドプレイとはオアシス解散後に共演を果たしており、現在の関係性はさほど悪くないようだ。
『ジョンについて退屈になってきたっていう時は、自分自身について退屈になってきてるってことになる。俺は自分について飽きたことなんてないからな』
ミック・ジャガーやジョージ・ハリスン、U2のボノにボブ・ディランと、偉大なる先人たちをも容赦なく批判してきたリアムが、ただ一人絶対的に崇拝する人物がジョン・レノンだ。
ある雑誌のジョン・レノン特集に寄せたインタビューで、リアムは「ジョン・レノンは俺にとってすべてを意味している」と語った。
また、ジョンとポールの関係性を自分とノエルになぞらえて次のように述べた。
「ソングライターとしてポール・マッカートニーより上だとは言わないし、どっちも違っていてそれぞれにすごいと俺は思う。ただ、俺にとってはジョンの方がもうちょっと美しくてもうちょっと狂ったところがあるから、俺はジョンが好きなんだ」
「ポール・マッカートニーはノエルみたいなんだよ。つまり、やさしすぎるんだ。ジョンはねじくれたところがあって、俺はそういうのが好きなんだ」
ちなみに、リアムは自身の息子を「レノン」と名付けているが、彼もまたバンドのフロントマンとしてデビューが決まり、父親と同じ道を歩んでいる。
リアム・ギャラガーの名言の数々、いかがだっただろうか。
普通なら思っていても言わないことや衝動的に言ってしまいそうになるのをぐっと我慢するようなことを、リアムは思いのままに言葉にしていく。
かつてオアシスの名曲「Whatever」で、「俺は自由だ。何だって好きなものになれる」と歌ったように、彼の言葉は自由でまっすぐだ。
何かと制約が多く、ストレスを感じることの多い現代社会。
誰もが心の中に「もっと自由に、思いのままに生きられたら」という願望を持っている。
やりたいけどできない。
言いたいけど言えない。
そんな人々の葛藤を問答無用で吹き飛ばすリアムの爽快な言葉は、これからも多くの人々の心をとらえて離さないだろう。
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