1. 「ファースト ラヴ」というタイトルに込められた“初恋”と“初めての愛”の二重の意味
Uruが歌う「ファーストラヴ」は、映画『ファーストラヴ』(2021年公開)の主題歌として書き下ろされました。タイトルの「ファーストラヴ」という言葉は、単に「初恋」という甘酸っぱい感情を表すのではなく、もっと深い意味合いが込められています。
この楽曲で語られているのは、“初めて恋をした相手”というよりも、“初めて本当に人を愛することができた瞬間”です。それまで愛することを知らずに生きてきた主人公が、ある人との出会いをきっかけに心の奥底にある感情を知る――この心の変化が、楽曲全体にしっとりと描かれています。
Uru自身もインタビューで、「“初めての愛”という感覚を描くことで、人が変わっていく様子を表現したかった」と語っており、タイトルからして物語性が強く感じられる作品です。
2. 主人公が抱える“ひび割れた記憶”と、歌詞に表現された心のトラウマ
「記憶は片付けられないまま」「幸せすら怖かった」などのフレーズは、主人公の心の奥底にある傷やトラウマを暗示しています。これは、ただの悲しみや失恋ではなく、もっと根深い“過去の体験”による精神的な負担を象徴しています。
映画『ファーストラヴ』は、心理サスペンスとしても描かれており、主人公が抱える過去の“事件”や“家庭環境”が軸となっています。それと同じように、歌詞のなかにも「忘れられない過去」や「罪悪感」といった負の感情が漂っており、非常に繊細な心理描写が見られます。
このような背景を持つ主人公が、「初めての愛」によってどう変わっていくのか。楽曲の一行一行が、その心の揺らぎを丁寧に追っています。
3. “あなたと出逢い 初めて愛を 知りました”―愛による癒しと再生の物語
楽曲の中で最も印象的なフレーズのひとつが、「あなたと出逢い 初めて愛を 知りました」という一文です。これは、まさにこの歌のテーマを象徴する言葉と言えるでしょう。
それまで人を信じることができなかった主人公が、たった一人の存在に出会うことで変わっていく。そんな再生の物語が、静かにしかし力強く綴られています。
特に映画とリンクする形で考察すると、主人公が抱える“罪”や“孤独”を、「誰かに受け入れられることで癒されていく」という流れが、より深く理解できます。Uruの歌声が持つ繊細さと優しさが、このテーマにぴったりと寄り添っており、聴く者の心をそっと撫でるような力を持っています。
4. 映画『ファーストラヴ』との密接なリンク:歌詞が作品世界を補完する構造
映画『ファーストラヴ』は、島本理生の同名小説を原作とし、現代の“女性の生きづらさ”や“心の傷”を描いた作品です。Uruの楽曲は、この映画の世界観を音楽として再構築しているとも言えるほど、内容が密接にリンクしています。
映画の主人公・環菜の心の闇、彼女を取り巻く過去の事件、そして彼女自身の葛藤。それらを見守るカウンセラーの姿など、物語の根幹には「心の解放」がテーマとしてあります。そして、Uruの「ファーストラヴ」も同じく、心を閉ざしていた主人公が“愛”によって少しずつ自分を取り戻していくプロセスを歌っています。
映画を観てからこの曲を聴くと、まるで物語の“その後”や“内面の声”が聴こえてくるような感覚に包まれるでしょう。
5. Uru流「本当の愛」とは?歌詞に込めた感情・表現スタイルと制作秘話
Uruはこれまでも、どこか影を感じさせる歌詞や、静かでいて力強いメロディーで、多くのリスナーの心を打ってきました。「ファーストラヴ」も例外ではなく、彼女ならではの“語りかけるような歌詞”と“細やかな感情表現”が随所に見られます。
制作秘話として、Uruはこの楽曲を「物語を補完するだけでなく、自分自身の体験や感情も重ねた」と語っており、映画の世界観に沿いつつも、彼女自身の心から紡ぎ出された詩であることがうかがえます。
また、歌詞にはあえて説明を排した“余白”が多く残されており、聴く人の状況や心情によって、さまざまな解釈が可能となっています。これはまさにUruの表現スタイルの真骨頂とも言える手法であり、彼女が届けたい“普遍的な愛”の形が、柔らかく提示されているのです。
🔑 まとめ
「ファースト ラヴ」は、単なる恋愛ソングではなく、心の傷を抱えた人が“本当の愛”に出会うことで再生していく姿を描いた深い物語性を持つ楽曲です。Uruの繊細な表現が映画と響き合い、リスナーの心に優しく寄り添う一曲となっています。歌詞の意味を知ることで、その一行一行がより胸に迫ってくることでしょう。