SEKAI NO OWARI「Diary」の基本情報と背景
SEKAI NO OWARIの「Diary」は、2022年にリリースされたバラード曲で、Netflixの恋愛リアリティ番組『未来日記』の主題歌として書き下ろされました。この曲は、バンドにとっても特別な意味を持つ作品であり、ボーカルのFukaseが「初めて真正面から書いたラブソング」と語っているように、非常にパーソナルで繊細な感情が込められています。
これまでのSEKAI NO OWARIの楽曲は、寓話的でファンタジー性の強い表現が特徴でしたが、「Diary」ではより現実的で具体的な心情が描かれており、聴く者の心に直接響く内容になっています。
歌詞に込められた恋愛の物語とその象徴
「Diary」の歌詞は、まるで一冊の日記を読むかのように、淡々としながらも深い感情が込められています。歌詞の冒頭では、「僕の物語に 君が現れてから」というフレーズが登場し、ここから始まる恋愛のストーリーが丁寧に描かれていきます。
特に注目すべきは、「ページをめくる」「栞で閉じた」という表現です。これらは、恋愛が少しずつ進展していく過程や、時には立ち止まりながらも前に進む様子を象徴しており、「人生=物語」「恋愛=章」といった比喩的な構造を感じさせます。
また、日常のさりげない瞬間が「書き留められた記憶」として描かれており、リスナー自身の経験ともリンクしやすく、共感を呼ぶ要素となっています。
「あとがきなんて必要ないから」に込められた想い
「Diary」のサビに登場する「あとがきなんて必要ないから」というフレーズは、恋愛の終焉を拒む強い気持ちがにじみ出た印象的な言葉です。通常、小説や物語には結末や解説としての「あとがき」が付き物ですが、それを「いらない」と言い切ることで、「この恋は終わっていない」「物語は続いている」というメッセージが込められています。
これは、現実の恋愛においてもよくある「別れたくない」という感情や、「今この瞬間を永遠にしたい」という願いとも重なります。まるで物語を終わらせたくない子どものような、純粋な心情が伝わってきます。
さらに、この表現は他のアーティストの楽曲と比較されることも多く、例えばOfficial髭男dismの「115万キロのフィルム」における「エンドロールなんてもん 作りたくないから」という歌詞にも通じるものがあります。どちらの曲にも、恋の記録を「作品」として昇華しながら、その終わりを否定する共通のテーマが感じられます。
「Diary」の音楽的特徴と歌詞の融合
「Diary」の音楽的な魅力は、その静謐で情緒的なメロディラインにあります。ピアノを中心に構成されたサウンドは非常にシンプルでありながら、歌詞の世界観と絶妙に調和しています。過度な装飾がないからこそ、歌詞の一言一言が際立ち、リスナーの心に直接届くように感じられるのです。
また、楽曲全体の構成も一冊の日記を読むように進行し、曲の中で情景がページをめくるごとに変わっていくような印象を与えます。曲の展開と歌詞の表現がシンクロしており、まるで物語を一緒に体験しているかのような感覚に包まれます。
特に、サビの高揚感や音の膨らみは、感情が頂点に達した瞬間を見事に表現しており、「言葉だけでは足りない感情」を音楽が補完しているとも言えるでしょう。
「Diary」と「未来日記」のシンクロニシティ
この楽曲が主題歌として使われたNetflixの「未来日記」は、見ず知らずの男女が“未来の日記”に導かれて恋に落ちるというストーリーです。つまり、出会いや感情の変化があらかじめ日記に書かれており、登場人物たちはその記録に従って行動するという斬新なコンセプトが特徴です。
「Diary」の歌詞とこの物語は、構造的にも感情的にも非常に高いシンクロ率を誇っています。特に、「自分の物語に突然現れた君」というモチーフや、「終わりを迎えたくない」という感情は、「未来日記」のストーリー展開と見事に重なります。
このように、「Diary」は単なる主題歌という枠を超え、「未来日記」という作品そのもののメッセージを音楽で補強し、より深い感動を与える要素となっています。音楽と映像が一体となって生み出すこのシナジーは、リスナーや視聴者の記憶に強く残ることでしょう。