UNISON SQUARE GARDENの「オリオンをなぞる」は、未来への期待と、人との距離に迷う気持ちが同居する楽曲です。
勢いのある言葉が並ぶ一方で、歌詞の中にはためらいや不確かさも残っています。その両方があるからこそ、前向きになりきれないときにも、自分の気持ちを重ねられるのでしょう。
タイトルにある「オリオン」をなぞる行為には、どんな意味を見いだせるのでしょうか。この記事では、星座のイメージ、他者との関係、過去と未来への向き合い方から歌詞を考察します。
「オリオンをなぞる」は『TIGER & BUNNY』のオープニングテーマ
「オリオンをなぞる」は、2011年5月11日に発売されたシングルです。作詞・作曲は田淵智也、編曲はUNISON SQUARE GARDENが担当し、テレビアニメ『TIGER & BUNNY』のオープニングテーマに起用されました。[出典:TOY’S FACTORY公式作品情報、歌ネットの楽曲情報]
アニメをきっかけにこの曲を知った人にとっては、作品の登場人物や物語を思い浮かべる曲でもあるでしょう。
一方、歌詞には、聴き手自身の生活に引き寄せて読める言葉が数多くあります。誰かと関わる難しさ、未来を変えたい気持ち、うまくいかなかった過去との付き合い方。そうした身近な感情からも、本作の世界に入っていくことができます。
以下は、歌詞に基づく独自の解釈です。タイトルの由来や作者の意図を断定するものではありません。
タイトルの意味――離れた星に、つながりを見つける
夜空の星座をなぞるとき、私たちは離れて見える星を、想像の線で結んでいます。
その行為を人間関係に重ねると、タイトルには、自分と誰かの間につながりを見いだそうとする姿を読み取れます。
人は同じ場所にいても、同じものを見ているとは限りません。考え方や経験が違えば、一つの出来事から受け取る意味も変わります。それでも、言葉を交わし、何かを一緒に経験することで、関係の輪郭が少しずつ見えてきます。
「なぞる」という動詞も印象的です。何もないところから新しく作り出す行為に比べて、そこにある形を確かめるような響きがあります。
自分は誰ともつながっていないと思っていても、振り返れば、支えてくれた人や忘れられない会話があるかもしれません。
タイトルは、すでに自分の周りにある小さなつながりを、もう一度確かめる行為としても読めるのです。
人と近づきたいのに、距離もほしくなる
歌詞では、人とのつながりを求める気持ちと、そこから離れる方向の気持ちが並べられています。[歌詞参照:歌ネット「オリオンをなぞる」]
この揺れは、人間関係の中で多くの人が経験するものでしょう。
誰かに分かってほしいけれど、踏み込まれすぎると苦しい。頼りたいけれど、自分のことは自分で決めたい。親しくなることへの期待には、傷つくことへの怖さも伴います。
本作では、その矛盾がすぐに解消されるわけではありません。迷いのある自分が、そのまま歌の中に居場所を持っています。
そこに、この曲の励まし方の特徴を感じます。人を完全に信じられるようになってから関係を築こうとすれば、最初の一歩はなかなか踏み出せません。
不安が残っていても、話してみることはできる。分かり合えない部分があっても、一緒に何かを始められる。そんな不完全なつながりにも、意味を見いだせる歌でしょう。
軽妙な言葉が、日常の感情を大きく見せる
「オリオンをなぞる」には、会話のような呼びかけ、英語、壮大なイメージを持つ言葉が混ざり合っています。
すべてを一つの物語に置き換えようとすると、つかみにくく感じるかもしれません。しかし、言葉の大きさや調子の変化そのものに注目すると、この歌ならではの面白さが見えてきます。
私たちの日常でも、小さな一言で一日が明るくなったり、何でもないやり取りをいつまでも気にしたりすることがあります。外から見れば小さな出来事が、本人には大事件になるのです。
本作の大胆な言葉遣いには、そうした感情の振れ幅が似合います。
深刻な悩みも、少し冗談めかして話せば、別の角度から見られることがあります。軽やかな表現によって、感情を抱えたまま動ける余地が生まれる。その働きも、この歌詞の魅力ではないでしょうか。
自分の喜びに、観客は必要なのか
歌詞には、歌うことと、それを聴く人の存在について考えさせる場面があります。
この部分は、音楽以外にも通じる問いとして読めます。誰にも褒められなかった趣味や、成果につながらなかった挑戦には、価値がなかったのでしょうか。
人に認めてもらえることはうれしいものです。しかし、評価だけが目的になると、本来楽しかったはずの行為が、いつの間にか他人の反応を待つ時間に変わってしまいます。
本作から受け取れるのは、自分が感じた面白さや感動を、まず自分で認めてもよいという感覚です。
誰かに届くかどうかがまだ分からなくても、表現を始める理由は自分の中にあっていい。
人とつながることを求めながら、一人で感じる喜びも大切にする。その両方があることで、この曲の人間関係は、他者の評価にすべてを委ねないものとして見えてきます。
未来へ進むために、過去をどう受け止めるか
この曲には、これからへの期待とともに、それまでの日々を大切にしようとする姿勢が感じられます。
新しいことを始めるとき、以前の自分を否定したくなることがあります。あの選択は間違いだった、あの時間は無駄だったと切り捨てれば、変われた気がするからです。
けれども、失敗した経験の中にも、そのとき真剣に考えたことや、大切にしていたものはあったはずです。
過去を受け止めるとは、すべてを正しかったことにする意味ではないでしょう。間違いは認めながら、その時間を生きてきた自分まで消さないことだと思います。
そう考えると、本作の未来へのまなざしには、積み重ねてきた時間への信頼があります。今の自分に足りないものがあっても、ここまで歩いてきた経験は、次の一歩を支えるものになり得るのです。
「オリオンをなぞる」が描く、確信のないまま始める希望
歌詞の終盤では、未来への大きな願いと、目の前にいる相手の存在が近づいていきます。
そこで感じられる希望は、すべてがうまくいくという保証ではありません。誰かと出会ったからといって、迷いや失敗がなくなるわけでもないでしょう。
それでも、一人では思いつかなかった言葉が生まれることはある。自分には見えていなかった景色を、相手が教えてくれることもあります。
この曲を通して浮かび上がるのは、そんな関係への期待です。
夜空の星を結んで形を確かめるように、自分の経験や誰かとの出会いから、これからの道筋を探していく。確信が持てない日にも、その作業は始められます。
「オリオンをなぞる」は、迷いを抱えた人が、誰かと未来を考えるための歌として聴けるのではないでしょうか。


